『アーティスト』(11)(2012.4.15.MOVIX亀有)

1927年から32年までのハリウッドを舞台に、トーキーの登場で没落する男優と躍進する女優の姿を描く。男優のモデルは実在のジョン・ギルバートやラモン・ナバロか。また、男女優の立場の逆転は『スタア誕生』(37・54)、サイレントからトーキーへの移行は『雨に唄えば』(52)の影響がうかがえる。
主役のジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョにあまり魅力が感じられず、ジョン・グッドマン、マルコム・マクダウェル、ジェームズ・クロムウェル、エド・ローターといった脇役たちで持っている感じがした
サイレント映画の再現を狙っているが、雰囲気だけで、ものまねの域を出ていない、というより違和感を覚えた。また、ヒッチコックの『めまい』(58)のバーナード・ハーマンの音楽を、全く関係のないシーンであからさまに流用したのことにも疑問を感じた。そんなこんなで、この映画が評判を呼び、アカデミー賞ほか各賞を受賞した理由がよく分からない。
『めまい』に出演したキム・ノバクが、この映画について過激とも思える発言をしている。「注目を集めるために、有名な作品の一部を乱用し、その作品が意図する以上に、新しい作品でより多くの喝采を浴びようとすることは、この業界に身を置く芸術家としてモラルに反することです。観客の感情を盛り上げるために『めまい』の愛のテーマを、『アーティスト』のクライマックスに使用したことは間違いありません。“死人に口なし”でヒッチコック監督やジェームズ・スチュワートは何も言えませんが、私が代わりに言います。これはレイプにほかなりません。私の体、少なくとも女優としての体が、『アーティスト』という映画によって暴行された気持ちです」と。
もちろん、過去の映画音楽は様々な作品で流用されており、権利さえ取得すれば違法ではないのだが、この映画の場合は、ノバクほどではないが、過去の映画への愛というよりも、嫌らしさや小賢しさのようなものを感じさせられたことは否めない。