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「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

ハクソー・リッジ

2017年06月29日 | 映画
ハクソー・リッジ
を観ました。


ヴァージニア州の豊かな緑に囲まれた町で生まれ育ったデズモンド・ドスは、元気に野山を駆け回る少年だったが、家族に問題を抱えていた。父親のトム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は、兵士として戦った第1次世界大戦で心に傷を負い、酒におぼれ、母バーサ(レイチェル・グリフィス)とのケンカがたえない日々を送っていた。
月日は流れ、成長したデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)と恋におち、心躍る時を過ごしていた。だが、第2次世界大戦が日に日に激化し、デズモンドの弟も周りの友人たちも次々と出征する。そんな中、子供時代の苦い経験から、「汝、殺すことなかれ」という教えを大切にしてきたデズモンドは、「衛生兵であれば自分も国に尽くすことができる」と陸軍に志願する。
グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、ジャクソン基地で上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。体力には自信があり、戦場に見立てた泥道を這いずり回り、全速力で障害物によじ登るのは何の苦もなかった。だが、狙撃の訓練が始まった時、デズモンドは静かにしかし断固として銃に触れることを拒絶する。
軍服や軍務には何の問題もなく「人を殺せないだけです」と主張するデズモンドは、「戦争は人を殺すことだ」と呆れるグローヴァー大尉から、命令に従えないのなら、除隊しろと宣告される。その日から、上官と兵士たちの嫌がらせが始まるが、デズモンドの決意は微塵も揺るがなかった。
しかし、出征前に約束したドロシーとの結婚式の日、デズモンドはライフルの訓練を終えないと休暇は許可できないと言われ、命令拒否として軍法会議にかけられることになる。面会に訪れたドロシーに、銃に触れないのはプライドが邪魔しているからだと指摘されたデズモンドは、その“プライド”こそが大切だと気付く。「信念を曲げたら生きていけない」というデズモンドの深い想いに心を打たれたドロシーは、「何があろうと、あなたを愛し続けるわ」と励ますのだった。「皆は殺すが、僕は助けたい」─軍法会議で堂々と宣言するデズモンド。ところが、意外な人物の尽力で、デズモンドの主張は認められる。
1945年5月、沖縄。グローヴァー大尉に率いられて、「ハクソー・リッジ」に到着した第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たち。先発部隊が6回登って6回撃退された末に壊滅した激戦地だ。150mの絶壁を登ると、そこには百戦錬磨の軍曹さえ見たことのない異界が広がっていた。前進した瞬間、四方八方からの攻撃で、秒速で倒れていく兵士たち。他の衛生兵なら見捨てるほどの重傷の兵士たちの元へ駆け寄り、「俺が家に帰してやる」と声をかけ、応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中を走り抜けるデズモンド。ひるむことなく何度でも、戦場に散らばった命を拾い続けるデズモンドに、感嘆の目を向け始める兵士たち。しかし、武器を持たないデズモンドに、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた─。


メル・ギブソン監督作品です。
ノンフィクション映画です。
非常に高評価が多いメル・ギブソン作品ですが、久々に監督業のイメージです。
辛辣な映画が多いメル・ギブソン監督作品、しかもレーティングはPG12なので警戒しました。

案の定かなりしんどい作品でした。
観るのに覚悟が必要な作品ですね。

映画は大きく2つに分けれる様な構成です。
前半の軍での訓練やそこでの人間関係などの描写。
その部分の多くはドスという主人公の人間性、彼が抱く強い信念を伝えるための描写です。
戦争という善悪の議論が非常に難しいテーマの中で、
戦争には参加するが、人は殺さない、という主義は確かに悩ましいです。
作中で議論される通り、そんな綺麗事の世界では無いという気はします。
後々それは確かにそうだと思い、後半の戦闘部分を観ても彼が正しいのかどうかは自分にはわかりませんでした。
そんな彼の主義は軍にとっては厄介で何とか除隊させようと様々なトラブルが起きます。
裁判にかけられるまでになってしまいます。
戦争には参加するけど人は殺さない、そのあまりに矛盾した主義の難しさはいいテーマです。

その最中に看護師の女性とのロマンス要素もありますが、かなりあっさりと描かれています。
簡潔に上手に描いているので、二人が非常に深く信頼しあっているのはそれなりに納得です。

後半はがっつり戦闘シーンでなかなか疲れます。
プライベートライアン以降、戦争映画のハードルや描写はグッと上がって映画館で観るにはそれなりの覚悟が必要です。
描かれているのは太平洋戦争の沖縄戦で、アメリカ軍に襲いかかる恐ろしい敵は日本兵です。
正直映画を観るまでは知りませんでした。
予告編では日本や沖縄に配慮してそこがわからないようにしたそうですが、ちょっと騙された気分はあります。
沖縄戦を描いた映画ならばもっと覚悟を持って見に行ったのに、って感じです。
ちびちびと長々と太平洋戦争周辺を個人的に勉強しているので、
その点で今作もなかなか複雑な気分にさせられました。
日本がそこまで悪に描かれているわけでは無いですが、
狂信的で諦めずしつこい、不気味なアジア人の軍隊という印象は受けます。
恐らくアメリカ人からみた日本人の印象はこの延長なのかもしれない、なんて思ってしまいました。
日本人でありながら、日本軍の人々に不気味さを感じてしまう気分は正直ありますね。

話していてもいきなり頭が吹っ飛んだり、足が吹っ飛んだり、傷ついた人の血が流れたり。
グロテスクな描写も瞬間的ではありますが容赦無いです。

日本軍の日本文化の感じは非常にささやかです。
日本人の会話はちゃんとした日本語ではありますが、日本人の自分が聞いてもわからないくらい細やかなものが多かったです。
それくらい日本人を描写している場面は無いです。
切腹シーンもありますが、サラッとな感じです。
でも描写的に間違ってる、と感じるようなストレスは無かったですね。

最近のノンフィクションで急にあるあるの手法になった感がありますが、ラストにはご本人登場です。
しかしこの手法は非常に重さが増す効果がありますね。

主演はアンドリュー・ガーフィールドです。
非常に信心深く、悲しいくらいに神に問いかけるキャラは、
どうしても今年観た沈黙(サイレンス)とオーバーラップしてしまいますね。
にしてもすっかり本格派な俳優になってきましたね。
スパイダーマンのイメージをすっかり払拭してる感じは見事だと思います。
途中降板したのも正解な気がします。

サム・ワーシントンが主人公の軍隊の大尉役でしたが、控えめでシブくて奥深いいい役どころでした。
主演級の役者だと思いますが、脇役をやっても非常にいい味出しますね。

恋人役のテリーサ・パーマーはさほど好みじゃないですが、なかなか美人で良かったです。

脇役としては好みのヒューゴ・ウィーヴィングは父親役でしたが、相変わらずいい存在感ですね。

同じくヴィンス・ヴォーンもインパクトあるルックスで、いい存在感でした。

非常に本格的な戦争映画ですが、ノンフィクションとはいえ勿論の演出はあります。
そこは誇大演出な気もしますが、それくらいの演出を入れたほうが個人的には好みです。

太平洋戦争、日米戦争の善悪は個人的に悩ましいポイントなので、
この作品を観ても素直に感動したりは出来ない複雑さがありました。
でもそう悩めるくらいの高品質な映画でした。


そんなわけで8点。

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