抱きしめたい－真実の物語－

抱きしめたい－真実の物語－　を観た。


バスケのエース、タクシー運転手の雅巳（錦戸亮）は息子に亡くなった母の話をする。
交通事故で左半身と記憶能力に障害を持つつかさ（北川景子）はそんな障害を持ちながらも強気で明るく振る舞う。
ある日の体育館で雅巳と出会い二人は恋に落ちる。
家族や周囲の反対を押し切り二人は支えあい幸せに暮らし始める。
そしてつかさが妊娠したことをきっかけに結婚する。
しかし二人には残酷な運命が待っていた。


って話。


黄泉がえりなどで知られる塩田明彦監督作品です。
そんなに気になったことのない監督です。

あまり話題になってる感じもないし、食欲をそそられない映画でしたが出先で時間が空いたので観ました。
まあ大好きな北川景子を大スクリーンで観たい！以外の目的は無い冷やかし感覚で。

ところが予想外にハイセンス映画で涙涙でした。
ガラガラでしたが、一緒に観ていた他の客達もかなりの号泣っぷりでした。

そんな幸せで切なくて儚い純愛モノでした。
そもそも僕は純愛モノが大好物なのでたいがい感化されてしまいますが。

この作品はちょっとまぁ反則要素はあります。
実話であること、主人公が障害者であること。
前提の困難が物語を感動的にするのは必然です。

それを越えても役者さんたちの演技が素晴らしかったと思いました。

特に障害者を演じた北川景子の完成度はかなり、かなり高かったと思います。
奇跡的に生還した後の半身不随の私生活の感じ。
記憶が時々途切れる感じ。
そして物語の中で事故直後のリハビリ風景のようなシーンが長々流れる場面があります。
そこの演技は賞レース級だと思いました。
脳にも障害があるようで、喋れない食べれない歩けない状態。
パニックを起こす感じ。
ただの可愛いだけの女優さんじゃないですね。
さらにそれを差し引いても相変わらずめっちゃ可愛いと思いキュンキュンしながら観れました。

相方の錦戸亮はこんなラブロマンス系でちらほら見かける印象があります。
なんというかクセが無くて好感持てますね。
ハンサム過ぎず、なんか色んな男性が自己投影し易い役者だと思います。
いい意味で記憶に残らないって感じの個性があります。
なのでこういう庶民的な映画、役柄にはぴったりな気がします。

國村隼と角替和枝の夫婦シーンがめっちゃ生活感溢れてて、
何気ない会話にとてもリアル感があってかなり素晴らしかったです。
自分の両親の事をすっと思い出せるような生の空気感がありました。
名脇役として引っ張りだこな感じの二人ですが、さすがベテラン実力派です。
こういう役者さん達は大好きですね。

風吹ジュンも同じく素晴らしかったです。
大変な事故に遭ってしまった娘を優しく厳しく守り続ける。
その向こうにある非常に大きな愛が伝わる素晴らしい演技でした。

僕が子供の頃事故に遭って死にかけた時、長期入院してた時の母の事を思い出しました。

とにかくやたら泣ける映画でした。

それは非常に気付きにくいですが監督の演出の質が良かったからだと思います。

自分の個性を全面的に出してくる監督さんがやはり多いですが、
こうして敢えて気配を決して役者さんの良さを引き出すような監督さんも必要だな、
と思いました。

偉そうな言い方をすれば大きな冒険はそんなにしてないですが、
ノーミスでこなしたような映画でした。

こういう素材はどう転ぶか難しいですからね。


そんなわけで８点です。


最近忙しいので全く観る予定に入れてなかった映画ですが、
結果観ておいて良かったなー、危なかったーと思いました。

これだけ映画を見てきてもまだまだその判断が難しいのです。