中央区の「亀島川温泉」に一泊した。東京の中心にこんなにいい温泉があるとは…と、うれしい驚きを与えてくれた。
八丁堀とは、もともとは江戸時代から戦後まで存在した水路の名称。今は埋め立てられたが、別名、桜川とも呼ばれていたらしい。江戸時代、この辺りは町奉行所の同心や与力の居住区だったという。「必殺シリーズ」で藤田まことが演じた中村主水が“八丁堀”と呼ばれるのもそのことに由来する。また『鬼平犯科帳』の主人公、長谷川平蔵が実際に幼少期を過ごした鉄砲洲もほど近い。よくよく時代劇に縁のある地なのだ。
ところで、川に囲まれ、橋が点在するこの辺りは、映画のロケ地としては格好の場所になるのでは、と思い少し調べてみた。ところが、テレビドラマのロケはよく行われているようだが、映画のロケは、古くは、小津安二郎監督の『長屋紳士録』(47)、最近では、是枝裕和監督、ペ・ドゥナ主演の『空気人形』(09)ぐらいしか発見できなかった。これは意外な結果だった。今回、確かめることはできなかったが、5年前に『空気人形』が映した風景も、開発の波にのまれて今はすっかり様変わりしているかもしれない。
この後、『第三の男』(49)の影響を受けたと思われる『美女と液体人間』(58)のラストの地下水道のシーンは、『東京映画地図』(宮崎祐治)によれば、中央区の八丁堀近くの南高橋の辺りから地下水道に入り、最後に燃え上がるのは桜川とのことを知った。