田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

2017-09-24 07:00:46 | 新作映画を見てみた

消化不良で原作が読みたくなる



 どんな悩みも解決する雑貨店の郵便口を介して過去と未来がつながった。2012年と1980年を手紙がつなぐという奇跡を描いた東野圭吾原作のファンタジー小説を映画化。

 時空間のねじれを扱ったファンタジーは、作り方を間違えると普通の映画よりも絵空事感が増す。本作も、現在と過去、雑多な人物が交錯するという、もともと映画化が難しい題材ではあるのだが、雑貨店内外の時間経過の違いを雑に描いた点が致命的な失敗だろう。見終わって消化不良を起こし、思わず原作を読んでしまった。

 その結果、例えば「雑貨店に紛れ込んだ3人組(山田涼介、村上虹郎、寛一郎)にとって、これは“一夜の出来事”である」「外の世界の1時間は、雑貨店の中にいると何日にもなる」「雑貨店の裏口のドアを開けると内と外の時間の流れが一致する」「登場人物は皆何らかの形でつながりを持っている」など、原作が描いた重要な“ルール”が映画では描き切れていないことが分かった。それ故、観客を泣かせようとする作為だけが目立って、かえって興ざめさせられたのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする