硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

耳をすませば。 彼と彼女のその後  59

2013-09-05 07:31:28 | 日記
その夜、不思議な夢を見た。草の囁きに気が付き、目を開けると、綺麗な空が見えて私は中学三年生に戻っていた。

「あれっ。たしかここは・・・。」周りを見渡すと、いつか観た空に浮かぶ島の上にいた。

「どうして? どうして?」訳が分からずに慌てふためいていると、突如バロンが現れた。

「さぁ、行こう! ラピス・ラズリの鉱脈を探す旅へ!」

「ええっ! もう物語は終わっているはずよ!」

「何を言っているんだ! 旅は始まったばかりじゃないか。」

するとバロンは、振り返り高い塔を指差した。

「振り返って見るがいい。君はまだあの高い塔を越えただけなのだ。」

「あの高い塔を越えただけなの?」

そう言うとバロンは遠くの山々を指差して

「これから君が目指すのはあの山のふもとなのだ。」

その山は陽炎のように淡く、そしてあまりにも遠い。不安になった私は、

「あんなに遠いの・・・。」と、弱音を吐いた。すると、

「大丈夫だ!遠くのものは大きく、近くもの小さく見えるだけのこと。」

「そうだったわね。すっかり忘れていたわ。」

「いざ行かん! さあ勇気を出すのだ!」 

「よおおし、もう一度飛んでやる。」

「ゆくぞ。そおれっ」

「いやああああ。」

「恐れてはいけない。しっかり目を開けて前を見るのだ! それっ!上昇気流をつかむぞ!」

「わぁあああっ!!」

上昇気流をつかむと、ぐんぐん上昇し今にも星に手が届きそうなくらい空高く舞い上がった。私はバロンの手をしっかり握り、はるか遠くに見える山を目指した。するとバロンが私を見て語りかけてきた。

「君はどうしてあそこで足を止めてしまったのだ。 こんなに勇気があるのに。」

「えっ!」

返す言葉を探そうと思っても出てこない。いよいよ苦しくなってしまい、突然目が覚めた。不思議と胸の痛みが残っている。
それでも、私は夢の中でバロンに何かを教えてもらったような気がしてならなかった。