田中雄二の「映画の王様」

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マーロウとディマジオ、俺たちとイチロー、そしてシスラー 『さらば愛しき女よ』

2014-08-10 15:31:36 | 名画と野球のコラボ

マーロウとディマジオ、俺たちとイチロー、そしてシスラー



 ニューヨーク・ヤンキースのイチローが10日、メジャーリーグ通算2811本目となる安打を放ち、ジョージ・シスラーを抜いて歴代48位となった。イチローとシスラーと言えば、アンタッチャブルレコードと言われたシスラーのシーズン最多安打記録257本を、当時シアトル・マリナーズのイチローが84年ぶりに更新(262安打)した2004年のシーズンが思い出される。あの夏は、「イチローは今日も打った?」「あと何本?」「凄いよね」といった会話がごく自然に日常の中に入り込んでいた。

 そんな中で、ふと思い出した映画があった。ロバート・ミッチャムが私立探偵フィリップ・マーロウに扮した、レイモンド・チャンドラー原作、ディック・リチャーズ監督の『さらば愛しき女よ』(75)だ。

 映画の舞台は1941年。マーロウはある事件を追いながら連続試合安打記録を続けるジョー・ディマジオのことを常に気に掛けている。だが、ディマジオの記録が56試合で途切れた時、事件もまた悲しい結末を迎える、というなんとも粋な味付けがなされていた。

 そう、あの夏、俺たちはこの映画のマーロウと同じ気分を味わうことができたのだ。そしてそれはイチローと同時代を生きる者だけが得られる幸福感だった。あれから10年、今のイチローは選手としては明らかに黄昏を迎えている。だが、俺たちがあの夏の日の興奮と感動を忘れることは決してないだろう。願わくばイチローにはもう一花咲かせてほしいものだが…。

コメント (2)
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