一か月前、統計調査に協力くださいと言ってきた都の調査員から厚生省統計用紙を渡された。
見ると一枚だけのようだった。軽い調子で引き受けた。
働いている従業員の年齢別人数とか給料の額とか書き込むというものらしい。
やってしまおうと思い早々に始めたがなかなか面倒。途中で投げ出したくなった。
慣れないことは慣れている人の十倍は労力を使う。少し日にちをあけて再度始めたがやはり大変だった。半日近くかかった。
約束の日時に統計調査員がやって来た。それを渡した。
「何か質問があれば聞いてお答えします」
ウーンもう特別なかったので、特になし。と答えた。あ、そうだ名前聞いてないことを思い出し、思わず「あなたのお名前何て~の?」と言った。自分で言ってから可笑しくなった。
ここで、いつものお調子者の本領を発揮しだした。
もう一度、リズムと抑揚付けて「♪あなたのお名前なんて~の?♪ こういうキャラの人いたよねー。知ってる?」「あ、はい」「お~っ、知ってるの? ただ者じゃないな。あなた」「結構年いってますから」確かに僕より年がいってる。おばさんというよりお婆さん。しかしこの歌を知ってるというのは、、、、。僕でさえもギリギリ。
わざと焦らすように「トニー?」。おばさん、すぐ答えず微笑んだ。
「トニーと言えば?」もう一度「トニーとジョー?」
「そのトニー、なの? じゃ赤木圭一郎のこと、じゃないよね」
トニー谷が手に持った拍子木を鳴らし体をくねくねさせ「あなたのお名前なんて~の?」「わたしの名前は角山芳秋とも~します」昔のお茶の間テレビの一コマ。