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モリーズ・ゲーム

2018年05月11日 | 映画
モリーズ・ゲーム
を観ました。


2002年、冬季オリンピック予選の最終戦。女子モーグル北米3位のモリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)は、五輪出場を目前にしていた。心理学教授の厳格な父親(ケヴィン・コスナー)の下、幼い頃からひたすら練習を重ね、12歳の時の背骨の大手術からも復活した。コロラド大学を首席で卒業したモリーは、ソルトレークで金メダルを獲得し、ロースクールを卒業して会社を設立するという人生設計を立てていた。ところが、1本の松の枝がモリーの運命を変える。枝にぶつかりスキー板が外れて転倒、モリーのアスリート人生は終わった
その後、ケガから回復し、LAで1年間の休暇を取っていたが、バイト先のボスからポーカー・ゲームのアシスタントを頼まれ、ハリウッドスターのプレイヤーX(マイケル・セラ)、映画監督、ラッパー、ボクサー……大金持ちの有名人ばかりが集まる高額ポーカー・ゲームの世界に足を踏み入れる。ゲームの参加費は1万ドル(100万円相当)。一夜で100万ドル(1億円)のお金が動くスリリングな世界、最高レベルの人々との交流に生き甲斐を見つけるが、数年後、突然クビを言い渡されたモリーは、秘かに練っていた計画を実行し、“モリーズ・ルーム”をオープン。その後、NYに拠点を移し、並外れた才覚によって新たなる伝説を築く。だが、2012年、FBIに突然踏み込まれ、ゲームは閉鎖。モリーは全財産を没収される。
2014年、現在。回顧録「モリーズ・ゲーム」を出版後、モリーは違法賭博の運営の容疑で突然FBIに逮捕される。「誤解です。2年もやっていない」と答えるが、「合衆国対モリー・ブルーム」と書かれた令状を前に成す術もない。何人もの弁護士に断られたモリーは、チャーリー・ジャフィー(イドリス・エルバ)に弁護を頼む。ジャフィーは、タブロイド紙に載る“ポーカー・プリンセス”は自分向きの事件ではないと断るが、モリーについて知るうちに彼女の弁護を引き受ける決意をする。
なぜポーカーをやめて2年も経つモリーが逮捕されたのか? FBIの本当の目的は? 果たして無罪を勝ち取ることは出来るのか?


アーロン・ソーキン監督・脚本です。
主に脚本家として非常に優秀な功績を残してきた監督ですね。

ノンフィクション映画ですが、原作は主人公のモリー・ブルーム自身です、彼女の自伝のベストセラーが元のようです。
それは信憑性高いノンフィクションですね。
ジェシカ・チャステインが主演をしてることもあり、女神の見えざる手と作品の雰囲気はかなり似ていますね。

いやはやなかなかの名画で、まさかな号泣でした。
劇場はオジサンの一人客ばかり、まあ泣いているのは僕くらいなものでしたが。
そこそこの長尺でひたすらシリアスに描いての見事な振り幅で終盤はなかなか上質な感動のたたみかけでした。
今やジェシカ・チャステインが出ている映画はかなりの名画であることが多いです。
そういう判断で映画館に行ってもいいくらいですね。

映画としては結構上級者向けで映画慣れしてない人や子供には難しいでしょう。
比較的静かな映画にも関わらずテンポが早く、語りが多いのでセリフ量がめちゃくちゃ多いです。
もう殆どサウンドノベルです。
小説1冊分くらいの文字を読んだのではないか?って思うくらいの字幕っぷりでした。

途中でポーカーの戦略の説明も入りますが、コレまた非常にハイテンポで説明するので元々詳しく無いと理解は難しそうです。
なので映画を観る前にポーカーの知識を入れた方が良いでしょう。

殆どのスポーツや部活などは映画化されている、と思っていましたが、モーグルを扱った映画は初めてだった気がします。
モーグルシーンはわずかですがそれでも新鮮で、勉強になるものはありました。
ただ結構悲惨な事故に遭うのでスキーやってる人には辛そうです。

主人公の生い立ちからはまり込んでいくギャンブル経営の世界。
あと1年、あと1年とズルズルやっていますが、主人公は非常にクレバーでしっかりとした理念を持って経営していました。
周りのそそのかしで若干道を踏み外すことはあれど、慌てることはなくクレバーに対応していました。

時間軸は裁判をしている地点の現在を軸に過去の何段階かの回想に飛んでいく構造です。
最終的には普通に見ればかなり落ちぶれた主人公ですがセレブ的な気品やらメンタルを失わない様は映画の一つの柱だったように思います。
そして自分の金より関わった人々の人生を壊さないことを最優先にして自ら有罪を主張していく姿は感動的でした。

全体的に淡々としていて感情を抑えている様なマグマのエネルギーのようなものを感じさせる演出です。
セリフは非常に多いのに説明にはさほどエネルギーを使っていないので置いていかれそうな場面もあります。
ただ何か大変な事をしているのはわかりますし、彼女の人生が非常に起伏が激しいのも伝わります。

なのでクライマックスのラスト30分ほどはひたすら魂を揺さぶられました。
予告編で語られて居るようなのがメインだとしたらそのラスト30分ほどはエピローグのようです。
裁判モノとしても斬新で熱くなるものがあります。
そして家族との軋轢の変化、裁判の結末、感動でした。

ジェシカ・チャステインはもう素晴らしすぎますね。
わずかながら20歳くらいのシーンがありましたが、そこをやるには流石に無理を感じましたが。
ただ大体はパーフェクトな仕上がりです。
元アスリートでありながら非常にクレバーで、過激なことをやっているのに倫理観が非常に素晴らしくて。
美しくてゴージャスでセクシーで、それでいて貞操観点が非常に固くて。
あまりに波乱万丈な人生ですがどんな状況下でも彼女の信念がブレていない感じが素晴らしかったです。
彼女が報われたのか?そうでないのか?は観た人次第な映画ですが爽やかではあります。
女神の見えざる手同様、クスリで全く眠らない役でした。

超スパルタな父親役でケヴィン・コスナーが出ていました。
最近はすっかり渋いオジサン俳優になりました。
いつものケヴィン・コスナーっぽくなく、ただひたすら嫌なヤツって感じで新境地って感じでした。
こういうキャラはツンデレしやすいので、ちょっといい人の面を見せられるだけで泣かされます。

主人公を弁護する優秀で正義感強い弁護士をイドリス・エルバが演じていました。
いい作品によく出ている印象ですが今作がピークくらいに素晴らしかったです。
優しさと厳しさと正義感を持っていて、それでいて主人公と衝突するのはハイレベルな描写でした。
こういう賢い人同士のイデオロギー闘争のようなものは好みです。

彼女のカジノの大物客としてマイケル・セラが出ていました。
どこかで観たと思ったらJUNOの子ですね。
あの映画はかなり好きなので記憶に残っていたのです。
今後さらなる活躍の予感があります。

ちょっとネタバレですが、
壮絶な人生を送った挙げ句で、ホント色んなものが終わったようなクライマックスですが、彼女はまだそこそこ若い30代で。
彼女が報われたのか?何もかも失ったのか?ハッピーエンドなのか?そうでないのか?
解釈しだいなのですが非常に爽やかなクライマックスです。
それは彼女自身がその歩みで学んだことを淡々と語っていて、それが妙に前向きで。
冒頭彼女はモーグルの大会で巻かれた細かい木の枝につまずいて事故に遭いますが、
(モーグルの大会で視界が悪いときには松の木クズをルートに巻くそうです)
無一文で裁判を闘うボロボロの娘に父親が
「お前はただ木の枝につまずいただけだ」
という言葉のあまりの深さに涙でした。

そしてチャーチルの名言
Success is the ability to go from failure to failure without losing your enthusiasm.
(成功とは、失敗から次の失敗までの間に情熱を失わないことだ)
を引用しているのですが、まさにその通りな映画でした。
それを言うがための映画のようでした。
それを聞いた時にもうかなり号泣でした。

久々にただの人間ドラマなのに魂を揺さぶられる映画でした。


そんなわけで9点。

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