血のつながりのない僕の兄の金蔵は、今年で89歳になった。
まだまだわしは元気だ。立ち上がる、立ち上がることができるんぞと、いつも下ネタっぽい意味ありげなことを言って、周りを白けさせる。
最近は、ふんがふんが、と呂律の回らないような口調になってしまった。
彼の名語録もたくさんある。
「とうちゃん、洗面所にある入れ歯、何で入れないの?」
「わしのこと、でぁれ(誰)も振り向いてくれなくなったから、えぇみぎゃ(意味が)にゃぁいにょよ(ないのよ)」
聞き取りにくい言葉もなんとか理解した息子は言った。(息子は大学生になったそうだ)
「じゃ、口に入れることあるの?」
「歯をみぎゃく(磨く)ときだけはな」
「ふーん、一日一回だけか?」
「バカ、一週間に一回だよ」
僕も、こんなほのぼのとした家庭を理想としている。
ここ数日は、晴れが続いてよかった。晴れは、心を晴れやかにする。
ノンレム催眠から覚めた今日の明け方、耳の鼓膜が微かな雨だれの音で震えた。
少し憂鬱な気分になる。
またか!! と、いやなニュースが朝のNTVスッキリから飛び込んでくる。
さらに厭世気分に拍車をかける。
さて、傘をどれにするか、と選んでいたとき、ふと井上揚水の『傘がない』が浮かんだ。結構、好きな曲だった。♪と、、か、、い、、で、、は、、、、、、、じ、、さ、、つ、、す、、、、♪
あ、そうか!!! これも暗い歌なんだよな!^ ^;;