今回の吹屋の町歩きにあたって、ずっと以前から特別に楽しみにしていた場所があります。それがここ、2012年3月まで現役の木造校舎として国内最古とされていた「吹屋小学校(県指定重要文化財)」。
明治6年(1873)に開校し、同32年(1899)に吹屋尋常高等小学校と改称して、現在の場所に移転。明治33年(1900)に、木造平屋建の東校舎・西校舎が落成。
明治42年(1909)に本館(木造2階建)が竣工。東西校舎2棟が並列する本館玄関を中心とする左右対称の配置となっており、各棟とも寄棟造、下見板張りで、窓は引き違いになっています。
校舎が建てられたのは、吹屋が銅山とベンガラにより栄えると共に、全国的に就学率が向上し、学校規模が大きくなった明治中期の事。二重折上棹縁天井などの手の込んだ意匠、100年を経て現役使用に耐えた部材・構造であることなど、当時の吹屋を象徴する建造物ともいえます。その特徴的な構造は『江川式建築』であるとされ、江川三郎八の設計であるか、もしくはその影響を強く受けていると推測されています。
この建物は木造平屋建の西校舎。妻入り屋根正面の鏝絵は吹屋小学校の校章でしょうね。
小学校の敷地は銅山事業施設の事務所跡地で、明治31年(1898)に三菱商会によって寄付されました。銅やベンガラで栄えた吹屋町。その町の予算の数倍の巨費を投じて建てられたという吹屋小学校。黎明期の日本における学校建築は、当時の日本人の気概が感じられて、私の大好きな分野です。日本各地に残る明治期の学校建築を見ていると、いつも胸の奥に熱い塊が込み上げてきます。
本館玄関の石段下に「考える少年」像
小学校に隣接する建物は、「ラ・フォーレ吹屋」。1987年3月に廃校となった成羽町立吹屋中学校の跡地に、旧成羽町が建設した高梁市立の公共の宿です。
建物は寄席棟屋根の2階建てで外壁板には解体された吹屋中学校の部材を流用。広々とした中庭を設けるなど元の木造校舎の外観に近づけ、吹屋小学校を模した造りとなっています。実際の中学校がどんな建物だったのか知る由もありませんが、でもおそらく素敵な外観だったろうと思います。
吹屋の小学生がパソコンの授業で考えた吹屋キャラクターの「ベンガラくん」。 一度見たら忘れられないインパクトで観光客を出迎えてくれます。
訪問日:2012年8月8日
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