メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

第八話 コンビニは群像劇 その1

2006年12月12日 | LAWSON CALLING
---数年前僕はとあるコンビニエンスストアの深夜バイトをしていた。
住宅街にあるコンビニだからそれほど客は多くない。
毎日同じ客が同じものを買ってく、そんなコンビニだった。
深夜1時から朝9時までの間、店員は僕一人だけだった。
断っておくが僕は反社会的な思想を持っていた。---

街は群像劇の塊、コンビニはその交差点

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主な登場人物
・店員(俺)
・中年A
・細目の男
・タクシードライバー
・激デブの男
・小さいお婆さん
・手押し車のお爺さん
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《中年A》
毎朝散歩しながらウチのコンビニに立ち寄り、同じ新聞を買って行く。
どんな日も必ずやってきてはその新聞を買って行く。
(家で普通に新聞を取ればいいのに、経済的だし、と誰もが思うが、このタイプの客は非常に多い)
それが日課になっているため、そのおっさんの所持金は常に130円。
俺はそのおっさんの姿を店の外に捕らえると、店に入ってくるまえにピピッとレジを打ってしまっていた。
それくらい機械仕掛けのおっさんだった。
・・・元旦
元旦の朝もおっさんはやってきた。
いつものようにレジに130円を置き新聞を抜いて帰ろうとしたそのとき店員がおっさんを呼び止めた。
「すいません10円たりません。」
元旦の新聞にはいらん事に別冊がついていて365日で唯一10円だけ値上がりしてしまっていた。
全ての所持金を使い切っているおっさんは10円を取りに再び家に帰って行った。
「おっさん、その年はいい年でしたか?」



《細目の男》
人を見下したようなふてぶてしい顔と態度で、観てるだけでブチ切れしそうになる20代半ばの男。
レジでの態度もまるで喧嘩を売ってきてるような洒落にならん奴。
ある日カッコつけてブゥワー店内を闊歩している時チャックが全開だった。
そりゃもう半端なく全開だった。
どっか別の世界に通じる入り口であるかの様にね。
パンツも丸見えだし、こいつわざとやってんのかなー?って疑ってしまうほどの代物だった。
心の中でほくそ笑んでやった。
(俺の心)「家に着いてからさぞ狼狽したらいい。」

・・・・・・・細目男宅にて
(細目の男)「あっ!チャック全開だ!恥ずかし、全然気づかなかった」
そして恐るべき疑問
(細目の男)「いったいいつからチャック全開だったんだろう?」
(俺の心)「ずっと前からさ・・・。」



《タクシードライバー》
毎朝やってきて、決まってリポビタンDを1本買って店の外で一気飲みする。
そして自分に気合を入れる。
その姿を見ながら、
気持ちはわかるけど、ああはなりたくないと切に思う若き日の俺。



《激デブの男》
ウチのコンビニの近所にはとある大手企業さんの独身寮があったので、夜中はそこの人間達がよくやってきた。
フリーターで根無し草の俺はそこの人間達に密かに、嫉妬や憧れを抱いていたのかもしれない。
そこの寮に取り分け目立つ金髪でデブでメガネの男がいた。
グレート義太夫を不細工にした感じの男。
そいつを見ると食欲も失せるほどの醜い仕上がりだった。
きっと血圧も高いのだろう。
いつも落ち着きがなく「ブヒーブヒー」という呼吸音、ぞんざいで慌てた動き。

ある日の買い物
夜中1時頃
1.5リットルペットボトルのコーラ、大盛りカップラーメン、大盛りのお弁当。
夜中4時頃
1.5リットルペットボトルのコーラ、おでん、お弁当、お菓子。

そりゃそうなるわ。
きっと寝言も「いただきますむにゃむにゃ」「もう食べれないよむにゃむにゃ」なんだろう。
♪どうしてお腹が空くのかな~ (ブーブッブブッブブッブブッブブッブブー)
太っているから空くのかな~ (ブーブッブブッブブッブブッブブッブブー)
・・・♪
フリーターでもいいやとなんとなく思った若き日の俺。




《小さいお婆さん》
第一話に登場した小さなお婆さん。
毎早朝同じ時間帯に現れ不思議な呼吸音を立てながら、大抵パックの飲み物ひとつとパン、又はおにぎりひとつ、計2点を買っていくのが通例。
昼間は一体何処にいるのだろう?どんな家でどんな暮らしをしているのやら。
とてもミステリー、皆目見当もつかない。
ひょっとして俺は未知との遭遇をすでに果たしているのかもしれない・・・。



《手押し車のお爺さん》
いつも手押し車で足を引きずりながらやってくる。
病院に通院しているのだ。
その病院にいく前にウチのコンビニによっていく。
時々病院で働く人々にお土産を買っていく心優しき老人。
体が若干不自由な為、僕はいつも籠を持って世間話をしながら一緒に店内を回ってやった。
僕の好感度は上がったんじゃないか?

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