楳図かずおの漫画は主に小学生から中学生の頃に読んだ。
『ウルトラマン』『少年マガジン』(66~67)
『猫目小僧』『少年画報』など(68~76)
『おろち』『週刊少年サンデー』(69~70)
『漂流教室』『週刊少年サンデー』(72~74)
その中で一つ挙げろと言われたら迷わず『アゲイン』『週刊少年サンデー』(70~72)を推す。
元大工の主人公・沢田元太郎は65歳。偶然若返りの薬「アゲイン」を風邪薬と間違えて飲んで少年に若返りし、夕陽ヶ丘高校に入学して波乱を巻き起こす。後に楳図の代表作となる「まことちゃん」が元太郎の孫として登場する。シュールなギャグをちりばめながら、男女や老人についての問題の核心を描いていた。元太郎の年に近くなった今読んだら身につまされてしまうだろうか。
『漂流教室』(1987.7.23.有楽町シネマ1)は、大林宣彦監督が映画化した。
自称「尾道三部作」を撮り終えた大林宣彦が楳図かずおの世界をどのように映像化したのか興味が湧いた。そしてSFXの使い過ぎが目につき、『転校生』(82)以前の“映像遊びの大林”に戻ったかと思いきや、何のことはない、日本映画には珍しいキザなセリフ満載の恋愛劇を臆面もなく描く大林ワールドの独壇場になっていた。
ここまでやられると、これは才能と言ってもいいのではと思わされる。愛情表現で照れてしまうことが多い邦画界にあって、それをファンタジーの域にまで持っていってしまう、強引とも思える大林演出は、貴重な存在という言い方もできるのだ。元の世界に帰れない絶望的なタイムスリップを描きながら、子どもたちをアダムとイブのように見立てて希望のある再生劇としたところもいかにも大林らしい。
子どもたちにいきなりミュージカルをやらせたりする場違いなシーンもあるが、総じて彼らは巧みに演じているし、懐かしのトロイ・ドナヒュー、かれんな南果歩とのからみも悪くない。原作の楳図の世界とは全く異質のものとした大林の強引さが、良くも悪くも印象に残った。
【今の一言】楳図はあまりにも原作と違う映画の出来に疑問を呈したという。さもありなん。