昨夜、腰痛の為あまり歩けない僕は近所の中華料理チェーン店へと夕食を取りに行った。
人気チェーン店だけあって繁盛していた。
ひとつだけあった空席に座り注文をして料理を待っていた。
暫く時間は経ち幾つかの客の入れ替えがあり、僕の隣の空席を挟んだ席にキビキビとしたオッサンが座った。
そのオッサンが放つオーラに僕は本能的に嫌な胸騒ぎがした。
歳の頃にして70を少し越えたくらい、浅くかぶったキャップのしたは8割くらいが白髪に染まった頭髪。
年の割にすらっとした体、ガサツでキビキビとした動き。
おそらく普段から継続的に何か運動をしているのだろう。
この日も半袖短パンという出立ち、散歩のついでに飯を食いに来たといったところであろう。
席に着くや否や店員を呼び止める。
店内には二人の給仕さんが居て一人は日本人、もう一人は中国人だった。
オッサンは中国人の方を無作為に呼び止めた。
やはり明らかにデリカシーの無いタイプの人間だ。
僕の胸騒ぎは加速する。
メニューの表紙には幾つかの写真が載っていた。
その写真を指差しこれとこれ頂戴と、野菜炒め的な料理とダブルの餃子を指定した。
通常餃子は5個だが倍の10個の餃子が入ったダブル餃子的なモノもあるのである。
そしてそこからオッサンは信じられないことを言い出す。
餃子の写真を再び指差し
「ただねこれ一個だけ頂戴、こんなに要らないから一個だけ頂戴」
おそらくかなり片言でしか日本語が出来ない感じの中国人の給仕さんは理解できず露骨に困った表情を浮かべる。
そんな給仕さんの姿を見てオッサンは繰り返す。
「だからね、わかる?これこんなにいらないの、ほら1、2、3、・・・10個あるでしょ、半分でいいの、この列だけ頂戴」
と言う。
その写真では5個の餃子に立てかける様にさらに5個の餃子が皿に乗せられている。
その一列だけを指し
「ここだけ頂戴」と言う。
給仕さんは未だに困った顔を崩さない。
オッサンは右手で手刀を作り、空手の瓦割りのごたるその餃子の写真を割るような仕草をして「ここだけ!」と言っている。
そして切り取った想定の半分を捨てるかのように手を振る。
そんなやり取りを間近で見せられた僕は心の中でつぶやく
『・・・オッサン・・・マジか!』と
あんたが今左手に持っているそれ、それはメニューと言うのだ。
ほらプラスティックの性質で自然と開きかけているではないか。
それを開いたところにはお前の望むものが大きく写真で出ているよ。
または裏面は全面的に餃子のセットメニューのページですよ。
それどころか少し店内に目を向けてごらんなさい、至る所に餃子(5個)190円と書いているではないか。
この状況で何故そのダブル餃子を指し、これを半分で持って来いと言うのだ。
今日が生まれて始めての外食か?それならば許すけど、もしそうでなければ僕は許さないよ。
メニューを見てメニューの中から注文しろよ!
その横柄な態度も気に入らん!
全く無関係である第三者の僕はオッサンの望みも分かるし、給仕さんの理解不能の気持ちもわかる。
全く無関係である第三者の僕が理解出来ているのに当事者達はまるで気持ちが通じ合って居ない。
あまりに歯がゆくストレスだったので余程口を挟もうかと葛藤した。
オッサンはもうわかっただろ?といった感じで給仕さんを解放する。
僕の胸騒ぎは加速する。
僕の元には料理が運ばれてきていて餃子もあった。
なんだったら僕のこの餃子を指し、これをくれと言ってくれても良かったのだ。
そして数分後オッサンの元に注文の品が置かれる。
僕はゆっくりとその様子に顔を向ける。
・・・ダブル餃子だ・・・。
当然オッサンは店員に文句を言い出す。
「だからこんなに要らないんだって!」
というフレーズに食い気味で僕は
『だから全部お前が悪いんじゃー!!!』
と心の中で絶叫した。
『お前はさっきからずーーーーーっと何を言うてんねん!』
と叫んだ。
料理を運んできたのは日本人の方の給仕さん、当然ゼロからのスタートなので呆気に取られている。
オッサンのクレームは続く。
「これを半分にしてくれって言ったんだよ!」
「え?半分に・・・ですか?わかりました」と言って給仕さんは餃子を5個づつ2つの皿にしてオッサンの前においた。
オッサンはさらに倍キレる。
「なんでだよ!二つも要らないんだって!一個でいいんだって!」
「じゃキャンセルですか?」と給仕さん
「最初からそうやって注文してんだよ!」とオッサン
僕はその日本人の給仕さんが餃子を2つの皿に分けて結局10個オッサンの前においたのはかなり計算された素晴らしい嫌がらせだと思って心の中で賞賛した。
結局一皿は下げられ伝票は打ち直されオッサンの望みは叶った。
しかし怒りの収まらないオッサンは給仕さんが去ったあともブツブツと文句を続ける。
「全く!聞こえてねーんだよ!あいつら」と
いや違うぜオッサン、あんたが聞こえていないんだ。
聞こえていないし、見えていない。
この世の全てが聞こえていないし、見えていない。
その横柄な態度には僕以外の仕事帰りのサラリーマン達も冷ややかな視線を送っていた。
僕は食べている最中、よっぽどオッサンに説教しようと、喉まで言葉が来ていた。
しかし何事も馬鹿には関わらないに限るとやめておいた。
僕とオッサンはほぼ同じくらいに食事を終えた。
オッサンはぞんざいに爪楊枝と取り出ししーしーとやっていた。
僕はお会計をしようと腰痛を気遣いゆっくりと立ち上がり伝票を手に取りカバンを背負って帰りの準備をした。
そんな僕の姿を察して給仕さんはレジの中に入って僕を待ち構えた。
すると急に機敏に動き出したオッサンは伝票を取り頭の上で振り、おーう今そこに行くよ、みたいな態度を取る。
完全に僕の姿など見えてないオッサンは完全に横入り状態で僕とレジの間に横入り的に入り込む。
そんなオッサンの姿を僕はこめかみに血管を浮かべて睨んだ。
そんな僕の姿を見てオッサンを挟んで向かい合う給仕さんは申し訳なさそうな表情を作る。
オッサンはまごまごと財布をガチャガチャやっている。
そんなオッサンの後ろから僕は心の中でつぶやく。
・・・オッサン・・・背中がガラ空きだぜ・・・
と。
この手のオッサンは大抵、生意気にも頑固で、大した人生も送ってないくせに自分の歩みこそ正解だと若い人に自分の人生観を押し付けるタイプだ。
オッサン、あんたはこの先の人生、常にサンドバッグの隣に居てくれ。
病人が点滴と共に移動するかのごたる、サンドバッグと移動していてくれ。
そして他人が何故自分の隣にあるそのサウンドバッグを殴るのかを考えてみてくれ。
きっとそれはあんたに取って素晴らしい勉強になるはずさ。
人気チェーン店だけあって繁盛していた。
ひとつだけあった空席に座り注文をして料理を待っていた。
暫く時間は経ち幾つかの客の入れ替えがあり、僕の隣の空席を挟んだ席にキビキビとしたオッサンが座った。
そのオッサンが放つオーラに僕は本能的に嫌な胸騒ぎがした。
歳の頃にして70を少し越えたくらい、浅くかぶったキャップのしたは8割くらいが白髪に染まった頭髪。
年の割にすらっとした体、ガサツでキビキビとした動き。
おそらく普段から継続的に何か運動をしているのだろう。
この日も半袖短パンという出立ち、散歩のついでに飯を食いに来たといったところであろう。
席に着くや否や店員を呼び止める。
店内には二人の給仕さんが居て一人は日本人、もう一人は中国人だった。
オッサンは中国人の方を無作為に呼び止めた。
やはり明らかにデリカシーの無いタイプの人間だ。
僕の胸騒ぎは加速する。
メニューの表紙には幾つかの写真が載っていた。
その写真を指差しこれとこれ頂戴と、野菜炒め的な料理とダブルの餃子を指定した。
通常餃子は5個だが倍の10個の餃子が入ったダブル餃子的なモノもあるのである。
そしてそこからオッサンは信じられないことを言い出す。
餃子の写真を再び指差し
「ただねこれ一個だけ頂戴、こんなに要らないから一個だけ頂戴」
おそらくかなり片言でしか日本語が出来ない感じの中国人の給仕さんは理解できず露骨に困った表情を浮かべる。
そんな給仕さんの姿を見てオッサンは繰り返す。
「だからね、わかる?これこんなにいらないの、ほら1、2、3、・・・10個あるでしょ、半分でいいの、この列だけ頂戴」
と言う。
その写真では5個の餃子に立てかける様にさらに5個の餃子が皿に乗せられている。
その一列だけを指し
「ここだけ頂戴」と言う。
給仕さんは未だに困った顔を崩さない。
オッサンは右手で手刀を作り、空手の瓦割りのごたるその餃子の写真を割るような仕草をして「ここだけ!」と言っている。
そして切り取った想定の半分を捨てるかのように手を振る。
そんなやり取りを間近で見せられた僕は心の中でつぶやく
『・・・オッサン・・・マジか!』と
あんたが今左手に持っているそれ、それはメニューと言うのだ。
ほらプラスティックの性質で自然と開きかけているではないか。
それを開いたところにはお前の望むものが大きく写真で出ているよ。
または裏面は全面的に餃子のセットメニューのページですよ。
それどころか少し店内に目を向けてごらんなさい、至る所に餃子(5個)190円と書いているではないか。
この状況で何故そのダブル餃子を指し、これを半分で持って来いと言うのだ。
今日が生まれて始めての外食か?それならば許すけど、もしそうでなければ僕は許さないよ。
メニューを見てメニューの中から注文しろよ!
その横柄な態度も気に入らん!
全く無関係である第三者の僕はオッサンの望みも分かるし、給仕さんの理解不能の気持ちもわかる。
全く無関係である第三者の僕が理解出来ているのに当事者達はまるで気持ちが通じ合って居ない。
あまりに歯がゆくストレスだったので余程口を挟もうかと葛藤した。
オッサンはもうわかっただろ?といった感じで給仕さんを解放する。
僕の胸騒ぎは加速する。
僕の元には料理が運ばれてきていて餃子もあった。
なんだったら僕のこの餃子を指し、これをくれと言ってくれても良かったのだ。
そして数分後オッサンの元に注文の品が置かれる。
僕はゆっくりとその様子に顔を向ける。
・・・ダブル餃子だ・・・。
当然オッサンは店員に文句を言い出す。
「だからこんなに要らないんだって!」
というフレーズに食い気味で僕は
『だから全部お前が悪いんじゃー!!!』
と心の中で絶叫した。
『お前はさっきからずーーーーーっと何を言うてんねん!』
と叫んだ。
料理を運んできたのは日本人の方の給仕さん、当然ゼロからのスタートなので呆気に取られている。
オッサンのクレームは続く。
「これを半分にしてくれって言ったんだよ!」
「え?半分に・・・ですか?わかりました」と言って給仕さんは餃子を5個づつ2つの皿にしてオッサンの前においた。
オッサンはさらに倍キレる。
「なんでだよ!二つも要らないんだって!一個でいいんだって!」
「じゃキャンセルですか?」と給仕さん
「最初からそうやって注文してんだよ!」とオッサン
僕はその日本人の給仕さんが餃子を2つの皿に分けて結局10個オッサンの前においたのはかなり計算された素晴らしい嫌がらせだと思って心の中で賞賛した。
結局一皿は下げられ伝票は打ち直されオッサンの望みは叶った。
しかし怒りの収まらないオッサンは給仕さんが去ったあともブツブツと文句を続ける。
「全く!聞こえてねーんだよ!あいつら」と
いや違うぜオッサン、あんたが聞こえていないんだ。
聞こえていないし、見えていない。
この世の全てが聞こえていないし、見えていない。
その横柄な態度には僕以外の仕事帰りのサラリーマン達も冷ややかな視線を送っていた。
僕は食べている最中、よっぽどオッサンに説教しようと、喉まで言葉が来ていた。
しかし何事も馬鹿には関わらないに限るとやめておいた。
僕とオッサンはほぼ同じくらいに食事を終えた。
オッサンはぞんざいに爪楊枝と取り出ししーしーとやっていた。
僕はお会計をしようと腰痛を気遣いゆっくりと立ち上がり伝票を手に取りカバンを背負って帰りの準備をした。
そんな僕の姿を察して給仕さんはレジの中に入って僕を待ち構えた。
すると急に機敏に動き出したオッサンは伝票を取り頭の上で振り、おーう今そこに行くよ、みたいな態度を取る。
完全に僕の姿など見えてないオッサンは完全に横入り状態で僕とレジの間に横入り的に入り込む。
そんなオッサンの姿を僕はこめかみに血管を浮かべて睨んだ。
そんな僕の姿を見てオッサンを挟んで向かい合う給仕さんは申し訳なさそうな表情を作る。
オッサンはまごまごと財布をガチャガチャやっている。
そんなオッサンの後ろから僕は心の中でつぶやく。
・・・オッサン・・・背中がガラ空きだぜ・・・
と。
この手のオッサンは大抵、生意気にも頑固で、大した人生も送ってないくせに自分の歩みこそ正解だと若い人に自分の人生観を押し付けるタイプだ。
オッサン、あんたはこの先の人生、常にサンドバッグの隣に居てくれ。
病人が点滴と共に移動するかのごたる、サンドバッグと移動していてくれ。
そして他人が何故自分の隣にあるそのサウンドバッグを殴るのかを考えてみてくれ。
きっとそれはあんたに取って素晴らしい勉強になるはずさ。