遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(451) 小説 いつか来た道 また行く道(11) 他 雑感四題

2023-06-11 13:01:19 | つぶやき
            雑感四題(2020年.1.20日作)


      偉大な道   

 世俗的に名が知られた人が 偉いとは言えない
 世間的に名の通る人が 偉いとは言えない
 真に価値ある事は
 人が人としての本道を歩む 
 人が人として幸福に生きる
 人の世界が目差す究極の目的 頂点
 無名であっても 隠れていても その
 本道に向き合い 真摯に生きる その
 実践者こそが 真に
 偉い人

       金    

 金を汚いものだと思うな
 金があれば相当の事が出来る
 金のない人 貧しい人を
 哀れ 不幸だと思うな
 人にはそれぞれの事情がある
 事情を無視し 知らずに
 物事 人を判断するのは
 傲慢 愚か

       鏡

 自身の姿を鏡に映して見る事の出来ない人間の
 哀れさ 滑稽さ

       優れたもの

 真に優れたものには それぞれの
 美しさがある
 美しさのないものは
 優れたものとは言えない




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          いつか来た道 また行く道(11)



 
 マンションの部屋へ帰って一人になるとむしゃくしゃした気分を払拭したくて風呂に浸かった。
 頭からシャワーを浴びてずぶ濡れになった。
 風呂から上がって鏡に向かい、初めて中沢栄二との交渉に思いを馳せた。
 沈み込むような暗い気分の中に浮かんで来る一つの思いがあった。
 わたしは鏡の中のバスローブ姿のわたしに向かって、それが可能だろうか ? と呟いていた。
 あいつは世間からはみ出したような麻薬常習者の、落ちこぼれにも等しい人間だ。あいつが居なくなっても大袈裟に騒ぎ立てる人間達は居ないのではないか ?
 おそらく、麻薬売買に係わる人間は居るだろう。
 それでも、その人間達が大袈裟に騒ぎ立てる可能性は少ないのではないか。
 彼等にしてみれば自分の身を守る事が先決で、麻薬中毒患者の一人が居なくなったぐらいで大袈裟に騒ぎ立てる事はないのでは・・・・
 わたしは <ブラック・ホース>の事も考えた。
 なん日も顔を出さない中沢を不審に思って、訪ねて行く人間は居るのだろうか ?
 無論、経営者か店長かは分からないが、中沢が店に顔を出さない事を不審に思う人間は居るに違いない。
 その者達が果たして、どれ位深く中沢に関心を寄せているのか ? 
 中沢が店に借金をしていれば別だが・・・・。
 恐らく、中沢の店に対する借金は、ないに違いない、とわたしは思った。
 もし、店に借金があればあれ程しつこく、何度もわたしに金銭を要求して来ないはずだ ?
 それとも、店自体が麻薬と係わりを持っているのだろうか ?
 店と中沢との関係はどうなっているのだろう ?
 わたしには分からない事ばっかりだったが、幸い、わたしと店との関係は深くはなかった。二度だったか、三度だったか顔を出しただけで、あとは店の外で中沢に会っていた。中沢とわたしの関係を知る人間はそれ程多くはないはずだった.
 ーーあるいは、中沢は誰かにわたしとの関係を話していたのだろうか ?
 いいカモが見っかったよ・・・
 中沢が店べったりの模範店員でない事だけは確かっだった。
 日頃の彼の言動から察しが付いた。
 親しい友人が店内にいたらしい形跡もなかった。
 しかし だからと言って、思惑通りに総てが運ぶだろうか ?
  ーーわたしは思わず我に返った。
  いったい、わたしは何を考えていたのだろう ?
 知らず知らずに、わたし自身驚くような暗い想念に没頭していた自分に気付いてわたしは狼狽した。
 中沢を殺(や)る !
 何時の間にか深く染み込んでいた無意識の意識がわたしを怯えさた。
 わたしは言い知れぬ恐怖の感情に突き動かされたまま鏡の前の椅子から立ち上がった。
 鏡の前を離れると居間に入ってテレビを付けた。
 傍にある戸棚からブランデーの瓶とグラスを取り出して丸テーブルの上でグラスに満たすと、そのまま沈み込むようにソファーに腰を下ろした。
 テレビでは遅い夜の時間のニュースを伝えていた。
 わたしはブランデーの入ったグラスを口元に運びながらニュースの画面に視線を向けていた。

 中沢には五日間も電話を掛けずに放って置いた。
 中沢はしびれを切らして自分から掛けて来た。
「ちっとも電話をくれないじゃないか、何時くれるんだよ !」
 彼の言葉は激していた。
「わたしにだって都合があるのよ。あなたの思い通りばかりにはゆかないわよ」
 わたしも突然に怒声を投げ付けて来た中沢に返すように強い口調で言っていた。
「いったい、話しをする気があんのかよう」
「あるから待ってなさいって言うのよ」
「いつまで待つんだよう !」
「とにかく、わたしの方で都合が付いたら電話をするから、それまで待ってなさいよ。わたしだって、そんなものを世間にばら撒かれたりしたんじゃたまらないから、なんとかするわよ」
「金が要るんだよう」
 中沢は切迫感を滲ませて言った。
「わたしの知った事じゃないわ」
「いいか、やたらに時間を引き延ばしたりしたら何をすっか分からないぞ」
 わたしは彼の言葉を脅迫と受け取りながらも、自ら電話を切った。
 ーーこうも度々、おかしな電話をして来られたのではたまらない !
 わたしの耳の中には中沢が最後に言った、何をするか分からないぞ、という言葉が残っていた。
 わたしは受話器を置いた手をそのままに暫くは、放心したようにその言葉を頭の中で繰り返し反芻していた。
 わたしは思った。
 この前のように金を渡して暫くの間、大人しくさせて置こうか ?
 わたしに取って、不可能な事ではなかった。
 しかし、問題はそこにあるのではなかった。
 彼が麻薬常習者だという事が、最大の問題点だった。
 世の中の暗部に係わっていた女 !
 中沢が警察に捕まった時の事を思うと体が震えた。
 わたしが今、係わりを持つ取り引き相手はほとんどが高級ブランド品を扱う業者だった。彼等の格式から言って一度、黒い噂が立ってしまえば潮が引くように、みんながわたしの前から去って行くだろう。
 わたし自身、今日まで必死に働いて築いて来た自分の城だった。それを失う事の苦痛を思うと絶えられない気がした。
 
 中沢から電話のあった翌日、わたしが事務所を出たのは午後十一時を過ぎていた。
 高級ハンドバックの輸入品の選定に手間取って、思わぬ時間を費やしていた。
 専務も秘書も三人の担当者もわたしより早く事務所を出ていた。わたしが最後になった。
 わたしが地下の駐車場に降りた時には知らない車が三台あるだけになっていた。
 わたしはハンドバックを開けてキイを取り出しながら車に急いだ。
 車に近付き、ドアを開けようとした時、不意に車の陰から立ち上がる人影があった。
 その唐突さにわたしは息を呑んだが、人影は中沢だった。
 すぐに判別出来た。
「何 ? なんでこんな所に居るの ?」
 わたしは驚きと共に思わず言っていた。
「ずいぶん待ったよ」
 中沢は人懐こい笑顔で言った。
「わたしの帰りを待っていたの ?」
 わたしは言った。
「そうさ」
 中沢は相変わらず、馴れ馴れしい口調で言った。
 暗い灯りの下で見るせいか、彼の顔が以前会った時より、幾分、やつれているように見える気がした。その、どす黒くも見える気がする顔を意識するとわたしは、麻薬のせいか、という思いに捉われて彼への強い拒否感が働いた。
 わたしは車の扉を開けると助手席にハンドバッグと資料の入った紙袋を置いて、
「ずっと、ここで待ってたの ?」
 と聞いた。





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           takeziisan様


            有難う御座います
           今週も楽しませて戴きました
           山々の風景 色とりどりの花々
           心が洗われるようです 登山好きの人間の
           山に魅かれる気が分かります
           ネジバナ 懐かしく思い出しました 
           山小屋の灯 ラジオ歌謡が昨日の事のように脳裡に浮かんで来ます
           思い掛けない山の湯での会話 いいですね
           人の心の通い合う暖かさが心を満たします
           都会に居ては知る事の出来ない人と人との心の交流
           それが少しも不自然ではない 不思議です
           都会に於ける日常でもこう出来たら素晴らしいでしょうがとても無理
           やはり自然環境のせいでしょうか
            畑仕事 無理は禁物 
           ツクバイが奏でるショパンは 「雨だれ」ですかね
           欲しかった スマホにしたが 電話だけ
            入選 おめでとう御座います
           川柳 楽しませて戴きました
           これからも頑張って下さい
           有難う御座いまし