メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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「ごらん、世界は美しい」

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サバイバルファミリー

2017年02月16日 | 映画
サバイバルファミリー
を観ました。


東京に暮らす平凡な一家、鈴木家。さえないお父さん(小日向文世)、天然なお母さん(深津絵里)、無口な息子(泉澤祐希)、スマホがすべての娘(葵わかな)。一緒にいるのになんだかバラバラな、ありふれた家族・・・。
そんな鈴木家に、ある朝突然、緊急事態発生!テレビや冷蔵庫、スマホにパソコンといった電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池にいたるまで電気を必要とするすべてのものが完全にストップ!ただの停電かと思っていたけれど、どうもそうじゃない。次の日も、その次の日も、1週間たっても電気は戻らない・・・。情報も断絶された中、突然おとずれた超不自由生活。
そんな中、父が一世一代の大決断を下す。
「東京から脱出する!!」
家族を待ち受けていたのは、減っていく食料、1本2,500円まで高騰する水、慣れない野宿。高速道路は車ではなく徒歩で移動する人でいっぱい、トンネルは真っ暗すぎて、一歩も進めない。しまいには食糧確保のために、必死で野ブタを追いかけることに・・・!?
一家は時にぶつかり合いながらも、必死で前へと進むが、さらなる困難が次々と襲いかかる!!
果たして、サバイバル能力ゼロの平凡一家は電気がなくなった世界で生き延びることができるのか!?
今、鈴木家のサバイバルライフの幕があがる!!



大好物の矢口史靖監督作品です。
毎度かなりのハイスコアな評価なのでひょっとしたら僕の評価の数値的には相当上位に居る監督だと思います。

かなりの期待を込めて観に行きましたが、やはり素晴らしかったです。

ある日突然電気がなくなった世界という、かなり大胆な設定でしたが、その描写の丁寧さが凄いです。
この作品の評価としてまずそこが挙げられるでしょう。
設定は飛んでいますが、描写は非常にリアルです。
日本人ならば誰しもが思い出す東日本大震災後の雰囲気ですが、
この映画では特別な事件も無く突然電気が無くなるので、最初は人々に危機感がありません。
夜には戻るだろう、明日には復旧するだろう、とのんきです。
ただ生活の不便さの描写が非常にリアルでとにかく感心しました。

そのフリとして冒頭にスマホや電子レンジに依存している暮らしの描写がいい感じです。
一見極端にも見えますが、実際こんなもんだよなぁと再認識しました。

かなり痛烈なメッセージ性を持った作品だと思いますが、
確かに電気に依存しすぎた我々の暮らしから電気が無くなったら何も出来なくなりますね。
便利のぬるま湯に頭まで浸かっていますからね。
コメディタッチで描いていますが、現代社会に警鐘を鳴らす非常に壮大な作品でもあります。

最初の呑気な状態から徐々に深刻になっていきますが、そのステップの上がり方、
見事に少しずつ困難が増していく感じが見事でした。
そこに付随するであろう食糧問題や水問題、お金が徐々に意味を無くしていき、清潔感も無くなって行きます。
廃墟になったスーパーでなくなっているもの、みんな考えることは一緒で
「コレはあるだろう!」とひらめくようなモノも既に無かったり。
例えば自転車、自転車のパンクを直すための道具も手に入りません。
その描写の繊細さが実に見事だなと思いました。

久々に人と接する時に娘が体臭を気にする感じも良かったです。

本当に困難に陥っていくサバイバル生活の中で父はどんどん威厳を無くしていきます、
そして兄が意外と頼れるところを見せていき家族内の序列が微妙になっていくような感じがあります。
ただそれを極端に描いていない辺りに家族描写のリアルさもあります。
こんな状況になっても威張って他人に対して見栄を張る愚かさを見せるお父さん。
みんなが無駄だと思っているヅラをいつまでも気にしている辺りに、
監督さんが観客に分かり易く伝えようという優しさを感じました。
あれ?いつの間にかお父さんが結構無口なシーンが続いてるな・・・とか思いました。

いよいよお父さんへの不満が爆発するシーンのお母さんのフォローの仕方にもう腰砕けの面白さがありました。
フォローしてるけどそれを言っちゃあオシマイ、なコメディで場内はなかなかの笑いでした。

しかしその後お父さんが変わって徐々にサバイバル能力を身に着けていく姿、
ネガティブなことを言わないで迷わず行動する姿に個人的に感動を覚えてしまいました。

いざサバイバル生活になった時に人間はどうなるか?
平凡な生活の中での序列は維持できるのか?など深いメッセージ性も感じました。

一体どういう展開になっていくのだろうか?と単純な気持ちで観始めた作品でしたが、
本当にとことんサバイバルです。
安直なオチを想像しながら観ていた事を反省するくらいに。
矢口作品がそんなに単純なわけ無いですからね。

僕が常々言ってきた矢口作品の感心した特徴というか、発明にも近いですが。
ウォーターボーイズの時から言ってますが。
すごくエピローグが欲しい様な話を描く割にそれを描かずズバッと終わる感じがハイセンスなんですよね。
今作もそんな感じでした。

主役の小日向文世が見事に現代的な、この世代のお父さん的な感じで見事でした。
特別じゃなく、大した能力も無いけど威張ることだけはいっちょまえな感じで。
かつらを気にする感じや極度にデリカシーない感じは良かったですね。

色んな役をやる深津絵里は今作では見事なマイペースお母さんを演じていました。
子供の年齢から見ると少々若い気がしますが、全然気にならないくらい説得力十分なお母さんでした。
あまり人目を気にせずマイペースに行動できるので対人相手ではそれなりに活躍します。

最近チョイチョイ見かける泉澤祐希は結構好きな俳優です。
思春期では無いですが、家族と距離を置きたがる大学生の雰囲気が非常にリアルでした。
そして現代の大学生は板書しないでスマホで黒板を撮るんですね、そりゃそうですよね。
我々ビジネスマンのミーティングもホワイトボードのキャプチャしますからね。

娘の葵わかながまた見事に現代っ子な女子高生で。
スマホ無きゃ生きれない感じで、異常事態のサバイバル生活でもまともな生活のときと同じようなわがまま言うのがなんか良かったですね。
主にこの子とお父さんが衝突しますが、その感じがとっても良かったです。

いやはや、またしても名画な矢口監督作品でした。
想像以上に壮大なスケールで描いていて驚きました。
一体どうやって撮影したのでしょうか?

その想像力とそれを繊細に具現化出来る能力は手塚治虫みたいです。

後半はただ必死にサバイバルする家族描写と言えばそうなんですが、
かなり感動しました。


そんなわけで8点。

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