『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
名優の生涯を描いた
『MIFUNE THE LAST SAMURAI』と
名脚本家の監督デビュー作
『モリーズ・ゲーム』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1150169
原稿作製の下準備のため、ジョン・ウェイン製作・主演の航空映画『男の叫び』(53)と『紅の翼』(54)を見る。
『男の叫び』は、カナダ北部の雪原に不時着した輸送機の機長(ウェイン)の沈着冷静な行動と、彼らを捜索する仲間たちの動静を描く。モノクロ・スタンダード画面がかえってドキュメンタリータッチを盛り上げている。
この映画は、短い回想シーン以外は全く女性が登場しない。ひたすら輸送機乗組員の5人と捜索隊の面々の姿を追った、まさに“男たちの映画”だと言える。最近はこういう映画はあまり見られなくなったなあ。
一方『紅の翼』は、ホノルルからサンフランシスコに向かう旅客機が墜落のピンチを迎える中での、乗員・乗客の人間模様を描いたもの。70年代に作られた『エアポート』シリーズの先駆ともいえる映画だ。
乗客それぞれのドラマを回想を挿入しながら見せていくのだが、その間、画面にあまり動きがないので、室内劇を見ているような気になる。また、よく言えば丁寧に描いているが、色々と盛り込み過ぎて全体のテンポが悪くなっているのは否めない。
両作とも、監督は、航空映画の名匠といわれたウィリアム・A・ウェルマン、原作・脚本は元パイロットのアーネスト・K・ガン、撮影は名手アーチー・スタウトとウィリアム・H・クローシア というスタッフは同じだが、『紅の翼』の方はシネマスコープでカラー、そして音楽をディミトリ・ティオムキンが担当しているところがミソ。
特に、副機長役のウェインがしばしば口笛で吹くテーマ曲は公開当時大ヒットしたらしい。確かに耳に残るいいメロディで、さすがはティオムキンという感じがした。
また、この映画は、クレア・トレバー、ラレイン・デイ、ジャン・スターリングといった、いささかとうが立った女優たちの演技が見ものだが、こちらはフライトアテンダント役のドー・アヴドンの方が気になった。
どちらも航空映画の部類に入るが、続けて見ると、片や硬派な男たちのドラマ、こなた華やかな群像ドラマという対照の妙が味わえる。いろいろと苦労は多かったようだが、ウェインのプロデューサーとしての手腕がなかなかのものだったことを改めて知らされた。
『男の叫び』パンフレット(53・新世界出版社(AMERICAN MOVIE WEEKLY))の主な内容
解説/飛行機映画とウェルマン(双葉十三郎)/監督ウィリアム・ウェルマン/物語/ニューフェース紹介フェリスウェンガー/撮影余話/アメリカ各紙の批評/この映画の主題歌/ジョン・ウェイン/助演者についてアンディ・デヴアイン、ロイド・ノーラン、ウオルター・エーベル、ハリー・ケリイ・ジュニア/最新ハリウッドごしっぷ