発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

新刊 『あれから七十五年』

2020年11月13日 | 本について

◆新刊

『あれから七十五年』1500円+税 順次配本中。


 引揚と援護、双方に関わった人々の手記。

 博多港に4人の子供とともに上陸した母親は「ああ、これで誰も死なせずに済む」 と思った。
 終戦とともに、「外地」に生活基盤を置いていた人々の環境は一変した。敗戦国民として日本に帰らないといけなくなったのだ。

 「『日本人は乗車させぬ』と切符を取り上げられ」

「兄の暖かだった体は次第に冷たくなり」

 「途中、小さな子がいなくなっていました。迷惑をかけるからとどうにかしたらしいです。とてもかわいそうでした」 

「母は奥様と呼ばれていたプライドを捨て、私たちを助けるために物乞いをする決心をしました」

「着物がわりのゴザを纏い」


 本書では、
 朝鮮は、元山、釜山、京城、恵山鎮、鎮海、清津、全州からの引き揚げ
 満洲は、奉天、新京、哈爾濱、暉春からの引き揚げを扱っています。

 援護は、検疫、送出、税関、日赤看護婦、地元学生有志、聖福寮(福岡友の会や福岡女学院有志)、医療援護(聖福病院…現在の浜の町病院、千早病院の前身)、そして二日市保養所と記念碑のことなどについて紹介しています。

 昔の中学の国語の教科書に、「ひと切れのパン」という、ユダヤ人が収容所に向かう列車から脱出して命からがら家へ向かう短編が載っていましたが、ほぼそれに近い危険を冒して帰還した人も少なくはありません。たまたま出会えた現地の友人の助けを借りて、死線から脱出する人の話、八路軍と国府軍の激しい市街戦。戦争とは何か、生きる力とはなにか、考えさせられます。
 難民というと、どこか遠い紛争国のことのような響きがありますが、日本人の民間人300万人の引き揚げは、まさに難民といえました。
 そして、引揚者援護をした人々。何もかも足りず混乱のさなかにある敗戦国の焼け跡で、愛と思いやりと行動力を発揮して、問題解決に奮闘した人々がいたことも、私たちは記憶にとどめておかなければいけないでしょう。
 そんな体験記の新刊です。

山本 高子 (著), 朝山 紀美 (著), 鹿野 純夫 (著), 波多江 興輔 (著), 中原 尚子 (著), 遠藤 美都子 (著), 永井 千夜子 (著), 村上 百合子 (著), 村松 雅江 (著), 泉 静子 (著), 上村 陽一郎 (著), 三宅 一美 (著), 大塚 政治 (著), 清水 精吾 (著), 納富 寛 (著), 山田 典子 (著), 糸山 泰夫 (著), 武末 種元 (著), 石賀 信子 (著), 山本 良健 (著), 秦 禎三 (著), 児島 敬三 (著), 堀田 広治 (著), 堀田広治 (監修), 博多港引揚げを考える会 (編集), 松崎直子 (イラスト)

 先の戦争が侵略だったのか進出だったのか、軍部の暴走がひきおこしたものか、欧米列強が自分のことは棚に上げて日本の海外進出を批判し日本を戦争に追い込んだのか、結果としてアジア諸国の独立をもたらしたのか、はた迷惑だったのか、そんな話は横に置いときましょう。この本では、あの戦争がもたらした民間人の辛い旅と、問題解決に動いた人々の話をご紹介しています。

 これらの本は、6冊目、のぶ工房が関わったのは4冊目ですが、この本の資金は「引揚げ港博多を考える集い」(多くは引揚げ者、今は老人たち)、のポケットマネーから出ています(あとは版元の労力手出しなので、売れてくれないと大赤字です、買ってね)。メンバーの思想信条はそれぞれです。共通しているのは、戦争はなかなか終わってはくれない(大陸にいた人々にとっては、むしろ八月からが戦争だった、しかも満洲や北朝鮮などで収入の手段が断たれたまま家を追われて冬を越さないといけなかった人々が多々あった)、自力で命がけで帰ってきた、という経験の記憶なのです。


 取り扱い書店は
◆福岡市
 紀伊國屋書店福岡本店
 丸善博多店
 ジュンク堂書店福岡店
◆宗像市
 うどう書店
◆飯塚市
 元野木書店
◆直方市
 いいの弘文堂
◆北九州市
 喜久屋書店小倉店
 ブックセンタークエスト小倉本店
 宗文堂書店
◆下関市
 梓書店 

 順次配本中。書店になければ注文すれば入ります。「地方小出版扱いの本」です。Amazonで購入する方はこちらのリンクを。

 直接お申し込みは

 お電話◆092-531-6353

 ファクシミリ◆092-624-1666

 メール◆fuyuharu3529@yahoo.co.jpへどうぞ。



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