『釣りバカ日誌2』(89)(1990.2.3.丸の内松竹.併映は『男はつらいよ ぼくの伯父さん』)
これまでの松竹2本立て興行の併映作は、「男はつらいよ」シリーズの添え物的な映画が多かった。今回はシリーズものとして並行する形で上映されたわけだが、それは取りも直さず本家の“寅さん”自体のパワーが落ちているのが最たる原因だろう。
結果的には、そこにうまく入り込んだ形とはいえ、シリーズ化されることになったのは、ひとえに西田敏行、三國連太郎、石田ゆりの見事なトライアングルの妙味にほかならない。特に、三國の余裕のあるコメディリリーフぶりは、これまでは重厚な役が多かったこともあり、さすがと思わせるものがある。
こうした、イメージギャップを生かした配役が、日本映画には欠けているところであり、引いてはそれが役者の芸域や可能性をせばめ、固定したイメージを持たせてしまうという悪循環を生んでいる。その点では、この映画の三國を見習うべき俳優はたくさんいるのではないだろうか。
ところで、この映画で描かれた大企業のサラリーマンの日常、例えば、うその休暇届、懲罰委員会、助命嘆願という流れが、あまりにも現実離れをしていると嘆いた某評論家がいたが、もともと原作漫画の、社長と平社員がプライベートで釣りをする時は立場が逆転すること自体が夢物語なのだから、この手の映画に細かいリアリティを求めるのもどうかと思う。