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デトロイト

2018年02月05日 | 映画
デトロイト
を観ました。


1967年7月、暴動発生から3日目の夜、若い黒人客たちで賑わうアルジェ・モーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた大勢の警官と州兵が殺到した。
そこで警官たちが、偶然モーテルに居合わせた若者へ暴力的な尋問を開始。
やがて、それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を招き寄せていくのだった…。


いつも高評価なキャスリン・ビグロー監督作品です。
毎回、所謂女性監督らしさで勝負しておらず、男性文化的なシリアスさで勝負しますね。
ホント重厚で疲れ果てる様な作品ばかりです。

ハートロッカーは非常にしんどい作品でしたが、テーマは違えど今作も重さはなかなかでした。
デトロイトの暴動というテーマも非常に彼女の作風に合っていたと思います。

黒人迫害が顕著だった1967年のデトロイトが舞台です。
こういう時代があったのは知ってますが、当時のデトロイトがこういう状況というのは知らなかったので勉強になりました。
アメリカ史上最大の暴動と言っていますがホントそんな感じだったのですね。
コレは局面は暴動ですが、街で銃撃戦があったり建物が破壊されたりと雰囲気は内戦と言っていいと思いました。

白人警察と黒人市民の摩擦を描いた物語ですが、黒人がほぼ武装せずに投石などで警察や軍隊と衝突してました。
黒人側が武装してたら本当に戦争だったろうな、と思いました。
またその混乱に乗じた強奪の横行な世界観。
それを取り締まる中で警察の行き過ぎがあり更に暴動は過激になっていく感じです。

映画としては上中下に分けれるような、大きく三段階で描かれていました。
序盤はストーリーもなくドキュメンタリーの様な描写でキャスリン・ビグロー作品らしい空気感でした。
本当に荒れ狂う街の状態を何の脈絡も無く描いているだけでした。
始まりは細やかなバーの一斉取り締まりでしたがそれが引き金となって徐々に暴動になっていってました。
それくらい人種問題が深刻な緊張状態だったのですね。
そしてその中で描かれた人物たちが徐々にとあるモーテルにフォーカスします。

中盤はそのモーテルで起きた深刻な事件です。
今で言う白人至上主義者なプッツンな警官がモーテルに居る人々に過剰な取り締まりを始め、
ついには次々と黒人を銃殺して行く取り返しのつかない展開になります。
ノンフィクションです。
調べると未だにこの事件を救命してる人々も居るようです。

後半はその事件を起こした警官を訴えた裁判。
事件に関わった人々が次々と登場して証言して争います。
当然我々観客はモーテルの出来事を観ているので嘘をつく人々にストレスは感じます。
そして明らかに白人有利な裁判に救いの無さを感じさせる作品です。

それなりに有名なキャストが起用されていますが、誰もスペシャルな扱いはされておらず、
実際に起きたことをシンプルに再現しようとしているタイプの映画でした。
非常に素晴らしい演出だったと思います。

もちろん黒人を迫害した白人たちへ厳しい目を向けさせる作品ですが、そこまで極端に導いている感じも無いです。
むしろ、黒人側にも問題はあると思います。
最近白人至上主義者の意見を少々学んだりしますが、そこまで単純に黒人を嫌っているわけではないので。
このデトロイトの社会でもちゃんと地位を得ている黒人も居たはずなのでやり方の問題もある気はしました。

主役の一人をスター・ウォーズで一躍トップセレブの仲間入り感のあるジョン・ボイエガが演じていました。
全然ヒーローでは無く、白人と黒人の間で何とか穏便に事を収めようとしてる感じで。
それでも力不足で悲しい感じでした。

今作の悪役、黒人を虐殺する刑事でウィル・ポールターが出ていました。
この人は僕が見る映画で非常によく見かける印象です。
若手の名バイプレーヤーという感じですが、今作ではほぼ主役級です。
ただめちゃくちゃ悪い人に描かれていました。

他の悪者警官をジャック・レイナー、ベン・オトゥールが演じていました。
素晴らしい演技をしてました。

州によって警察の振る舞いも違い、軍隊はまた別で。
同じ白人でも上記の警察たちから黒人を守る様な人々も居ました。
オースティン・エベールがそんな軍隊の人でした。

歌手を目指して夢に燃えていた青年をアルジー・スミスを演じていました。
元々歌手のようで、歌う演技も多々ありましたが、めちゃくちゃ歌が上手くて羨ましかったです。
あと一歩で夢が叶う状況で起きてしまった暴動に夢を阻まれ、しかもモーテルの事件に巻き込まれ死にかけてしまう悲しい人生でした。
今作で殺されなかったけど、わかり易く明確な被害者でした。

とにかくハリウッドには黒人差別をテーマにした作品が多いですが、
そしてそれらに名画が多いですが、今作もそうだと思います。

毎度ながらアメリカには恥ずべき歴史があり、だからこそいつまでもこの手の映画が作られるのでしょう。


そんなわけで8点。

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