メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

町田くんの世界

2019年06月08日 | 映画
町田くんの世界
を観ました。


これまでのどんな主人公とも違っている、町田くん。
運動も勉強も出来ないけれど、たったひとつの才能は、すべての人を分け隔てなく愛することだった!
そんな“人が大好きな”町田くんが、“人が大嫌いな”の猪原さんに出会ったことで、初めて“わからない感情”に向き合うことに。
そして、まわりのすべての人を巻き込んで、驚天動地の物語が動き出す!


石井裕也監督作品です。
大好きな監督で自分の中では最高峰の引き出しに入れている監督です。
正直僕のツボすぎて毎打席ホームランです。

ただ、今作は少女漫画を原作にしてるとか、新人を主演にするとか、なかなかの世代に高校生役やらせてるとかで違う傾倒に移行するのかな?という印象もありました。
名作を作った大御所監督が時々自分の世界に入って難解な作品に傾倒していくのを良く見てきましたが、その手のものなのかな?
とも思いましたが石井裕也監督はそういうタイプでは無さそうです。

マックスにハイセンスな人だとは思いますが、今作はそれが目一杯発揮されたような作品です。
原作はもちろん読んでいないので知らないですが、とてもらしい物語でした。
天然ピュアでひたすら良い人に逆に振り回されてしまう周りの人々。
ジャンルで言うならばコメディでしょうか。
笑って泣けてファンタジーで石井裕也監督の一つの到達点を見た気分でした。
初日に見たのでなかなか混んでいましたが場内は大きな笑いと大きな涙で非常に素敵な熱量でした。

本当に天才の人だと思いますが、カメラの撮り方だけで僕としてはジーンとします。
メインの二人がやり取りしてる時の背景の感じ、引きの画で動きのある演技をさせるシーンとか。
ただシーンを観るだけでもジーンとするシーンの連続です。
最初から最後まですべてのシーンがハイセンスです。

天然の主人公を取り巻く周りの人々はかなりクールだったりワルだったり普通だったり。
とかく前田敦子を中心に解説なポジションの人々のやり取りが相当クールでシュールでかなり好みでした。
ピュアとクールなやり取りの共存は松本大洋作品のようでした。

ストーリーだけで見ていくならば青春ラブロマンスなのですがそれを全く違った手法で表現しているのが素晴らしいです。
コレが石井裕也監督ならではのそのジャンルの表現のしかたなのだなととても納得でした。

一見この手のモノとしてはベタな展開をしていきます。
くっつきそうでくっつかない歯がゆいパターンのやつですね。
ただその演出は全てオリジナリティであり回収の仕方もエラいぶっ飛んでクセが凄いファンタジーコメディでした。
なんか色々超越してるのでおそらくこの辺でついていけなくなる人もいるのでしょうが、僕は笑ってしまったし泣いてしまいました。
ごく一般的な娯楽性を期待している人には序盤のコメディは良くても途中からの突拍子の無さに共感はできないかもですが。
創作活動やアーティスティックな活動や情熱を持って目標を抱いている人にはとても響くと思います。

そしてこの映画が一般の作品より明確に優れているのは主演の二人がほぼ新人の無名の役者を使っていることだと思います。
オーディションで新人を抜擢するパターンはたまにありますが、今作のそれはかなり斬新です。
ニュースターの発掘や新たなスターのゴリ押し等ではなく、作品のテイストとして必要だからやっているという印象です。
大きなオーディションでセレクションされただけあってハイレベルな石井裕也監督作品でもしっかりと馴染むクオリティでした。
先入観が無いので観ていくに連れて主演二人の魅力の発見しか無くてとても楽しかったです。

主演の細田佳央太は石井裕也監督が選んだだけあって流石の存在感です。
クセの強いキャラですが新人感は感じさせない素晴らしい演技でした。
今後大型新人としてブレイクするかも知れませんが、今作をずっと代表作としていっても良いと思います。

ヒロインの関水渚も無名の新人ですが非常に素晴らしい存在感です。
小松菜奈や清野菜名が出てきた時を思い出しました、雰囲気的にも清野菜名に似てました。
幼い雰囲気と大人な雰囲気が共存していてとても魅力的でした。

前田敦子は女子高生役でびっくりですが、全然大丈夫だと思います。
めちゃくちゃクールで達観していてコメディの多くを担っていました。
正直、前田敦子のキャリアハイ、前田敦子の正しい使い方を観た気がします。
とことんクールで食い気味のテンポでセリフを話してて、それでいてちょっとホロッとする温かい場面も作り出していて。
これは今シーズンの俺アカデミー賞助演女優賞ノミネートです。

岩田剛典もなかなかチャレンジな高校生役ですがやはり問題ないです。
モデルをやっていてめちゃくちゃチャラ男な嫌なヤツですが、町田くんによって一番変えられた人ですね。

高畑充希も女子高生役で、しかも主人公よりも後輩で。
岩田剛典とカップル役で個人的には「あ、植物図鑑!」ってなりましたが、そのキャスティングもわざとかもですね。
あの作品とめちゃくちゃ違うキャラ設定の二人とめちゃくちゃ違う関係性のカップルでした。

大好きな太賀が真っすぐでらしいコメディキャラでした。
彼の良さが非常に出ていてよかったと思います。

石井裕也作品では常連というかレギュラー格の池松壮亮が今作も出ています。
小説家になりたいのに不本意ながらゴシップをやらされる記者役ですが流石の演技力です。
個人的には日本の若手俳優では演技力はトップと思うくらい評価しています。
同世代や年上の岩田剛典が高校生役なのに池松壮亮が子供も居る社会人役ってのは独特のキャスティングですが。
年齢関係なくみんな役に寄せているので問題ないです。

その妻役が戸田恵梨香でしたが出番は少なめでした。
ただ石井裕也作品に出ていたってだけで良かったです。

佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子という豪華キャストも出ていますがほぼゲスト出演くらいの出番です。

とにかく心打たれる名画でした。
自分の人生でも相当上位に位置するかけがえのない名画でした。
川の底からこんにちはに近い気もしますが、コメディと情熱と繊細さが共存していてこれまでのキャリアの集大成を感じました。


そんなわけで10点。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。