はじめぼくはひとりだった
線路ばたにもたれ
大きな月を見ていた
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った
はじめぼくはひとりだった
親父とお袋と三人で
長い船の旅をした
真っ黒い煙が後から後から
空に届いては消えていった
海には人間が誰も居なかった
はじめぼくはひとりだった
春には一日中
外にいた
田んぼの中で見つけた
カエルの卵が
僕に死ぬことの怖さを教えてくれた
大地は卵のように
柔らかいもので出来ていた
はじめぼくはひとりだった
それは親父もお袋も
知らない僕だった
電車の窓から外を見ながら
駅の名前を覚えていった
その夜僕は炭鉱町で真っ黒いお風呂に入れられた
月はいくつもいくつも登り
それを数えては
いくつもいくつもため息ばかりついていた
生まれて初めて覚えたことは
たった一人で居ることの幸福感
その頃親父もお袋もとっくに諦めていた
一度だって寂しいと思ったことなんてなかった
生きていることは愛なんかより
ずっと素敵なことだった
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った
ある日僕は素敵な
ある日僕は素敵な言葉を見つけた
そして初めて
寂しさを知った
from友部正人
線路ばたにもたれ
大きな月を見ていた
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った
はじめぼくはひとりだった
親父とお袋と三人で
長い船の旅をした
真っ黒い煙が後から後から
空に届いては消えていった
海には人間が誰も居なかった
はじめぼくはひとりだった
春には一日中
外にいた
田んぼの中で見つけた
カエルの卵が
僕に死ぬことの怖さを教えてくれた
大地は卵のように
柔らかいもので出来ていた
はじめぼくはひとりだった
それは親父もお袋も
知らない僕だった
電車の窓から外を見ながら
駅の名前を覚えていった
その夜僕は炭鉱町で真っ黒いお風呂に入れられた
月はいくつもいくつも登り
それを数えては
いくつもいくつもため息ばかりついていた
生まれて初めて覚えたことは
たった一人で居ることの幸福感
その頃親父もお袋もとっくに諦めていた
一度だって寂しいと思ったことなんてなかった
生きていることは愛なんかより
ずっと素敵なことだった
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った
ある日僕は素敵な
ある日僕は素敵な言葉を見つけた
そして初めて
寂しさを知った
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