人生で一枚だけのカード

人生には一度しか使えないカードが幾つかある。

生まれたり、死んだり。
肉体的に成長したり衰えたり。
そして数々の初体験。

色んな初体験はとても重要で、人生を司る大きな要素だと思っている。

歳と共に初体験は減る。
しかしそれは初体験の対象が無くなるのではなく、
人は成長とともに経験則から自分がやるべきこととやらないことの、
その実と殻を簡単に区別してしまうからだ。
世の中はたくさんの要素で溢れているのに。

自分はそれが特に強いタイプだった。
自分のくせの強いキャラを守るために。

そして本題だが、
自分は今年大いなる初体験をした。
海外を一人で3ヶ月弱バックパッカーした。
海外に憧れは抱いていたが、知識もないし勇気もなかった。
海外旅行に行く友人たちをちょっと見下したりして関心も示していなかった。

しかし人生への絶望がピークに達したことをきっかけに一番極端な事をしたいと思って。
バンジージャンプを飛ぶかのようにイタリア行きの飛行機に乗った。
最初の乗り換え地のチューリッヒでもう心折れて絶望したが。

迎えに来てもらい、何とか友人宅に辿り着いたが、もう頭はパニックだった。
何もかもが夢の世界のような全てが未知だった。
翌日一人で散歩したが、コレは本当に子宮から出てきた時みたいな全て全て全てが新着のものだった。
あの時の感情、感覚を説明出来る言葉を僕はまだ知らない。

そこから3ヶ月弱。
15カ国、60箇所くらいの街を放浪した。
海外で一番怖いのは移動である。
そんな怖いことを何も知らない海外童貞の自分が一人でした。
毎日が新しいことで埋め尽くされた語り尽くせない体験をして、
日本に帰ってきた。

最初は実感は無かったが、
半年経って自分を観ると大きく人間性は変わった。
40手前になりこんなに変われることはそう無いであろう。

人生でもやって良かったと思えたことのピークである。
3歳でピアノを始めた時に匹敵する。
自我が完全にある分今回の決断には価値があった。

何もかもがやけくそで沢山の絶望もあったが、
それを上回る感動と、大いなる成長があった。

もう一度やれと言われてももう出来ない。
もう一度海外に行ったら今の僕には多くのノウハウと根性があるので、
あの初めてイタリアに降り立った時の、あの感情は二度と体験は出来ない。

本当に本当に本当に本当に良かったと思うことは、
やっぱり落差が大きいことをやったこと。
怖いからと友人と一週間海外に行く、
パックツアーに参加する、
そんな事をしてこなくて良かったと心底思えた。

初めての海外は3ヶ月弱、独りぼっち、無知、英語も話せない、ノープラン。
それでも成長しながら毎日ノウハウを手に入れながら何とか生きて日本まで帰ってきた。

一番良かったことは
初海外を独りぼっちで行ったこと。