田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

新日本風土記「松本清張 昭和の旅」『天城越え』

2021-05-24 11:29:49 | 映画いろいろ

『天城越え』(83)(1983.5.9.自由ヶ丘劇場.併映は『時代屋の女房』)

 14歳の家出少年(伊藤洋一)と偶然出会った娼婦(田中裕子)が、伊豆の天城峠を旅しているときに起きた殺人事件と、30年間、事件を追い続けた老刑事(渡瀬恒彦)の姿を描く。原作は松本清張の短編。先にNHKでもドラマ化された。

 まず、恐ろしく完成度の高い映画という印象を受けた。言い換えるなら、初監督の三村晴彦が、助監督時代にため込んだ力を一気に吐き出した映画だとも言えるだろう。何しろ、加藤泰の下で20年以上も助監督をした後の監督第一作なのだから、力が入るのも当然だ。

 ただ、その力加減は、最近の邦画にはあまり見られないようなもので、重量感がありながら、決して疲れを感じさせず、難解でもないという、いい感じのバランスが保たれていた。

 松本清張の小説は、すでに何本も映画化され、特に『砂の器』(74)などは、原作を超えて、独自の世界を作り出すことに成功していた。

 その『砂の器』が、原作にはなかった父と子の絆や宿命といったテーマを現出させたのと同様に、この映画も、原作ではそれほど色濃くは描かれていなかった、思春期の少年の心情や、女性に対する憧れと幻滅という、誰もが通過する人生の一季節を中心に描きながら、そこから生じた殺意や、やがて成人した少年の心に宿る過去への思慕と後悔というテーマを生み出していた。

 また、冤罪を引きずる刑事と、大人になった少年(平幹二朗)の、年月を越えた罪の意識を描いて、時効に疑問を投げ掛けたりもするが、それはこの映画の直接的なテーマではなく、副産物のようなものだろう。この映画のテーマは、あくまでも失われた少年期へのノスタルジーであると思う。それを彩る『砂の器』に続く菅野光亮の音楽も、田中裕子も素晴らしかった。

【今の一言】この短編小説は、川端康成の『伊豆の踊子』への清張流の挑戦でもあったのだ。

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新日本風土記「松本清張 昭和の旅」『ゼロの焦点』

2021-05-24 11:14:08 | 映画いろいろ

 先日の「松本清張と鉄道」に続いて、今回は「昭和」という時代を色濃く映し出した『砂の器』『球形の荒野』『ゼロの焦点』『天城越え』などの舞台となった地や、清張ゆかりの「聖地」を訪れていた。

『ゼロの焦点』(61)(1977.2.11.飯田橋佳作座.併映は『本陣殺人事件』)

 前任地での仕事の引継ぎに行ったまま、新婚一週間で失踪した夫・鵜原憲一(南原宏治)の行方を求めて、北陸を訪れた禎子(久我美子)は、別名で自殺として処理された夫の陰の生活を知ることになる。そこには、暗い過去を引きずる2人の女(高千穂ひづる、有馬稲子)の存在があった。

 監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍・山田洋次、撮影・川又昻、音楽・芥川也寸志は後に『砂の器』(74)を生んだスタッフと同じで、悲しい過去を隠すために悲劇が生まれるパターンも同様。終戦直後の立川と北陸・能登の暗い風景が、モノクロ画面と見事に合致する。

【今の一言】この小説のテレビドラマ化は数多いが、映画では2009年に、犬童一心監督、出演・広末涼子、中谷美紀、木村多江、西島秀俊でリメークされたのみだ。

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『映画の森』「2021年 5月 第93回アカデミー賞授賞式」

2021-05-24 07:35:11 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)5月24日号で、『映画の森』と題したコラムページに「史上最も多様なオスカー 第93回アカデミー賞授賞式」として、今年のアカデミー賞と『ファーザー』を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

記憶や脳内こそが最大のミステリー
『ファーザー』☆☆☆☆

クリックで拡大↓

 

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「BSシネマ」『眼下の敵』

2021-05-24 07:18:38 | ブラウン管の映画館

『眼下の敵』(57)

“敵将あっぱれ映画”
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7a78216b44920686acac81a5a1daa8ea

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