「映画で見る野球 その4」 番外編
『がんばれ!ベアーズ』3部作(76~78)の舞台はリトルリーグ。もちろん、子役時代のテイタム・オニールが快速球を投げるピッチャーを演じた第一作が一番の出来。最終作では日本に遠征する。
一方、『サンドロット/僕らがいた夏』(93)では、アメリカ版の少年たちの“空き地野球”がノスタルジックに描かれる。主人公の少年の夢の中にベーブ・ルースが現れ、ある選手のカードを見ながら「どうもこいつのことが気になってしょうがない」と語るシーンがある。その選手とは、後にルースの通算ホームラン記録を破る若き日のハンク・アーロンだった…という楽屋落ち的な楽しいシーンもある。少年はやがてロサンゼルス・ドジャースの専属アナウンサーとなり、ドジャースの選手となった親友のプレーを実況するという、夢のような落ちが着くのもいい。
マイナーリーグを舞台にしたものでは、ケビン・コスナーがベテランキャッチャー、ティム・ロビンスが若手ピッチャーに扮した『さよならゲーム』(88)と、ベテラン投手ロイ・ディーンの夢を新人の黒人投手が引き継ぐ『ワン・カップ・オブ・コーヒー』(91)がある。好みは分かれるだろうが、私見では断然後者がいい。1950年代末のマイナーリーグのうらぶれた雰囲気が出色で、野球しか生きる術を知らない男の悲哀がにじみ出る佳作だ。ちなみに“ワン・カップ・オブ・コーヒー”とは、コーヒー一杯を飲む間(あっという間)しかメジャーリーグにいられなかった選手を表すスラング。マイナーリーグの厳しい現実があればこそメジャーリーグの輝きがあるのだ。
珍しく日本のプロ野球が舞台になった作品では、二ューヨーク・ヤンキースから中日ドラゴンズにトレードされた強打者ジャック・エリオット(トム・セレック)の姿を通して日米の違いが露わになる『ミスター・ベースボール』(92)がある。監督役は高倉健。セレックも健さんも野球経験はほとんどなかったというが、名選手と監督らしく見せてしまうところが映画のマジックだ。2人の間で苦労する通訳(塩屋俊が好演)がこの映画の主人公だという見方もできる。
さて4回にわたってつらつらと述べてきたが、ではあなたが一番好きな野球映画は?と問われたら迷うことなく『フィールド・オブ・ドリームス』(89)だと答えるだろう。トウモロコシ畑、ベースボール、そして奇跡。アメリカの善の部分と、野球が持つスピリチュアル的な要素がこれほど素直に表された映画は他にない。
最後に、ケン・バーンズが製作したドキュメンタリー『ベースボール』(94)を紹介しよう。本作は、1イニングを1時間とし、9イニング×2の18時間にわたって野球の歴史を描く超大作。ダイジェスト版しか見ていないので、いつの日かその全編に目を通してみたいと思っている。