メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

命みじかし、恋せよ乙女

2019年08月21日 | 映画
命みじかし、恋せよ乙女
を観ました。


ドイツ、ミュンヘン。幼い娘の誕生パーティに、招待されてもいないのに酒に酔って現れ、別れた妻から「正気?」と追い返されるカール(ゴロ・オイラー)。
仕事も家族も生きる希望さえも失ったカールが、泥酔の底で「助けて」とつぶやいた翌日、ユウ(入月絢)という名の若い日本人女性が訪ねてくる。
カールの亡き父ルディと親交があったというユウは、ルディが生前暮らしていた家を見たいというのだ。
よく知らないユウと共に、郊外にある今は空き家となった実家へと向かう羽目になるカール。
父の墓の前で手を合わせて涙を流しながら「彼は私に優しかった」と話すユウの言動は、すべてがとても風変りだった。
実家に入ると、いい思い出も悪い記憶も次々と蘇り、カールは両親の幻影と共に数日間を過ごすことになる。
ある晴れた日、ユウの希望で観光名所のノイシュヴァンシュタイン城へ出掛けたカールは、土産物売り場で働く義姉に出くわす。
彼女から甥っ子で高校生のロベルトが引きこもりになったと聞いて驚くカール。
兄のクラウス(フェリックス・アイトナー)が、極右政党に入党したことが原因だった。
心配のあまり兄の家へ立ち寄ったカールは、帰宅した兄と大げんかになってしまう。
兄クラウスと姉カロ(ビルギット・ミニヒマイアー)とカールの3兄弟は、子供の頃から仲が良くなかった。
母親に溺愛されていた末っ子のカールに、兄と姉が嫉妬していたのだ。
母に続いて父が亡くなった時には相続でもめ、以来、完全に疎遠になっていた。
こうして、カールは次第に目を背けてきた自らの人生と向き合い始める。
両親の期待に応えられなかった不甲斐なさ、親の死に目に逢えなかった後悔、家族との縁を切ってきた不義理、そして本当の自分をさらけ出すことが出来なかった過去のすべて―。
ユウはそんなカールの耳元でそっとささやく「あなたは今のままでいいの。愛してる。」
ずっと止まっていた時計が少しずつ動き始めたカールが、新たな人生へと一歩を踏み出そうとした、まさにその時、ユウが忽然と姿を消してしまう。
ユウを捜しに遥か海を超え日本を訪れたカールは、彼女の故郷である神奈川県の茅ヶ崎海岸へ向かう。
ユウの面影を追ううちにカールがたどり着いたのは、茅ヶ崎館というひっそりとした旅館だった。
そして茅ヶ崎館の老いた女将(樹木希林)との思い掛けない交流から、カールは哀しくも美しい、知られざる人生の物語を知ることになる──。


ドーリス・デリエ脚本・監督です。
僕の大好きな樹木希林さんの遺作です、観ないわけには行かないです。

監督はドイツの女性で映画監督、小説家、絵本作家、オペラの演出家とマルチに色々やっている監督のようです。
そのバックボーンが存分に出ているような非常に作家性の強い作品です。

個人的な感覚だと20年くらい前に世の中に非常に溢れていたアーティスティックなヨーロッパ映画やミニシアター系の邦画のテイストです。
かなり叙情的で詩的で。
明確な説明もなく淡々と謎めいたストーリーが綴られます。

そして内容は意外にも結構ホラーです。
亡霊やら悪霊やらの類とのやり取りです。
怖がろうと思えば怖がれるくらいホラー要素はあります。
ただそれを美しく詩的に描いているのでホラー映画にはなっていません。

かなり支離滅裂な始まりと支離滅裂な展開です。
それを象徴する不思議ちゃんな女性がまったくもって支離滅裂な言動で意味不明です。

謎のお祭りのようなものがやってきて傷つけて行くのも意味不明です。

自分が一人旅でフラっと訪れたノイシュバンシュタイン城が舞台のひとつで嬉しかったです。
かなり懐かしくてあの美しさが作品によくマッチしていました。

前半はもう現実と虚構の区別がつかないくらいです。
一応虚構の描写はかなり独特な、あのシャッタースピードを遅くしたような線を引くようなカクカクの映像になります。
ぼんやりした真っ黒な悪霊やら過去の世界との交流です。

後半は舞台が日本になって傷ついた主人公の男と樹木希林さんとのやり取りです。
凄く閉鎖的で深い深いやり取りでたまらなかったですね。
樹木希林さんの上手さが半端ないのはありますが、言葉が通じない傷ついた男とのやり取りはたまらなかったです。

全然予定調和的な展開はなく報いもなく。
破滅的で絶望的で救いのない物語のようでしたが素晴らしい物語の締め方をしていたと思います。
それは結構心打たれるクライマックスでした。

全体的にあらゆるものがメタファーのようでとても考えさせられました。
思えば冒頭のクレジットのシーンの背景の日本の妖怪の絵がもう何かを強く暗示しているようでした。

主人公はゴロ・オイラーでした。
コンテンポラリーダンスばりに独り演技で見せなきゃいけない場面も多くめちゃくちゃ難しそうな役どころでしたがしっかりとこなしてました。
病んだドイツ人の雰囲気はとても良く出ていました。
途中からは諸々変わってしまうし、舞台は日本になるし、かなり大クセのファッションで描いていますが成立していたと思います。
最後のシーンには胸を打たれました。

入月絢は初めて観ましたが主にダンサーですね。
ただ作品のテイストにめちゃくちゃ合っていてかなり外国受けしそうな雰囲気でした。
歳より大分若く見える役どころでした。
不思議ちゃんマックスな謎すぎる女性にぴったりでした。

樹木希林さんは言うまでもなく最高です。
かなり病んでガリガリでフラフラでしたがそれでも最高峰に演技は素晴らしかったです。
こんなにナチュラル感出せる女優さんはもう未来にも出てこないかも知れませんね。
見れば見るほど残念で悲しいですね。

かなり作家性が強いので好みは分かれるとは思いますが、自分にはかなり好みでした。


そんなわけで8点。

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