スティーリー・ダンのウォルター・ベッカーが亡くなった。
スティーリー・ダンとの出会いは、ラジオから流れてきた「リキの電話番号」(74)という曲だった。ドナルド・フェイゲンのボーカルは「力道ルーザナンバー」と聴こえたが、正しくは「Rikki Don't Lose That Number」と歌っていたのだ。
スティーリー・ダンの曲は、トム・ジョンストンが中心の頃の泥臭さが魅力のドゥービー・ブラザーズ、最初はカントリーロック風だったイーグルスなどとは違い、おしゃれな大人のロックという感じがした。
あのころはよく分からなかったが、凝り性のフェイゲンによる、ロック、ポップス、ジャズ、R&Bなどを融合させた重層的なサウンド、スタジオ・ミュージシャンの参加などが、あの独特の曲調を作り出したようだ。もちろんベッカーのギターとコーラスも素晴らしい。
ところで、スティーリー・ダンと言えば、ラジオ放送局を舞台にした日本未公開の『FM』(78)という映画を思い出す。
ひどい出来のコメディだ、という噂はあったが、何しろ実物が見られないのだから真偽のほどは不明。ところが、サウンドトラックだけはやたらと豪華だったのだ。
この中でスティーリー・ダンはタイトル曲の「FM」(No Static At All)と初期の「ドゥ・イット・アゲイン」が流れる。特に「FM」はベスト盤が出るまでは、このアルバムでしか聴けなかった。
ほかは「フライ・ライク・アン・イーグル」(スティーヴ・ミラー・バンド)「駆け足の人生」(イーグルス)「リド・シャッフル」(ボズ・スキャッグス)「宇宙の彼方へ」(ボストン)「ダイスをころがせ」「私はついてない」(リンダ・ロンシュタット)「素顔のままで」(ビリー・ジョエル)「イット・キープス・ユー・ランニン」(ドゥービー・ブラザーズ)「ウィ・ウィル・ロック・ユー」(クイーン)ETC…。
お得なヒットパレードのような2枚組みのアルバムを安価な輸入版で手に入れ、まさに、擦り切れるまで聴いた覚えがある。
あれからもう40年近くもたったのか…。『FM』はいまだに見ていない。