夕子に家まで送ってもらい、さっそく新聞を見るとテレビ番組欄に天沢という文字を見つけた。録画しておこうかとも思ったけれど、それよりも、優一が赦してくれるなら一緒に観よう決めて夕飯の準備にかかった。
午後9時になる頃インターフォンが鳴った。優一が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいまぁ。いやいや今日は疲れたよ。」と言って、奥の部屋に着替えに行った。
その間に、おかずを温め直して、食卓に並べていると、彼は席に着くなり「今日、中学校が同じだった天沢がテレビに出るんだってさ。」と言ってびっくりした。
「営業に出てる時、コンビニに寄ったらさ、中学の時の野球部だった安部にあって、それで色々と話してたら、同じ中学だった天沢がテレビに出るって話になったんだよ。」
「へぇえ。」
「天沢って言ったら、雫と噂になってた奴だろ。ちょうど今からじゃないか。観てみようよ。」
「うん。」
予想外の展開になったけれど、彼の意見に同意してご飯を食べながら番組を観る事にした。
そこに映し出されたのは、彼の生い立ち、イタリア、イギリスでの修行時代、師匠と呼ぶ人へのインタビュー、バイオリン制作学校での出来事、オーストリアへの移住、奥さんとの出会い、ウィーンの工房の出店の苦労話等が要約されて伝えられていた。
私は、彼と文通をしていた頃の様子を懐かしく思い出していたが、優一は
「夢をかなえたんだ・・・。すごい奴だったんだなぁ。」と、しきりに感心していた。
番組が終盤になると、彼がバイオリンを調整している姿が映し出された。その後ろでは天沢君の携帯の待ち受け画面で見た綺麗なブロンドの女性が微笑んでいた。インタビューアーが天沢君に「何か演奏して頂けますか?」と聞くと、「僕の腕ではなんだから。」と彼は照れ臭そうに彼女を手招きしてなにか耳元で何か囁いた。
奥さんは天沢君からバイオリンを手渡されると、軽やかに音を奏で出した。その時私はその曲が何という曲であるのかが分かった。超絶な技巧で奏でられるバイオリンの前奏が終わると、突然、天沢君が演奏に合わせて歌いだした。
ひとりぼっち、おそれずに、生きようと夢見てた
さみしさ 押し込めて、強いじぶんを、まもっていこう
カントリーロード この道 ずっとゆけば あの街に 続いている
気がする カントリーロード
「天沢君のバカ。」
私は涙がこぼれないように必死でこらえていたら、隣で優一が「なんでクラシック引かないんだろうね。しかも天沢の歌声入りってねぇ。番組がもりあがらないじゃないか。」と、ぼやいた。そのぼやきがあまりにも可笑しく聞こえたから笑った拍子に涙がこぼれた。
それを見た優一は、「涙が出るくらい可笑しかったかぁ? 」と、またぼやいた。
私は、このささやかな幸せを噛みしめた。
午後9時になる頃インターフォンが鳴った。優一が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいまぁ。いやいや今日は疲れたよ。」と言って、奥の部屋に着替えに行った。
その間に、おかずを温め直して、食卓に並べていると、彼は席に着くなり「今日、中学校が同じだった天沢がテレビに出るんだってさ。」と言ってびっくりした。
「営業に出てる時、コンビニに寄ったらさ、中学の時の野球部だった安部にあって、それで色々と話してたら、同じ中学だった天沢がテレビに出るって話になったんだよ。」
「へぇえ。」
「天沢って言ったら、雫と噂になってた奴だろ。ちょうど今からじゃないか。観てみようよ。」
「うん。」
予想外の展開になったけれど、彼の意見に同意してご飯を食べながら番組を観る事にした。
そこに映し出されたのは、彼の生い立ち、イタリア、イギリスでの修行時代、師匠と呼ぶ人へのインタビュー、バイオリン制作学校での出来事、オーストリアへの移住、奥さんとの出会い、ウィーンの工房の出店の苦労話等が要約されて伝えられていた。
私は、彼と文通をしていた頃の様子を懐かしく思い出していたが、優一は
「夢をかなえたんだ・・・。すごい奴だったんだなぁ。」と、しきりに感心していた。
番組が終盤になると、彼がバイオリンを調整している姿が映し出された。その後ろでは天沢君の携帯の待ち受け画面で見た綺麗なブロンドの女性が微笑んでいた。インタビューアーが天沢君に「何か演奏して頂けますか?」と聞くと、「僕の腕ではなんだから。」と彼は照れ臭そうに彼女を手招きしてなにか耳元で何か囁いた。
奥さんは天沢君からバイオリンを手渡されると、軽やかに音を奏で出した。その時私はその曲が何という曲であるのかが分かった。超絶な技巧で奏でられるバイオリンの前奏が終わると、突然、天沢君が演奏に合わせて歌いだした。
ひとりぼっち、おそれずに、生きようと夢見てた
さみしさ 押し込めて、強いじぶんを、まもっていこう
カントリーロード この道 ずっとゆけば あの街に 続いている
気がする カントリーロード
「天沢君のバカ。」
私は涙がこぼれないように必死でこらえていたら、隣で優一が「なんでクラシック引かないんだろうね。しかも天沢の歌声入りってねぇ。番組がもりあがらないじゃないか。」と、ぼやいた。そのぼやきがあまりにも可笑しく聞こえたから笑った拍子に涙がこぼれた。
それを見た優一は、「涙が出るくらい可笑しかったかぁ? 」と、またぼやいた。
私は、このささやかな幸せを噛みしめた。