半世界

半世界
を観ました。


とある地方都市。そのまたさらに郊外に暮らす高村紘とその妻、初乃、息子の明の家族は、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭することを生業としている。
中学からの旧友で、自衛隊員として海外派遣されていた沖山瑛介がある日、何の前ぶれもなく、町へ帰ってきた。
どうやら瑛介は妻子と別れて故郷に一人戻ってきた様子。
紘は、同じく同級生で中古車販売を自営でやっている岩井光彦にも声を掛け、十数年ぶりに３人で酒を酌み交わす。
翌日、廃墟同然だった瑛介の実家を掃除し、住める状態にする3人。海外での派遣活動で瑛介が何か心の傷を負ったのでは？それが妻子と別れ、故郷に戻ってきた原因になったのではないかと、感じる紘と光彦だが、直接聞くことも憚られ、どうすることもできない。
紘の息子、明は反抗期の真っ最中で、どうやら学校でイジメも受けている様子だが、紘はそれに頓着していない。「おまえ、明に関心もってないだろ。それが、あいつにもバレてんだよ」
鋭いことを光彦に言われハッとする紘。
数日後。「オレの仕事、手伝えよ」
過去から脱却できずにいた仕事のない瑛介を巻き込んで一念発起する紘。
炭材のウバメガシをチェーンソーで伐採し、枝打ちし、短く切断する。窯に火を入れ、炭を掻き出しては灰を掛け、それを何度も繰り返す。
出来た炭を段ボールに詰め営業し、新規の顧客開拓を目指す―。
「こんなこと、ひとりでやってきたのか」
これまで感じたことのない張り合いを感じ始めた紘。
そんな父を見る明の目にも、変化が現れかけ、それは何もかも順調に向かい始めているように見えていた･･･。
と紘の仕事ぶりを見て驚く瑛介。


阪本順治監督作品です。
阪本監督が撮るにはちょっと意外な作品って印象もありましたが、観てみたら要所要所はしっかり阪本監督テイストでした。

作品はコレと言って特徴的な起承転結があるわけでは無いですが実にクセのある田舎の日常を描いていました。
昔の仲良し三人組ってのをアピールするような不自然なやり取りは多めでした。
「昔良く◯◯したな」みたいな。
説明っぽさが多くちょっと過剰にも感じました。

それ以外は大方いい感じでした。
アウトローでガサツで、主人公は稲垣吾郎ですが物語のキーマンは長谷川博己で。
なんか独特なストーリー展開でした。

冒頭に意味深なシーンで食いつかせてそこから数ヶ月前、、、みたいな魅せ方でした。
この手の手法はもうめちゃくちゃ使われますね。
使われすぎてちょっとなんの効力も無い気がしますが、造り手が必要と思うなら良いでしょう。

主人公と思春期の息子との関係性。
息子が置かれている過酷な状況、自分の中学生時代と重なる部分も多くてなかなか辛かったです。
主人公を中心とした中学生時代の3人がメインの物語ですが、意外とこの息子のシーンが印象的でした。
みんななかなか素直にならず、人間関係がいい感じになりそうでも完全にそうはならない感じの連続でした。
そしてそれには解決がないってのがなんかいい感じでした。

主人公は備長炭を作って売る、斜陽産業な仕事をしていて、その工程を丁寧に描写してるのは日本映画らしくて非常に良かったです。
こういうニッチな仕事を丁寧に描くと一気に映画らしさは増すものです。

がさつな親友との絡みやり取り、馴れきったようなやり取りは非常にいい感じでした。
初期のクドカン作品を思わせるような妙な青春感がありました。
自分の中高生時代もこんなだったな、なんて妙にジーンと来てしまいました。

稲垣吾郎は最近はあまり見れなくなりましたが、それでも主演でジャニーズ退所して良かった気がしますね。
年々渋さが増して存在感も十分で、良い歳のとり方してる気がします。
ワイルド系な役もできるようになり、様になってました。
今後も需要はあるような期待感がありました。

長谷川博己がこの作品のこのポジションで出ているのは大きかったですね。
主演を食うほどの存在感と熱演と、そしてアクションでした。
意味深でこじらせすごくて厄介者でしたが長谷川博己ならではの演技力でいい仕上がりでした。

渋川清彦は非常に好きで評価してきましたが、少しずつ売れてきてる気がします。
そろそろなんかしらで主演して欲しいですね。

池脇千鶴って年々本格派な名女優になってきてる印象です。
いよいよガッツリ母親役でしたが非常に素晴らしいクオリティでした。

なんか不思議な青春映画って感じで、しかも自分の人生にも重なる部分もあって。
結構印象的で楽しめた映画でした。


そんなわけで6点。