メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

はじめぼくはひとりだった

2011年12月31日 | 音楽
はじめぼくはひとりだった
線路ばたにもたれ
大きな月を見ていた
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った

はじめぼくはひとりだった
親父とお袋と三人で
長い船の旅をした
真っ黒い煙が後から後から
空に届いては消えていった
海には人間が誰も居なかった

はじめぼくはひとりだった
春には一日中
外にいた
田んぼの中で見つけた
カエルの卵が
僕に死ぬことの怖さを教えてくれた

大地は卵のように
柔らかいもので出来ていた

はじめぼくはひとりだった
それは親父もお袋も
知らない僕だった
電車の窓から外を見ながら
駅の名前を覚えていった
その夜僕は炭鉱町で真っ黒いお風呂に入れられた

月はいくつもいくつも登り
それを数えては
いくつもいくつもため息ばかりついていた
生まれて初めて覚えたことは
たった一人で居ることの幸福感
その頃親父もお袋もとっくに諦めていた

一度だって寂しいと思ったことなんてなかった
生きていることは愛なんかより
ずっと素敵なことだった
話しけるのも僕ならば
それに答えるのも僕だった
目の前を貨物列車が通りすぎて入った


ある日僕は素敵な
ある日僕は素敵な言葉を見つけた
そして初めて
寂しさを知った


from友部正人


はじめぼくはひとりだった
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