メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

2010年11月18日 | 
友人の行きつけだった小洒落た洋風居酒屋をいつの間にか自分の行きつけにしている。

その日も仕事帰り一人その店で夕御飯と2杯ほどお酒を飲んで帰る。

帰り道繁華街に不慣れな風景、女性が一人道行く人に花を一輪ずつ配っている。
ティッシュ配りに混じって配っている。

それを見てなんだか急に優しい気持ちが芽生えた僕は花をもらいに行く。

僕の手前でおばさんが花を受け取る。
おばさんは女性に一言二言声をかけている。

そしてその直後に僕は花を受け取る。
最後の一輪だった。

僕はお礼を言った。

女性は20代半ばくらいでそれほど美人というわけでは無いが、その明るい社交的な雰囲気に惹かれるものがある。
なんとも晴れ晴れとした笑顔で話す。

全ての花を配り終えて店に戻ると言う。
店の場所は僕が向かっている駅の方だと言うので一緒に歩くことにした。
内心、これは幸運と思いドキドキしていた。

非常に人懐っこい彼女は歩いている最中に何度が僕の腕に触れてきた。
それをきっかけにわずか数分の会話だったが僕は思い切って彼女を食事に誘う。

当たり前のように了承してくれる彼女。

僕はタバコを吸いながら彼女の仕事終り、後片付け作業の数分を待つ。
何故か胸が高鳴る。

彼女はさっきまで僕が食事していた店に行こうと言う。
彼女にとっても行きつけのようで僕がさっき行った事など知らないのだ。

さっき出たばかりでなんか少々複雑だが今度は二人なので気にせず浮かれ気分で店に入る。

彼女は店に入ると見ず知らずの一人客と親しくしたりし始める。
内気な僕から見ると恐ろしく社交的である。

やがて彼女は僕以外の人間とも盛り上がり始め、なんだか置いて行かれた様な気持ちの僕は気付かれないようにひっそりと店を出て帰った。


数日後、名前も聞けなかった彼女の花屋を再び訪ねてみる。
しかしそこに花屋は無く少しの花が飾られているだけだった。

幻かしら・・・。


僅かな希望を胸に一緒に行った居酒屋に行く。
ウィスキーの水割りで粘りながら彼女を待つ。

そんな日々が続く。

結局二度と会うことは無かった。

なんだかおとぎ話みたいだなと思った。

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