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感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

ジョジョ・ラビット

2020年01月17日 | 映画
ジョジョ・ラビット
を観ました。


10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、ひどく緊張していた。
今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するのだが、“空想上の友達”アドルフ(タイカ・ワイティティ)に、「僕にはムリかも」と弱音を吐いてしまう。
アドルフから「お前はひ弱で人気もない。だが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まされたジョジョは、気を取り直して家を出る。
時は第二次世界大戦下、ドイツ。ジョジョたち青少年を待っていたのは、戦いで片目を失ったクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)や、教官のミス・ラーム(レベル・ウィルソン)らの指導によるハードな戦闘訓練だった。
何とか1日目を終えたもののヘトヘトになったジョジョは、唯一の“実在の友達”で気のいいヨーキーとテントで眠りにつくのだった。
ところが、2日目に命令通りウサギを殺せなかったジョジョは、教官から父親と同じ臆病者だとバカにされる。
2年間も音信不通のジョジョの父親を、ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていた。
さらに、〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられ、森の奥へと逃げ出し泣いていたジョジョは、またしてもアドルフから「ウサギは勇敢でずる賢く強い」と激励される。
元気を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むのだが、失敗して大ケガを負ってしまう。
ジョジョのたった一人の家族で勇敢な母親ロージー(スカーレット・ヨハンソン)がユーゲントの事務局へ抗議に行き、ジョジョはケガが完治するまでクレンツェンドルフ大尉の指導の下、体に無理のない奉仕活動を行うことになる。
その日、帰宅したジョジョは、亡くなった姉のインゲの部屋で隠し扉を発見する。恐る恐る開くと、中にはユダヤ人の少女が匿われていた。
ロージーに招かれたという彼女の名はエルサ(トーマシン・マッケンジー)、驚くジョジョを「通報すれば? あんたもお母さんも協力者だと言うわ。全員死刑よ」と脅すのだった。
最大の敵が同じ屋根の下に! 予測不能の事態にパニックに陥るジョジョだったが、考え抜いた末にエルサに「ユダヤ人の秘密を全部話す」という“条件”をのめば住んでいいと持ち掛ける。
エルサをリサーチして、ユダヤ人を壊滅するための本を書くことを思いついたのだ。その日から、エルサによるジョジョへの“ユダヤ人講義”が始まった。
エルサは聡明で教養とユーモアに溢れ機転も利き、ジョジョは次第にエルサの話と彼女自身に惹かれていく。
さらには、ユダヤ人は下等な悪魔だというヒトラーユーゲントの教えが、事実と異なることにも気づき始める。
そんな中、秘密警察のディエルツ大尉が部下を引き連れて、突然、ジョジョの家の“家宅捜索”に訪れる。
ロージーの反ナチス運動が知られたのか、それともエルサの存在が何者かに通報されたのか──緊迫した空気の中、エルサが堂々と現れインゲになりすます。
その場は何とか成功するが、事態は思わぬ方向へ──大戦が最終局面を迎える中、新たに生まれたジョジョとエルサの“絆”の行方は──?


タイカ・ワイティティ監督です。

予告を観て結構好みの雰囲気だったし、基本的にナチスを扱う映画は全部見るので見に行きました。
期待通りちゃんと好みのハイセンス映画でした。

上映規模が大きいので正直もっと大衆系映画と思ったのですがちゃんと通向けなハイセンス映画でした。
逆に普段余り映画を見ない人やインディペンデント系映画を見ない人、監督で見る映画を決めない人なんかがハイセンス映画に関心を持つ入り口になりうるような映画でした。
2020年の新しい映画の流れを感じさせる映画でした。

ヒトラーを心酔する少年が必死にナチスのために努力する健気さ、それが全然うまく行かない歯がゆさ。
不思議な切なさを感じさせました。
母子家庭の母がそんな息子を遠回しに正しい道へと導こうとする感じは、妙にジーンと来ました。
そして家に匿われていたユダヤ人の女の子との不思議な交流もとても子供の世界って感じで良かったです。

ナチスの狂った思想を子供の目線、子供の世界観で描き、その変化やら明確な矛盾を描くのはとても斬新でした。
ナチスの描写は既存の他の映画の通り残酷で容赦なくて怖いのですが、それを見事に緩和させる主人公の世界観でした。

シュールで脈絡なく冗長を感じさせる時間帯もありますが、それがちゃんとフリのような役割となってインパクトシーンに繋がります。
ストーリーがわかりやすく一本で繋がってる感じはないのですが作品の世界観として流れて行く感じはとてもハイレベルでした。
一個一個の場面、会話はその都度途切れる感じなのですが、それが無駄になっていないような。
そして唐突に来る悲しいシーン。
その描写の仕方はトラウマになるほど印象的で映画史に残るくらいの見事な描写でした。

そこから先のクライマックスもどれもこれもめちゃくちゃ印象的で相当ハイセンスな描写と演出でした。
実際に起きている戦争やナチスの暴挙が、あくまで主人公の少年の世界観の一部として描かれて居るのが素晴らしいです。
ナチスに関する勉強はライフワークで収容所跡なども観光してきた自分ですが、この視点の作品はとても素晴らしいと思います。

そして言葉を越えていく物語の締め。
敗戦濃厚となっている状況でのナチス子どもたちの会話も忘れがたく。
理由はわからないですがとても泣けました。

場内は独り客、しかも男が多かったですが、それでも泣いている人が沢山居ました。
映画上級者を泣かせる素晴らしいハイセンス映画でした。

主演のローマン・グリフィン・デイビスは可愛くて素晴らしかったです。
この作品はこの子の演技や佇まいがとても重要というかそのものが映画って感じですが。
ルックス含めて見事なキャスティングでした。
おバカで意思は強いけど不安でドジで可愛くて。
終盤に変化していく感じは見事な演技で泣けました。

ユダヤ人の女の子をトーマシン・マッケンジーが演じていました。
極限の状態の暮らしなのに冷静でクールで達観していて。
そんな様が実にナチュラルに表現できていました。

母親役のスカーレット・ヨハンソンがめちゃくちゃ良かったですね。
ひょっとしたら彼女の作品で一番良かったかもです。
直接的なメッセージは無く、極限の状況下でのとてもポジティブな子育て、ちょっとライフ・イズ・ビューティフルを思い出すような。
ストーリーとは無関係に見えるかわいいやり取り、描写がとてもハイセンスでした。

レベル・ウィルソンは太めの役を総取りしてる印象ですが。
どの映画に出てきても忘れがたき印象を残します。
今作では悪役的なポジションでしたがめちゃくちゃハマっていました。
全然若いですが、日本でいうと渡辺えりさんみたいな感じでしょうか。

ナチスの大尉をサム・ロックウェルが演じていました。
ナチスへの忠誠心は強いのに反ナチスへの理解もほんのりあって。
ナチスの横暴や消滅を描いているので、作品における象徴みたいな存在でした。

ヒトラーを監督のタイカ・ワイティティ本人が演じていました。
非常にコミカルで結構ヒトラーに寄っていましたね。

ハイセンス系で深くて難解な要素もありながら大衆受け出来るギリギリの娯楽性もあり。
笑って泣ける名画でした。


そんなわけで9点。
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