駅前で、男女二人が「号外」「号外」と声を張りあげている。
一般的に号外の場合、それを渡す人の周りに欲しがる人たちが群がるもの。だが、その周りに人がなぜか寄りついていかない。ふと思った。男の顔がアニキンに、女の顔が小梅太夫に似ていたからなのか？ いやいや、一概にそうとばかりは言えないだろう。
しかし、不思議だ。うむ。うむ？
ミーハーな僕だから普通、なになに？ と貰いに行くのだが、さすがに躊躇してしまった。少し遠巻きにして見守る。
なぜか？
福山雅治に似ていない小生は、刑事コロンボ風に考えてみた。だが、すぐに謎は解けない。ややあって、特徴らしいものを見つけた。
まず、その人たちの服装。号外だと、よく新聞社の人がスーツ姿で配っていたりする。
だが、若向きのカジュアルな服装の上に、アニキン風の顔をチョコンと載せたおじさんがパンタロンを穿いている。もちろん、アニキン本人じゃない。彼の名誉のために敢えて弁護する心優しい僕が、ここにいる。
そして、号外をあげたいという必死さが、ところどころに垣間見える。このあたりが要因ではないか、と思った。
結局僕は、号外をもらいに行かなかった。
だが、ひょんなところから答えが解った。
会社に向かいながら歩いていると、二人の若者の会話が聞こえてきた。
「何だよ、これ」
「何だったの？」
「パチンコ屋のチラシだよ」
「見せて」
男は苦笑いし、女は爆笑した。
なんのことはない、パチンコ屋の号外。
最近では、簡単に受け取ってもらえないチラシ。
いかに消費者に受け取らせるか、いろいろと工夫している。＾＾
