メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!

2018年10月15日 | 映画
音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!
を観ました。


驚異の歌声をもつ世界的ロックスター・シン(阿部サダヲ)。
その存在がカリスマであり、熱狂的な人気を誇っているが、実は彼には決して人に知られてはいけない秘密があった。
万人を魅了するその歌声は“声帯ドーピング”というオキテ破りの方法によって作られたものだったのだ。
さらに長年にわたる声帯ドーピングのやりすぎによって、シンの喉は崩壊寸前に……!
そんなシンと出会ってしまったのは、異様に声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか(吉岡里帆)。
何事にも自信がなく内気なふうかは、彼女の歌を聴いたシンから「心が燃えない、心の不燃ゴミ」「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」と一刀両断されてしまう。
普通の会話もままならないほど正反対な2人は、お互いの存在が目ざわりで仕方がない。
シンの言葉でミュージシャンとしての未来にすっかり自信を失ったふうか。
吉祥寺で「13アイスクリーム」を営む、強烈な個性をもつザッパおじさん(松尾スズキ)とデビルおばさん(ふせえり)の家に下宿している彼女のもとに、ある日突然シンがおしかけてきた。
「やらない理由を探すな!」と家に引きこもるふうかをシンは強引にオーディション会場へと連れていくのだった。
うんざりしながらも、シンの圧倒的エネルギーに触れたふうかは偶然、シンの“声帯ドーピング”の秘密を知ってしまう!
さらにシンの過去を知ることによって、次第に心を開いていく。
しかし、シンに“声帯ドーピング”を施したプロダクションの社長(田中哲司)がシンの最後の歌声を利用しようと迫り、レコード会社のシン担当・坂口(千葉雄大)も気弱な表の顔とは別に裏である計画を企てていた。
坂口の陰謀によって、“声帯ドーピング”の秘密がマスコミに漏れたシンは、謎の組織から追われるハメになる。そして、ふうかはシンの声を守るために、シンと一緒に逃げることを決意するが……リミット迫る“声の争奪戦”が今、はじまる!!!


三木聡監督作品です。
もう自分の青春どころかアイデンティティの生みの親と言いたいくらいの三木聡です。

久々の監督作品でちょっとらしくないようなガッツリ音楽な作品でどうなのかな?という疑問はありつつ。
いつもは設定やらストーリーからして非現実的で独特なものが多いので。
ただ実際見てみるとやはりありえない世界観でザ・三木聡な映画で最高でした。
不安なんて抱く必要が無いくらい三木聡のセンスは信用できるってことを改めて痛感しました。

独学とオリジナルな手法のみでやってきた三木聡監督ですが今作もその要素ふんだんです。
イマイチな映画を品評するとき、「映画の作り方」って本を読みながら作ったのかな?と皮肉って来ましたが。
三木聡はまさにその真逆。
完全オリジナルで自分の描きたいイメージを自分なりの手法で実現している感じはひしひしと伝わりますね。
そういうのが一番伝わる監督な気がします。
外部の影響を受けずに自分流で表現できる天才肌って感じがします。

そしてストーリーと無関係の面白いセリフやさりげない名言をフォーカスしない感じで放り込んで来るところに、シャイなメンタルを感じます。
自分がもし映画を作ったらこういう感じになるだろうな、ってものすごく共感できるテイストでした。
このストーリーと無関係のおもしろセリフは非常に三木聡らしさを感じさせますね。
このさり気なくぶっ飛んだ突拍子の無さが見事に独特のワールドを構築する隠れ要素ですね。

過去作でいうとインスタント沼に近い健気なヒロインとロックンローラーな組み合わせで。
今までで一番スケール感や予算感が大きい感じでした。
冒頭のロックシーンからハイテンポでいい感じで、つかみが最高です。
三木聡作品って映画のつかみ部門では世界最高くらいに思ってますが、インスタント沼では度肝を抜かれましたが。
今作も最高でした。

また三木聡って女優さんの可愛さ、キュートさを引き出す天才だと思いますが今作も完璧です。
インスタント沼で麻生久美子のキュートな部分の魅力を最大限に引き出したように、
今作では吉岡里帆の可愛さを最大限に引き出しています。
めちゃくちゃ可愛かったです。

設定や展開は独特ですが、今作は珍しくアツい情熱が前面に出ていて。
ずっとハイテンポ、ハイテンションで最高でした。
三木聡センスのこの熱血に阿部サダヲをキャスティングしたらもうそれはホームランでしょう。
それでいてしっかりとした起承転結なストーリーがいいテンポで展開していき、最後はひたすら発散している感じもありますが。

初日に行ったのでなかなか混んでましたが流石のコメディでかなりの笑いが上がっていました。
クリエイティブにコメディを作れる天才でしょう。
それに加えて情熱もロックも音楽的魅力もロマンチックもありました。

全般通してサイケデリックな世界観でセットの感じがもうアートな領域で凄くて。
カメラアングルもぐるぐるで遊びココロがあって非常に癖になる魅力がありました。

そこに独特の無関係っぽい展開が入ってきたりして。
トランスしてしまうような夢を見ているような素晴らしさがあります。

このタイミングであいみょんを使用してるのも良いですね。
かなり魂揺さぶられる曲でした。

エンドロールにも毎度遊びココロを入れ込む三木聡ですが、今作も今まで見たこと無い斬新なエンドロールでした。
こういう心を持っていることがいちいち好きです。

主演の吉岡里帆は超絶かわいい次元でした。
声が小さくて貧乏で繊細な感じの可愛さで、それなのに容赦なくビシバシやられてしまう感じは三木聡作品のヒロインって感じで。
この健気さの作り出しかたが本当に上手です。
ギター弾いてる姿もとても様になっていて、成長する姿も良くって。
いよいよ叫ぶシーンにはサブイボで感動すらありました。

阿部サダヲをこの役にしたのは完璧ですね。
ってか阿部サダヲをキャスティングしなければこの作品は成立しないくらい阿部サダヲ向きなキャラでした。
ロックで破天荒だし情熱的だし。
この人が言う言葉はグサグサと刺さって人生の指標になりそうな程でした。
ルールや常識を否定するパンクロッカーに「そのわりに曲順決めてるじゃねーか!!」は最高でした。

千葉雄大がいい人なのか?悪い人なのか?そんなことがどうでもいいようなキャラで。
この子的には三木聡の作品をこなしたことは大きいでしょう。

田中哲司が密かに一番ぶっ飛んだようなクレイジーな役でした。
この人も色んな役が出来て凄いですがここまでやるとはあっぱれです。

ふせえりと松尾スズキは言わずもがなレギュラーで見た目は変われどやってることとキャラクターは何時も通りな感じでした。
相変わらずクセが強くてちょっとミュージカル調もあって面白かったです。

岩松了と森下能幸もちょい役ながら三木組として未だに出ていて良かったですね。

僕の好きな片山友希がセクシーな役で出ていて最高でした。
この子も地道に頑張っている印象ですが三木聡作品に出たのは相当良いことですね。
自分もとてもうれしく、今後のブレイクを期待してしまいます。

愛してやまない麻生久美子は今作はクセの強い役でしたが良い存在感で素晴らしかったです。
やっぱり三木聡作品には欠かせないですね。

小峠英二がパンクロッカー役で元々そういう出の人だしピッタリでした。

三木聡作品はDVDも買ってきたほど自分にとっては特別ですが。
色んな作品を見ていてちょっと離れていましたがやっぱり自分には欠かせない構成要素だと思い知らされる名画でした。

一級品のコメディでありながら一級品のクリエイティブ作品でもあり、メッセージ性も強い。
決して泣くような映画では無いのですが自分はエンドロールで号泣でした。
理由はわからないですが、感情が飽和すると涙腺やられるのです。

このタイトルはすべての人生への痛烈なメッセージにも思えました。
自分ももうおっさんですが今後の人生の座右の銘にしていきたいくらいでした。


そんなわけで10点。
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