アニメ「ほしのこえ」の作者、新海誠氏の作品。
小学校の同級生で、転校で離れ離れになった貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を片思いする少女の視点から描いた「コスモナウト」、そして大人になった彼らの気持は・・・?表題作「秒速5センチメートル」。3本の連作アニメーション作品。
「秒速5センチメートル」と言うのは、桜の花びらが散る速度なのだそうだ。
「桜花抄」 では、再会を約束した日に大雪に見舞われ、電車は遅れに遅れ、約束の時間に大幅に遅れて貴樹がやっとたどり着いた駅の待合室で、明里を見つけたときの貴樹の表情がいい。
「ほしのこえ」の背景画もそうだったが、主人公達の気持が、挿入された背景画に描かれる風景や小道具のアングルや描き方で、「台詞」で聞くよりも更に切なく胸が締め付けられるように伝わってくる。
桜の花びらが舞い落ちる水溜り、新宿駅の雑踏の様子、切れそうで切れない蛍光灯の点滅、車窓に張り付く結露の一粒一粒にいたるまで、ただの場所や状況説明ではなく、それぞれにちゃんと役どころがあるのだ。
オールロケで描かれたという背景は、リアルに描かれながらもとても幻想的であり、1カット1カットの絵に存在感がある。
特に、「コスモナウト」に描かれる種子島での宇宙ロケット打ち上げの瞬間は、胸が高鳴りながらもなぜかすごく切なくなる。貴樹の夢と現実の間で揺れ動く少年の気持が、ロケットの軌跡のあとの一筋の煙に分断された夕焼け空に反映されているからだろうか・・。
最終章の「秒速5センチメートル」は、大人になるってこういうこと・・・?二人はこうして「大人」になっていくの?その絶対的な「時間」と「距離」は、それでも、今はそうでも、いつかは再びリンクすることはあるのでは?と淡い期待を抱かせる。
BGMに流れる山崎まさよしの「One more time, One more chance」がその映像とともに胸を締め付ける。
初恋の切なさと儚さが切々と伝わってくる。
自分の初恋とリンクする部分もあり、見終わった後もしばらくは余韻に浸ってしまった。
春になったら、桜の花びらが散るのを見るたび、BGM には「One more time, One more chance」が脳裏に蘇り、切なくなってしまうかもしれない。
【秒速5センチメートル】http://5cm.yahoo.co.jp/story/index.html
【One more time, One more chance】http://www.youtube.com/watch?v=T-yemSc3VdI