遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(411) 小説 白い霧の夜(4) 他 自己と他者

2022-08-28 12:40:25 | つぶやき
          自己と他者(2022.7.29日作)


 自分を豊かにする事は
 他の人を豊かにする事
 他の人を豊かにする事は
 自分を豊かにする事
 人の存在は常に他者の中にある
 他者を断ち切って自己はない
 他者を断ち切り
 自己に凝縮する者は
 他者からも断ち切られる
 孤立がもたらす結果は知れた事
 存在不可能



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           白い霧の夜(4)


 青華の胸の柔らかい膨らみと、下腹部のはずむような感触が篠田の体に伝わった。
 篠田は青華の軽やかな肉体をドレスの上から抱き締めた。
 片手で小さな顔を引き寄せ、唇を合わせた。
 絡めた太ももに青華の局部が触れるのが分かった。
 同時に青華は自分の太ももで篠田の局部を愛撫した。
 篠田は若者のような強烈な欲望の昂ぶりを意識した。
 それがたちまち形になって表れた。
 篠田は青華を抱き締め、唇を合わせ、舌を絡めたまま、一気に突き進む思いで青華のドレスに手を掛けた。
 青華ははじかれたように体を離した。
「ごめんなさい」
 そう言って体を起こし、立ち上がると乱れたドレスを整えながら、
「五万円、宜しいですか ?」
 篠田を見つめて言った。
「ああ、ごめん、ごめん」
 篠田は素直に応じた。
 ベッドの上に起き上がり、上着の内ポケットから財布を取り出した。
「すいません、戴きます」
 青華は篠田の手から五万円を受け取った。
 それを掌の中で二つに折り、握り締めたままベッドを映す足先の鏡の向こうへ姿を隠した。
 篠田はベッドに座り込んだまま、鏡の中の自分と向き合う形になった。
 無精ひげをはやし、薄くなった髪を乱した姿が浅ましく、滑稽にすら見えて来て、思わず鏡の中の自分から眼をそむけた。
 日頃、知性を誇り、紳士を気取っている自分が空々しく、他人事のように思えた。今更ながらに、鏡に映る獣性をむき出しにした自分の姿に打ちのめされた。
 その時、青華が鏡の向こうから姿を見せた。
 体には一糸も纏っていなかった。
 淡いピンクの明かりの中で、白い肌が手を触れれば滑りそうに艶やかな輝きを放っていた。
 やや小振りの乳房には、形の良い丸みがあった。
 その丸みの上で乳頭がピンと上を向いて付いていた。
 腰から下へかけての緩やかな隆起は申し分がなかった。
 篠田の肉体を柔らかく迎え入れてくれそうに思えた。
 青華は篠田の熱気に満ちた視線を浴びても恥じらう様子はなかった。
 篠田の傍へ来て、手慣れた、落ち着いた仕草で篠田の上着を取り、シャツのボタンをはずし、ズボンのベルトを外してファスナーに手を掛けて来た。
 篠田は青華の肉体に魅せられ、鏡の中に見た自分の姿の浅ましさも忘れていた。青華の肉体を抱き締め、一刻も早く喜悦の中へのめり込んでゆく事ばかりを考えていた。



           三



 篠田は自分の肉体の中の総てのものが、青華の肉体の中に溶け込んでゆくような感覚の中にいた。
 終わった時も青華の肉体を離す事が出来なくて、抱き締めたままでいた。
 青華はうっすらと汗の滲んだ顔で篠田を見つめて、
「御満足でした ?」
 と、言った。
「きみの此処は素晴らしい」
 篠田は青華の局部に手を触れて言った。
 青華はその言葉に応えるように顔を寄せ、篠田の唇に唇を重ねて来た。
 霧笛が遠くで鳴っていた。
 篠田はここが港に近い北の街である事を思い出した。
 青華を昔の恋人、敬子と錯覚しそうになった。
「今夜は泊まってらっしゃってもいいんでしょう」
 青華は篠田の腕の中で言った。
「きみが泊めてくれるんならね」
 篠田は愛情のこもった眼差しで青華を見つめて言った。
 二人は体を寄せ合い、手を掛け合ったまま横たわっていた。
 遠くでまた、霧笛が鳴った。
 青華はその霧笛に誘われたように篠田の腕から離れると窓辺へ行った。
 深紅のビロードのカーテンを引いて窓を開けた。
「ああ、霧が冷たくていい気持ち」
 青華は開けた窓の外へ手を延ばし、流れ込んで来る霧を吸い込むようにして言った。
 篠田はベッドに横たわったまま、窓外に向かって立つ青華の裸の白い小さな臀部を見つめていた。
 篠田もベッドを降りて青華の傍へ行った。
 背後から裸の体を重ねるようにして青華の肩を抱き、窓の外を眺めた。
 霧は先程、篠田が歩いて来た時と少しも変わっていなかった。
 街全体が白一色で覆われていた。
 窓から見下ろす位置に、街灯の灯りが霧の中に滲んでいるのが見えた。
 霧はしきりに流れていた。
 時折り、微かな切れ目を作っては並木のプラタナスを瞬時の間、垣間見させた。
「ほら、霧でこんなに体が濡れちゃった」
 青華は霧に濡れた両腕を胸の前で組んでさすりながら言った。
「冷たくて氷のようだ」
 篠田は青華の霧に垂れた体を抱き締めながら言った。
「窓をしめましょう」
 青華は言った。
「ベッドで温めてあげるよ」
 青華が窓を閉めると、篠田は青華の裸体を抱き上げて言った。





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          桂連様


          「サランへ」
         御解説戴き 有難う御座いました
         変な話し これでなんだか気が楽になったような気がします
         不思議なものですね こんな些細な事が解明出来ただけで気が
         楽になるなんて
          人間 何か一つ 気になる事があると それがどんなに小さな事でも
         気持ちの上で落ち着かないものです
         さっぱりした気持ちです
          日本の演歌はもともと韓国にルーツを持つと言います  
         桂連様が演歌に惹かれるのも理解出来ます もっとも
         日本人でも同様 演歌の味は歳を経なければ分からないようです
         kポップ 世界的人気です
         日本でも同じような傾向の歌が若者達の間では盛んですが
         われわれからすると ただ言葉を並べたてただけで 詩情も何もない歌詞に
         どれも同じようなリズムの同じような曲が並んだだけの歌にしか聞こえません
         心に沁みてくるものが全くありません ただただ素人の歌にしか過ぎないように思えます
          新作 拝見しました
          何事に於いても変えるのは大変な苦労 苦悩を要します
          楽なものはありません
          それだからこそ そこに人間としての成長も生まれて来るのだと思います
          何もしなければ楽でいいのですが 楽には変化を知る事の喜びも生まれて来ません
          ただ単調な日々 生活が続くだけで 人間は退化してゆくだけでは
          ないのでしょうか
           身体を使って覚える 覚えるという事は正にその通りだと思います
          身に付かない 頭で覚えただけのものは結局はそれを活かす事が出来ません
           この国のかつての福島地震で起きた原発事故も もし
          そこに地元の地形や現場の状況を身体で会得していた人がいたなら 
          あるいは防げたのではないかとわたしは今でも思っています
          身体で覚える まさしくその通りだと思います
           それにしても桂連様は解説戴いたサランへにしても
          新作の御文章にしても いずれも深い所まで突き詰めて考えている 
          そういう習性をお持ちのように感じられます 色気と官能 
          この文にしても深い所で考察しています
          色気と官能 確かに異なります 
          色気は表面的なもの 官能はその人の内側から
          滲み出てくるもの 
          その人の存在そのものが醸し出すものだと思い ます
          いずれにしても桂連様は物事の表面ではなく その根底から
          思考しようとしている 
          御立派な事だと感じ入ります
          何事につけても この態度が欲しいものです
           今回もいろいろ 有難う御座いました
          サランへの解説ともども 御礼申し上げます




          takeziisan様


           有難う御座います
          乾いてカチン コチン 降ってドロドロ
          最悪の土地条件 御苦労が偲ばれますが これも
          趣味の一つと考えれば 笑って過ごせるのではないでしょうか
          報酬は新鮮な野菜 思いのままに食卓へ
          羨ましいです
           イノシシ出現 野生動物との出会いの経験のない者にとっては
          なんだか 夢か 童話の中の話しのように思えて 嬉しくなってしまいます
          御苦労も顧みず失礼ですが
          それにしても立派な椅子 御近所付き合いの温かさが偲ばれて
          気持の温もりを覚えます
           五 七 五 偉大な 日本人の発明の一つだと思います    
          この短い言葉の中に全世界が 宇宙が 包含される
          日本が誇って良いものの一つだと思います
           ブログ考 面白く拝見しました
          それにしてもこうして気軽に自分の思いを書き込める
           便利に感謝するのと共に これを管理して下さる皆様にも
          御礼を言いたいですね 有難う御座います
           宗谷 オビ号 懐かしい言葉です
          オビ号 たしかロシアの船でしたよね
          その世界もはるか遠くになってしまいました
           音楽は言葉を超える こんな なんでもない映像が人の心を打つのは
          何故なんでしょうか 人が生きる上で真に大切なものは
          大袈裟な言葉でもなく 豊富な物でもなく 人が人に対する真心なんだ という事が
          如実に伝わって来ます 
          真心こそが人が持つ 本当の宝物なのだという事に気付かされます  
          藤沢周平の小説にしても 人間の温かさを描いたものが多いと聞いていますが ?
          生憎 わたくし自身は読んではいないのです
          手元には何冊か文庫本が置いてあります
          何時か読もうと思っていたものですが それにしても
          藤沢周平 人気作家とは言え 随分書いていますね
          松本清張も多作でしたが また takeziisa 様も
          よくお読みになっています
           懐かしい音楽 楽しませて戴きました
          改めて聴いてみようと思う時間もないものですから
          気軽にこうして耳にする事が出来ると嬉しくなります
           有難う御座いました