友罪
を観ました。
ジャーナリストの夢に破れた益田(生田斗真)は、部屋を借りる金も使い果たし、寮のある町工場で見習いとして働き始める。同じ日に鈴木(瑛太)という男も入ったが、彼は自分のことは一切語らず、他人との交流を拒んでいた。鈴木のことを不審に思った寮の先輩・清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)は益田を強制的に連れ、鈴木の部屋をガサ入れする。そこで益田は女性の裸婦像が書かれたスケッチブックを見つける。
ある夜、酔っぱらって寮の玄関で倒れていた清水を一緒に介抱する益田と鈴木。益田は、鈴木が自殺した中学時代の同級生に似ていると話しかける。それを聞いた鈴木から、「俺が自殺したら悲しいと思える?」と唐突に尋ねられた益田は、戸惑いながらも「悲しいに決まってるだろ」と答えるのが精一杯だった。
工場からの帰り道、鈴木は男に追いかけられている女をかばう形になり、男から一方的に殴られる。彼女の名は美代子(夏帆)。元恋人の達也(忍成修吾)に唆されAVに出演した過去を持ち、達也と別れて以降も執拗につきまとわれていた。鈴木は美代子のマンションで、けがの手当てを受ける。
数日後、慣れない肉体労働に疲れ果てた益田は、めまいを起こして機械で指を切断する重傷を負う。しかし、鈴木の冷静な対処と、病院まで運んでくれたタクシードライバー・山内(佐藤浩市)の応急処置のアドバイスのおかげで、何とか益田の指はつながるのだった。
夜勤明け、妻の智子(西田尚美)の実家へ駆けつける山内。義父が亡くなったのだが、妻と会うのは10年ぶりだった。息子の正人(石田法嗣)が交通事故を起こして人の命を奪った罪を償うために、家族を"解散"したのだ。それなのに、正人が結婚しようとしていると聞いた山内は、怒りと当惑で言葉を失う。
入院中の益田のもとに、元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)が見舞いに訪れる。清美は埼玉で起きた児童殺人事件の記事で行き詰っていると打ち明け、17年前の連続殺傷事件の犯人・青柳健太郎の再犯だという噂について意見を求めるが、益田はジャーナリスト時代に自身の記事に因って招いた暗い過去が思い起こされ、拒絶する。
数週間後、カラオケパブで清水や内海、そして鈴木が益田の退院祝いをしてくれる。鈴木の傍らには、あれ以来、時々会うようになった美代子もいる。皆の勧めから鈴木もマイクを取り、ぎこちなくもアニメソングを歌う。その楽しげな表情が嬉しく、益田はスマホのカメラを鈴木に向けるのだった。帰り道、益田があらためて鈴木に指の件でお礼を言うと、鈴木は「友達だから」とうれしそうに答えるのだった。
寮に戻りスマホを見ると、清美から再度「17年前の事件について意見を聞かせて」というラインが届いていた。ため息をつきながらもパソコンを開き、事件について検索した益田は、当時14歳だった犯人の青柳健太郎の顔写真を見て、息をのむ。そこには鈴木によく似た少年の姿が写っていた。まさかと更に検索し、医療少年院で青柳の担当だった白石(富田靖子)の写真を見て固まる益田。それは、鈴木のスケッチブックに描かれていた女性だった。
時を同じくして、それぞれが抱える問題が露わになる。山内は恋人が妊娠したという息子を訪ね、「お前の為に家族を解散したっていうのに、お前が家族をつくってどうするんだ」と怒りをぶつける。白石は鈴木の再犯の噂に心を痛めていたが、鈴木にばかり心を砕いてきた代償で疎遠になっていた高校生の娘が妊娠したという知らせを聞き、戸惑う。美代子は、かつて出演していたAVを達也によって寮のポストにDVDを投函されてしまい、寮の皆がそれを知ってしまう。
スマホの動画を再生し、カラオケで歌う鈴木の無邪気な笑顔を見つめる益田。翌日、益田は17年前の青柳健太郎の犯行現場へと旅立つ。本当に鈴木が青柳健太郎なのか?なぜ殺したのか?そんな益田を待ち受けていたのは、17年前に犯した自分の罪だった─。
瀬々敬久監督作品です。
社会派の大作を得意としている印象ですね。
今作もまた前情報から重々しい、社会派な雰囲気で。
観てみたら案の定、だいたい想像通り、期待通りの映画です。
原作は読んでいないのですが、モデルは1997年の神戸の連続児童殺傷事件のことかな?とは容易に思えます。
少年Aといえば第一人者は彼ですからね。
あの事件は個人的にもかなりの衝撃で、関連の書籍は結構詠みました。
観てみるとやはりそんな空気感です。
あの少年Aはその後どんな人生を歩んでいるのか?想像でしか無いですが。
その1パターンとしてこうかも知れない、って感じの物語でした。
序盤は意外と淡々としていて、どこでドラマが加速するのかな?という心境で観ていました。
通常の物語だとその状況に陥った導入を見せるようなことが普通なのですが、
この作品は普通に生活しているところから始まり、そこから過去をえぐって行くような構造です。
主な登場人物たちには過去に相当な出来事があったような匂わせはすごいのですが、
それが何なのか?はなかなか明かされず、ゆっくりとわかっていく感じです。
そんな登場人物たちの運命だったり、現在が巧妙に交錯していくのかと思いきや、
そういうエンターテイメント性はかなり低く、ストーリーが巧妙に絡むようなことは無いです。
とかく、佐藤浩市が演じていたタクシードライバーの物語はなぜこの物語に組み込まれているのか?
謎ではありました。
エンターテイメント性が低い分、元少年Aという余りの重い過去と、それに偶然遭遇してしまった主人公の苦悩。
それを非常に深刻に描いています。
基本的には登場人物たちの取り戻せない過去を抱いたままどうやって生きるのか?がテーマでしょう。
中学校時代の友人の自殺を引きずり過去の仕事の夢破れてどん底な生活をする者、過去に連続児童殺傷事件を起こした者、
息子が交通事故で人を殺したため贖罪に生きる者、過去に恋人に強要されAVに出演した者。
そういう感じでみんながめちゃくちゃ暗い過去を抱えています。
とかく元少年Aは強烈なので9割型メインですが。
シーンごとの回収はさほどされないので心に刺さる良い余韻が残ります。
単純な物語だともっと簡単に問と解があるのでしょうが。
作家性とエンターテイメント性の狭間をうまいこと突いている作品だとは思います。
ただ全体的なまとまりがあまりに欠けているのはこの手の作品としてはちょっととは思いました。
主演の生田斗真はいろんな役をやりますが中では普通の役の方だと思います。
作品が暗いのでこの主人公も暗く、笑うシーンなどは殆ど無いですが、それでも良い存在感を出します。
相棒の瑛太に引っ張られる感じで実に悩ましいいい演技をしていました。
瑛太は最近ではすっかり演技派な感じで、マッドな役をやることが多いですが今作もそうですね。
個人的にはイヌコネクションの杉浦がやる生乾木みたいな気持ち悪いキャラでした。
過去に狂気の犯罪を犯した人物像としてはまあまあ納得な感じでした。
佐藤浩市はちょっと取ってつけたようなキャスティングでしたね。
ここの描写はまるごと無いほうが良かったかもとも思えました。
この人が出ていることで作品が引き締まるのは確かですが。
夏帆はかなり弱々しい流されやすい感じの女性でした。
清純派からこういう体当たり系の役までいろいろこなしてすっかり良い女優になりましたね。
この手の性格の女性はドSな自分にはなかなか好みですが
山本美月は今、観るほどに好きになっていきますが、すっかりちゃんとした女優になりましたね。
ルックスは相変わらず美人で良いですが演技も良かったです。
出番は思ったより少なめでしたが、こういう重厚な作品に参加したのはプラスでしょう。
だいたい期待したくらいの、テーマに見合うくらいのクオリティはありました。
そんなわけで5点。
を観ました。
ジャーナリストの夢に破れた益田(生田斗真)は、部屋を借りる金も使い果たし、寮のある町工場で見習いとして働き始める。同じ日に鈴木(瑛太)という男も入ったが、彼は自分のことは一切語らず、他人との交流を拒んでいた。鈴木のことを不審に思った寮の先輩・清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)は益田を強制的に連れ、鈴木の部屋をガサ入れする。そこで益田は女性の裸婦像が書かれたスケッチブックを見つける。
ある夜、酔っぱらって寮の玄関で倒れていた清水を一緒に介抱する益田と鈴木。益田は、鈴木が自殺した中学時代の同級生に似ていると話しかける。それを聞いた鈴木から、「俺が自殺したら悲しいと思える?」と唐突に尋ねられた益田は、戸惑いながらも「悲しいに決まってるだろ」と答えるのが精一杯だった。
工場からの帰り道、鈴木は男に追いかけられている女をかばう形になり、男から一方的に殴られる。彼女の名は美代子(夏帆)。元恋人の達也(忍成修吾)に唆されAVに出演した過去を持ち、達也と別れて以降も執拗につきまとわれていた。鈴木は美代子のマンションで、けがの手当てを受ける。
数日後、慣れない肉体労働に疲れ果てた益田は、めまいを起こして機械で指を切断する重傷を負う。しかし、鈴木の冷静な対処と、病院まで運んでくれたタクシードライバー・山内(佐藤浩市)の応急処置のアドバイスのおかげで、何とか益田の指はつながるのだった。
夜勤明け、妻の智子(西田尚美)の実家へ駆けつける山内。義父が亡くなったのだが、妻と会うのは10年ぶりだった。息子の正人(石田法嗣)が交通事故を起こして人の命を奪った罪を償うために、家族を"解散"したのだ。それなのに、正人が結婚しようとしていると聞いた山内は、怒りと当惑で言葉を失う。
入院中の益田のもとに、元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)が見舞いに訪れる。清美は埼玉で起きた児童殺人事件の記事で行き詰っていると打ち明け、17年前の連続殺傷事件の犯人・青柳健太郎の再犯だという噂について意見を求めるが、益田はジャーナリスト時代に自身の記事に因って招いた暗い過去が思い起こされ、拒絶する。
数週間後、カラオケパブで清水や内海、そして鈴木が益田の退院祝いをしてくれる。鈴木の傍らには、あれ以来、時々会うようになった美代子もいる。皆の勧めから鈴木もマイクを取り、ぎこちなくもアニメソングを歌う。その楽しげな表情が嬉しく、益田はスマホのカメラを鈴木に向けるのだった。帰り道、益田があらためて鈴木に指の件でお礼を言うと、鈴木は「友達だから」とうれしそうに答えるのだった。
寮に戻りスマホを見ると、清美から再度「17年前の事件について意見を聞かせて」というラインが届いていた。ため息をつきながらもパソコンを開き、事件について検索した益田は、当時14歳だった犯人の青柳健太郎の顔写真を見て、息をのむ。そこには鈴木によく似た少年の姿が写っていた。まさかと更に検索し、医療少年院で青柳の担当だった白石(富田靖子)の写真を見て固まる益田。それは、鈴木のスケッチブックに描かれていた女性だった。
時を同じくして、それぞれが抱える問題が露わになる。山内は恋人が妊娠したという息子を訪ね、「お前の為に家族を解散したっていうのに、お前が家族をつくってどうするんだ」と怒りをぶつける。白石は鈴木の再犯の噂に心を痛めていたが、鈴木にばかり心を砕いてきた代償で疎遠になっていた高校生の娘が妊娠したという知らせを聞き、戸惑う。美代子は、かつて出演していたAVを達也によって寮のポストにDVDを投函されてしまい、寮の皆がそれを知ってしまう。
スマホの動画を再生し、カラオケで歌う鈴木の無邪気な笑顔を見つめる益田。翌日、益田は17年前の青柳健太郎の犯行現場へと旅立つ。本当に鈴木が青柳健太郎なのか?なぜ殺したのか?そんな益田を待ち受けていたのは、17年前に犯した自分の罪だった─。
瀬々敬久監督作品です。
社会派の大作を得意としている印象ですね。
今作もまた前情報から重々しい、社会派な雰囲気で。
観てみたら案の定、だいたい想像通り、期待通りの映画です。
原作は読んでいないのですが、モデルは1997年の神戸の連続児童殺傷事件のことかな?とは容易に思えます。
少年Aといえば第一人者は彼ですからね。
あの事件は個人的にもかなりの衝撃で、関連の書籍は結構詠みました。
観てみるとやはりそんな空気感です。
あの少年Aはその後どんな人生を歩んでいるのか?想像でしか無いですが。
その1パターンとしてこうかも知れない、って感じの物語でした。
序盤は意外と淡々としていて、どこでドラマが加速するのかな?という心境で観ていました。
通常の物語だとその状況に陥った導入を見せるようなことが普通なのですが、
この作品は普通に生活しているところから始まり、そこから過去をえぐって行くような構造です。
主な登場人物たちには過去に相当な出来事があったような匂わせはすごいのですが、
それが何なのか?はなかなか明かされず、ゆっくりとわかっていく感じです。
そんな登場人物たちの運命だったり、現在が巧妙に交錯していくのかと思いきや、
そういうエンターテイメント性はかなり低く、ストーリーが巧妙に絡むようなことは無いです。
とかく、佐藤浩市が演じていたタクシードライバーの物語はなぜこの物語に組み込まれているのか?
謎ではありました。
エンターテイメント性が低い分、元少年Aという余りの重い過去と、それに偶然遭遇してしまった主人公の苦悩。
それを非常に深刻に描いています。
基本的には登場人物たちの取り戻せない過去を抱いたままどうやって生きるのか?がテーマでしょう。
中学校時代の友人の自殺を引きずり過去の仕事の夢破れてどん底な生活をする者、過去に連続児童殺傷事件を起こした者、
息子が交通事故で人を殺したため贖罪に生きる者、過去に恋人に強要されAVに出演した者。
そういう感じでみんながめちゃくちゃ暗い過去を抱えています。
とかく元少年Aは強烈なので9割型メインですが。
シーンごとの回収はさほどされないので心に刺さる良い余韻が残ります。
単純な物語だともっと簡単に問と解があるのでしょうが。
作家性とエンターテイメント性の狭間をうまいこと突いている作品だとは思います。
ただ全体的なまとまりがあまりに欠けているのはこの手の作品としてはちょっととは思いました。
主演の生田斗真はいろんな役をやりますが中では普通の役の方だと思います。
作品が暗いのでこの主人公も暗く、笑うシーンなどは殆ど無いですが、それでも良い存在感を出します。
相棒の瑛太に引っ張られる感じで実に悩ましいいい演技をしていました。
瑛太は最近ではすっかり演技派な感じで、マッドな役をやることが多いですが今作もそうですね。
個人的にはイヌコネクションの杉浦がやる生乾木みたいな気持ち悪いキャラでした。
過去に狂気の犯罪を犯した人物像としてはまあまあ納得な感じでした。
佐藤浩市はちょっと取ってつけたようなキャスティングでしたね。
ここの描写はまるごと無いほうが良かったかもとも思えました。
この人が出ていることで作品が引き締まるのは確かですが。
夏帆はかなり弱々しい流されやすい感じの女性でした。
清純派からこういう体当たり系の役までいろいろこなしてすっかり良い女優になりましたね。
この手の性格の女性はドSな自分にはなかなか好みですが
山本美月は今、観るほどに好きになっていきますが、すっかりちゃんとした女優になりましたね。
ルックスは相変わらず美人で良いですが演技も良かったです。
出番は思ったより少なめでしたが、こういう重厚な作品に参加したのはプラスでしょう。
だいたい期待したくらいの、テーマに見合うくらいのクオリティはありました。
そんなわけで5点。