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沈黙 -サイレンス-

2017年01月31日 | 映画
沈黙 -サイレンス-
を観ました。


17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教 (信仰を捨てる事)したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは 日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。
日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、その中で弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。
頑ななロドリゴに対し、長崎奉行の 井上筑後守は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。そして次々と犠牲になる人々―
守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは―


巨匠マーティン・スコセッシ監督が日本を舞台に作った大作です。
未読ですが、遠藤周作の沈黙が原作です。

無茶苦茶名画でしたねー。
今のところ今年一番なのは間違いないですねー。
コレは軽い気持ちで観たらいけないくらいに悩まされました。

終始重たい雰囲気の映像と、禁断に近いくらいのテーマです。
このテーマをこの品質で描いたことに先ずは賞賛しか無いです。

マーティン・スコセッシ作品と言えば僕の青春ですし、大好物です。
アウトロー的な、少々下品な表現、とかくセリフが下品な作品の印象が強いです。
英語の下品なスラングはマーティン・スコセッシ作品で学べると思えるほどに。

しかし今作はそういう要素は無く、ただただ上質な作品でした。
マーティン・スコセッシ作品って事を忘れてしまいそうなほどでした。
何年もかけて日本の文化を勉強、研究したと本人が言っていましたが、
それにふさわしい日本の描写だったと思います。

外人監督が描くチープな日本の描写的な要素はゼロです。
むしろ日本人以上に鬼気迫る当時の日本を描いていました。
映画に限らず、時にこうして外人の方が日本の文化を深く理解できる場面はたまにありますね。
コレもその手の作品だと思います。

日本でキリスト教を広めようとする宣教師たちに拷問や、残酷な仕打ちをして棄教させようとする大名達の戦いです。
一見すると残酷な事をしてキリスト教を弾圧する日本人たちが悪に見えますが、
そんな単純な話ではありません。
全然そんなシンプルなテーマではありません。
日本には既に仏教が広まっていてそこにキリスト教を広める必要は無い、
むしろ異なる思想が入り乱れる方が危険だというまっとうな目的があります。
コレは数百年後の現在でも全く同じことが言えますね。
現在、コレだけの宗教紛争があることを考えると、当時の日本政府の政策がそんなに間違ったことだったとは思えないのです。

確かに方法は残虐ですが、キリスト教信者たちの心が折れないのでこういう手段しか無くなる、
というコレまたまっとうな日本政府の主張でした。
「彼らを殺すのは我々ではなくお前(宣教師)だ!」
的なセリフもイチイチ悩まされました。

宣教師に最後の救いを感じる人々は宣教師を守るために自分たちが犠牲になったりします。
「彼らは神を守るために死ぬのではなく、お前を守るために死ぬのだ」
という様なセリフも悩まされました。

様々な描写はあれど、基本的にはキリスト教VS仏教のディベートです。
こんなディベートは永遠にできると思いますね。
自分は正直、無宗教を貫くために10代の頃より主に仏教やキリスト教を勉強してきました。
世界中の有名どころの仏閣や教会も見て回りました。
それでも答えを出せない様なテーマです。

ただ、異なる正義がぶつかり合うほど深刻なものは無いな、
と改めて思いました。
前日に観た恋妻家宮本の「正しいけど優しくない」のセリフが蘇りました。
正しいと正しいの衝突は辛いですね。

極限の極限でどちらかが妥協しなくてはなりません。
暴力も使っているので武力で負ける方は不利ですね。

宗教的迫害、たまたまですが、2017年現在の世界でも似たようなことが起きていますね。
とある国からの入国禁止する国や、移民を排除する方針を打ち出す国。
何故に皆が異なる宗教を創りだしてしまったのか?
と悩みました。

途中、キリスト教より仏教の方が優れている、いやキリスト教のが優れている。
なんてやり取りがありましたが、見るのも疲れるほどしんどいテーマでしたね。
自分にも積み上げてきた意見はありますが、絶対にこのテーマのディベートはしたくないですね。
とかく信者さんとはしたくないです。

主演のアンドリュー・ガーフィールドはどちらかと言うとアイドル俳優のイメージでしたが、
この一作で一気にその印象を覆しましたね。
なかなかハードな常に汚れている様な役でしたが、全然良かったですね。
流石のマーティン・スコセッシ監督ですね、その見抜く目は確かですね。

同じくアダム・ドライヴァーも自分の中ではオシャレ系俳優のイメージでした。
しかし今作ではなかなか汚れなキャラでした。
アンドリュー・ガーフィールド以上に分からず屋な感じで歯がゆかったです。

窪塚洋介が3番手くらいでかなり目立つ役でしたが素晴らしかったです。
元々替えが効かない演技派ですが、それはハリウッド作品でも全然違和感なく発揮されていました。
常に汚れていてすぐに裏切って全然筋を通せていないですが、コレまた単純に間違った人間と言えない複雑さを持っていました。

世間的話題にもなってましたがイッセー尾形の演技は素晴らしかったですね。
クセの強い独特な喋り方で感情をあまり表面に出さずに結構深刻な事を言うのは逆に怖かったです。
遅咲きな感じですが、今後のハリウッド進出は全然アリなのではないでしょうか。

逆に浅野忠信が結構感情を出すのでコレまた怖かったですね。
一番ディベートするようなキャラでしたが、クールでしかもドスが効いた喋り方で宣教師を諭してました。
イッセー尾形も浅野忠信も一見悪役ですが、言ってることは間違っているとは思えないのです。

塚本晋也がまた鬼気迫る迫真の演技でかなり魂を揺さぶられました。
見た目から役作りの熱量は凄かったです。

加瀬亮、小松菜奈、AKIRAなども出ていましたが短い出番でいい存在感でした。
しかし小松菜奈がもうハリウッドとは売れるペースが早いですね。

とにかく、この映画を肴に何時間でも話をしたくなるような名画でした。
ハリウッドの巨匠がここまで芯を食ったクオリティで日本を描いたのは初めてな気がします。
世界中の人に見てもらいたい気分になりました。


そんなわけで10点。

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