あえて結論は出さない
殺人の前科がある三隅(役所広司)が、解雇された工場の社長を殺害した容疑で起訴された。弁護を担当する重盛(福山雅治)は、無期懲役に持ち込むために調査を始める。
是枝裕和監督による心理サスペンス劇。裁判で勝つためには事実は二の次と割り切る弁護士と、得体の知れない不気味な容疑者。接見室での2人のやりとりが見どころとなり、役所がさすがのうまさを見せる。2人がガラス越しに対峙する姿は、黒澤明の『天国と地獄』(63)の三船敏郎と山崎努を参考にしたのだろうか。
「裁き」「真実」をキーワードに、システム化した裁判や死刑の矛盾を突くところもあるが、人間の心の深い闇を表すためか、あえて結論は出さない。それを良しとするか否かが評価の分かれ目になるだろう。被害者の娘役の広瀬すずが好演を見せ、妻役の斉藤由貴の姿が現実のスキャンダルと重なって見えるという副産物もあった。