健さんが亡くなった頃、たまたま本の整理をしていたら、横田順彌の『小惑星帯(アステロイド)遊侠伝』が出てきた。これは、東映任侠映画の世界を、そっくりそのまま宇宙に移し、SF化したらどうなるだろうという発想で書かれたスペースオペラの傑作。
主人公の真継龍一郎のモデルはもちろん高倉健。池部良、藤純子、若山富三郎らしき人物も登場する。舞台は宇宙に、着物は宇宙服に、長ドスは光線剣に代わっているが、セリフも、義理と人情に絡んだ人間模様という設定も、ほぼ任侠劇そのままというミスマッチの妙が楽しめる。
何十年ぶりかで読み返してみたら面白くてとまらなくなり、未読だった続編の『銀河残侠伝』まで読んでしまった。こうしたパロディーが可能なのは、任侠劇が様式にのっとって作られたドラマだからだ。
パロディーといえば、「オレたちひょうきん族」で石井愃一が健さんに扮して歌った『居酒屋兆治』(83)の主題歌「時代おくれの酒場」を思い出す。いつも邪魔が入って結局最後まで歌えないという落ちが楽しかった。ほかにも、国分健二(若倉健)、ウクレレえいじの“健さん”の物まねも大好き。健さんが様式を演じ続けたからこそ、物まねもまた輝くのだ。
さて、健さん自身が演じたパロディーでは、倉本聰脚本の『冬の華』(78)があるが、『ブラック・レイン』(89)でアンディ・ガルシアと掛け合いで歌ったレイ・チャールズの「ホワッド・アイ・セイ」が最高!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます