
旧岩国藩主吉川家の居館跡の公園にはお堀がある。そこには見るもの見えない生き物が堀の中で楽しんでいる。色鮮やかな錦コイ、飛べない白鳥、カメはひと目でその生活ぶりが見られる。以前、外来種のいたずら魚捕獲作戦もあった。カメも外来種らしいが、追い払われてはいない。
そのカメ、観光客の注目を浴びることは少ない。先日出合った光景。コイに餌を投げ与えている親子、カメが近づいてくると「向こうへいけ」と子どもが手をふる。カメには通じないらしく餌を待つコイの周りを回っている。回っているだけでコイの餌を口にする様子はない。ちなみに餌は近くのお店で売っている一袋100円の「麩」。
カメの甲羅干し、という。何匹もが同じ方向を向き、重なりつながりあって微動だもしない姿をよく見かける。生きていく上で必要あってのとといわれるが、それは、ただ気持ちよさそうに昼寝をしているように見える。その様子は観光の人らにも喜ばれる。「カメれっしゃだ」と子どが指さしていた。カメ列車、なるほど面白い表現だ、といただく。
堀の中ほどに水面に顔をのぞかせる円形の水鳥の休み場所がある。水鳥の去った今はカメの独占場になる。今、集団演技を始めるために水上の舞台に登場し始まりの合図を待っている。さて、スッポトライトを浴びながらどのような演技が見られるのか、と注目しているのは私だけだった。