宝田明が亡くなった。4月1日から公開される主演映画『世の中にたえて桜のなかりせば』に合わせて、インタビューの話もあったので、とても残念だ。
宝田といえば、やはり何といっても、本多猪四郎監督の『ゴジラ』(54)の主役・サルベージ会社に勤める尾形青年役だろう。そして、本多作品への出演は、『世界大戦争』(61)の航海士、『モスラ対ゴジラ』(64)の記者、『怪獣大戦争』(65)のニック・アダムスとコンビを組んだ宇宙飛行士、『キングコングの逆襲』(67)の自衛隊員、『緯度0大作戦』(69)の海洋学者と続き、東宝特撮映画の顔となる。
一方、福田純監督の『100発100中』(65)と『100発100中 黄金の眼』(68)で演じた秘密警察官を自称するアンドリュー星野役で、キザでC調な感じがするキャラクターを、嫌みなくダンディに演じる個性を見事に開花させた。『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(66)の実は金庫破りの役も含めて、福田監督作品の方が、彼の個性は生きた感じがする。
そのほか、鶴田浩二の弟役を演じた岡本喜八監督の『暗黒街の顔役』(59)、『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻案した稲垣浩監督の時代劇で三船敏郎の恋敵役を演じた『或る剣豪の生涯』(59)、水茶屋の女(池内淳子)と心中し、討ち入りに加われなかった高田郡兵衛を演じた稲垣監督の『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(62)、林芙美子(高峰秀子)と結婚する男を演じた成瀬巳喜男監督の『放浪記』(62)などが印象に残る。
後年は、映画で使われている撮影技法を、実際の作品を例に用いながら解説する、フジテレビ深夜の「アメリカの夜」(91)のホスト役も務めた。これは随分と勉強になったことを覚えている。
自分は、東宝映画を見ながら育ったと思っているので、その顔の一人であった人の訃報は特に寂しいものがある。