メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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ジョーカー

2019年10月05日 | 映画
ジョーカー
を観ました。



「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。
都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている。
笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがくアーサーはなぜ、狂気あふれる〈悪のカリスマ〉ジョーカーに変貌したのか?
切なくも衝撃の真実が明かされる。


トッド・フィリップス監督です。
同監督のハングオーバーシリーズは非常に高評価してます。
他の作品と比較しにくい実に独特なクセの強い映画を作りますね。

そんなトッド・フィリップス監督が今やすっかりカルト的コンテンツとなったジョーカーの作品を撮るというのはなかなかの企画ですね。
アメリカでちょっとニュースになっているのもあり気になっていました。
行きつけの映画館の席の埋まり方を見て普段ならば空くのを待ってから行くのですが期待値が高かったので大勢と共有したい気持ちもあり珍しく混雑の映画館で観てみました。

古い映画みたいなノスタルジックなロゴやらフォントやら作風で。
なんか不思議とおしゃれなのですが、それが内容とミスマッチ過ぎてそれが逆に主人公の鬱屈としたうまく行かない暮らしのメタファーのようにも思いました。

それにしてもジョーカーのブランド力はなかなかのものになりましたね。
ヒーローのライバルの悪役が人気になるなんて、日本ならば北斗の拳のラオウが主役になるようなものでしょうか。
間違いなくダークナイトのヒース・レジャーがそのブランド力を大きく上げたと思いますが。
ジャック・ニコルソンなどそうそうな過去のジョーカー俳優がいますが。
そういうハードルの中でガッツリジョーカーにフォーカスした作品でジョーカーを演じるプレッシャーはなかなかでしょう。
日本でいうと織田信長とか豊臣秀吉を演じるようなものかもしれません。

自分としてはやはりダークナイトでのヒース・レジャーのジョーカーが中心なので、そのエピソードゼロ的な作品で近年では一番老けたジョーカーが現れたのは正直ちょっと違和感でした。
もちろんホアキン・フェニックスは素晴らしい役者でこの作品単体で見れば全然温厚でちょっとおバカな男が徐々に悪のカリスマになっていく様は素晴らしいのですが。
この先にダークナイトのジョーカーがあると考えるとやはり若い青年って呼べる世代の人でこの作品をやってもらいたかった気持ちはありますね。
羊たちの沈黙のアンソニー・ホプキンスとハンニバル・ライジングのギャスパー・ウリエルのキャスティングが逆になっているような。
若い世代にこの怪演を任せられる人が見当たらなかったのかもですが。

ダークナイトのジョーカーのキャラは秀逸でそれが自分の中では柱ですが。
あのジョーカーはかなりクレバーで恐ろしいキャラだったのに今作のジョーカーは全然クレバーじゃないんですよね。
それどころか頭脳はちょっと低い感じの設定でした。

そういうシリーズの他作品を忘れてアーサー個人を見る作品としてはなかなか秀逸です。
非常に陰鬱な作風で。
いい人そうですがちょっと変態的な雰囲気もあって絶妙にやばい時限爆弾みたいなメンタルを抱えた主人公。
何もかもが上手く行かない底辺のような暮らしを極端な描写でなく淡々と描いていたのは良かったですね。
説明も少なくなかなか作家性の強い作風でした。

主人公の心理がわかるようで実は全然わからない感じ、こいつ何するつもりだ?というドキドキ感はなかなかです。
そして唐突にびっくりすることしてきます。
この辺の唐突さ、わかりやすいフリもなくショッキングなシーンになったりはトッド・フィリップス監督らしい気がしました。

暗さと狂気、現実と虚構の曖昧さ、ドン底生活とうまく行かない仕事。
飽和してしまったあとにワンテンポ遅く訪れるチャンス。
作品の起承転結としてはなかなか見事だと思いました。

ざっくり言ってしまうとタクシードライバーなんですよね、僕世代だと。
二十歳頃の所謂世の中ととても距離を感じて悶々の極地だった頃、タクシードライバーという映画にめちゃくちゃ救われバイブルでしたが。
現代版のタクシードライバーをジョーカーというキャラクターを使ってやったという切り口のほうが良いかも知れません。
ロバート・デ・ニーロも出てますし。

公開前の世の中のニュースがちょっと無駄にハードルを上げてしまった気はしますが。
作家性映画とエンターテイメント映画のちょうど真ん中あたりというか。
めちゃくちゃメジャーなバットマン、悪役のジョーカーを結構ミニシアター系な味付けにしてみました、って感じでしょうか。
残虐さや狂気の映画ならばもっと全然すごい映画があるのでR15+にするほどでも無いと思いましたが。
娯楽映画を期待して観に行くとちょっと陰々滅々として退屈に感じてしまうかもですが。

主演のアーサーはホアキン・フェニックスです。
今作はもうこの人の独り演技映画と言ってもいいくらいのこの人の演技が映画そのものって感じでした。
体型やらあるき方やら笑い方やら、なかなかの役作りでした。
少しずつジョーカーの要素が加わっていく終盤は独特な高揚感妙があっておしゃれさすら感じました。
個人的にはそれなりの高評価ですが世間的には結構評価されそうな気がしました。

名優ロバート・デ・ニーロが人気コメディ番組の司会者兼プロヂューサー的な役でした。
落ち着いた大物な人物でロバート・デ・ニーロ級の役者ならではの説得力で非常に素晴らしかったです。

アーサーが想いを寄せる女性をザジー・ビーツが演じていました。
なかなか美人だしこの作品に非常にマッチしていました。

作品は思ったより平凡でしたが世界観、キャラ設定などにミスがない印象の作品でクオリティは高かったです。
ノスタルジックでレトロな演出も好きでした。


そんなわけで8点。

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