(写真は上級グレードのタイタニウム)
【クーガ・トレンドのプロフィール】公式ページはこちら
全長×全幅×全高 [mm] 4,540×1,840×1,705
ホイールベース [mm] 2,690
最低地上高 [mm] 200
車両重量 [kg] 1,690
燃料消費率[km/l] 9.5
総排気量 [cc] 1595.0(直列4気筒ターボ:直噴です)
最高出力 [kW (ps)/rpm] 134[182]/5,700
最大トルク [N・m (kg-m)/rpm] 240[24.5]/1,600-5,000
燃料 無鉛プレミアムガソリン
タンク容量 [l] 60
トランスミッション 6段AT
駆動方式 4輪駆動
ステアリング・ギアタイプ 電動パワーアシスト付ラック&ピニオン式
サスペンション・前 マクファーソンストラット
サスペンション・後 マルチサスペンションアーム式
主ブレーキ・前 ベンチレーテッドディスク
主ブレーキ・後 ディスク
タイヤサイズ 235/55/R17(前後とも)
価格 340万円
まず最初に申し上げておきますが、クルマで見栄を張りたい人、いいクルマ乗ってるねぇといわれたい人、下取り価格を気にする人にはクーガをお勧めしません。クーガのみならず、フォード、欧州フォードのすべてが上の条件を満たしませんので。しかし、なぜ昨年の世界販売台数がゴルフではなくフォーカスが多かったか。そこをよーく考える必要があります。
さて、ここ数年人気が続いている中型SUV。日本車、輸入車のいずれも多くの車種を出してきています。国内外を問わず雪があまり降らない地域でも売れているのですが(前輪駆動suvが売れている)、特に私が住んでいる北海道ですと、最低地上高の高い四駆SUVは何かと重宝されます。そんな私もティグアンを購入してからは、その便利さをかなり享受しております。なので、今後車高の低い後輪駆動車を買うのは結構勇気がいる決断となるでしょう。
冬の北海道で4WDのSUVがいつ必要かを考えてみると、
1 市街地の幹線道路~移動時間は短い。除雪が行き届いているので埋まらない。凍結しているがスピードはさほど出ない。
2 高速道路~移動時間は長い。融雪剤をガッツリ散布していて凍結路面は少ない。カーブも緩やか。
3 郊外の一般道~移動時間は長い。融雪剤はさほどまかない上に速度が出やすい。カーブはキツイ。
4 裏道~ドッサリ積もった雪に埋まることが多々ある。除雪の頻度は少ない。
、、、ということで、3と4のためにティグアンを買ったとも言えるでしょう。あとは季節を問わず、視点が高くなることによる安心感もあります。
そんなわけで、いつか乗ってみたかったSUVに乗り始めて間もなく丸2年が経とうとしています。その間、さまざまな車が新発売されましたが、ほぼ漏れなく見に行ってます。もちろんスポーツカーも良いんですけど、今のところ現実的なのはSUVですので。
イボークは3回目の試乗で一気にテンションが下がったという話を以前ここでしましたが、何度もシツコク検証したいと思う車はそう多くありません。そんな中で今回のクーガは都合2回乗り、今月8段ATに換装された2014年モデルがお披露目されるグランドチェロキーは、5段AT時代に2度乗りました。SUVばっかりですね。
ということで、今回のクーガです。
基本は現行フォーカスのシャシを使っています。フォーカスを運転したことがある方はご理解いただけると思いますが、とにかく楽しいと感じるはずです。クーガにもあれに近いものがあるのかな?と想像すると、乗る前からテンションが上がってきます。
まず見た目。試乗車はふたつあるグレードの下の方(トレンド)で、色はフツーのシルバー。それでもティグアンよりスタイリッシュに見えます(後日見たゴールドはもっと素敵でした)。そりゃイボークのあのインパクトにはかないませんが、うちの車に比べれば十分かっこいいと思います。ここは好みがあるので、抑制の効いたVW、AUDI系のデザインを好ましく感じる人もいらっしゃると思います。クーガに関してはもっと華やかな色があれば良いのですが、少量販売車ですから仕方ないでしょう。
ドアを開けて運転席に座ってみると、フォーカスに通じる「脚を投げ出さない、膝下を上から落とす」感覚がわかります。ダッシュボードは低めであることからステアリングの位置も低め、且つAピラーがやや遠め。私のティグアンと比べてフロントスクリーンの上下が長いので、開放感はかなりあります。ハンドルが低いとフォレスターのように膝に当たるケースもあるのですが、それはありませんでした。ペダルの位置は、A・Bペダルとも若干左にオフセットしてますが、左右の足の置き場所に困ったり、各ペダルを踏むときに足をヘンに動かす必要があったり、不自然な体勢を長時間強要されるような感覚はないです。ハンドルは体の中心から1センチ少々左にオフセットしてるように見えます。シートについては、特段コストがかかっているようには感じませんでしたが、ホールド性は意外と良い感じ。体のどこかに支えてない部分がある感触はありません。1時間程度の試乗では腰が痛くなったりはしませんでした。
内装の質感、特にプラスチック部分に関してはVWやAUDIを基準にしてしまうと正直安っぽいですし、空調のダイヤル等も欧州フォードと言うよりはアメリカフォードっぽい。ボタンなどの操作感は安っぽいところが一部ありますが、目くじらたてるほどでは無いでしょう。メーターの針がブルーなのは個人的に好きですし、メーターの数字(字体)も見やすいです。インフォメーション画面は小さく、もう少し大きければとは思いますが見にくいとまではいかないのでは。
ハンドルの形状が結構好きかも、と思いました。語彙不足のためうまく説明できませんが、フィット感が良かったのです。ハンドルリム径は細めです。ただ、革の質感はそれなりです。
後席に座るとやや膝裏が浮くような感覚がありましたが、しっかり検証しなかった(早く運転したかった)ため若干記憶薄め。いつか後席に座らせてもらってセールスの方に運転してもらおうと思います。
リヤハッチを開けると、ティグアンより広めのようです。私にとっては十分です。
ドラポジが整ったところで運転開始です。販売店の前は結構な幹線道路で、交通量は多めで平均速度は低いのですが、まず感じるのは1速と2速がそれぞれ引っ張り気味にシフトアップしていくのがわかります。排気量と重量を考えると、ターボといえどもこれくらい引っ張らないと思ったような加速をしてくれないのでしょう。引っ張るといっても、1速(つまり発進時)ではほとんど過給はかかりません。小排気量エンジンの重量級で発進時に過給をかけると「グワッ」と下品に加速してしまい、美しくない上に不快になってしまいますから。ちょっと気になったのは、シフトノブを「D」に入れたまま停止していると少しだけ振動が来ました。昔は停止するとやたらブルブル振動が来るオートマ車がありました。信号待ちのたびに「N」に入れたくなるような。クーガは決してそこまで酷いわけではないので、くれぐれも誤解の無いようお願いします。
足回りやボディの音振を気にしてみます。決してキレイとは言えない舗装路面ですが、でこぼこやざらざらの道を走っていくと、ボディ剛性が高そうに感じるのと、イボークのようにビリビリ来ないなぁ、と感じます。とはいえ、まろやかとまではいかない感じ。
その程度しかわからないまま山道に入ります。ここは結構な上り坂に加えて、きつめのカーブからゆるめのカーブまで色々試せる場所です。自分でギヤを選ぶ走りを試したいのですが、クーガにはパドルシフトはありません。あるのはフォーカスと同じ、あの使いにくいサムスイッチ。それで任意のギヤを選択するか、Sモードに入れて機械任せにするかのどちらかです。SUVで目くじらたてて任意変速するのもどうかと思ったので、Sモードに入れっぱなしにすることにしました。
いよいよ山道だー、と思ってアクセルを踏み込み急勾配を昇っていくと、ターボエンジンではあるものの、車重量が1.7トン且つ排気量が1600ccであることがわかります。つまりトルクが薄く感じます。ただですね、トルクは薄いのですが、エンジンをレッドゾーンまで回したときのトルク落ちも少ないのです。なので、エンジンを使い切る楽しさは大きくてスポーティだと感じる一方、上り勾配がキツくなりすぎると非力な印象が強くなるでしょう。この特性はなぜだろうと思って帰宅してから確認したのですが、ティグアンよりトルクは細いが馬力が大きかったのです。回しきったときのトルク落ちの少なさはここに理由があるのでしょう。
ちなみにティグアンのスペックは
車重 1,640kg
エンジン総排気量 1,984cc
最高出力 179ps /4,500‐6,200rpm
最大トルク 28.6kgm/1,700‐4,500rpm
エンジン音はフォーカスやティグアンに比べて大きいです。ていうか、両車ともかなり音量が小さめですからこれは当然。サウンドの官能度はそれほど高くないですが、決して不快とかガサツではないと思います。気になる方は是非試乗して確認してみて下さい。
横道に逸れましたが、ぐーっと加速していきカーブが迫りブレーキを踏み込むと、ティグアンより明らかに剛性感の高いタッチが返ってきて、減速Gがしっかり出ます。「おっ、いいね」と思いつつカーブに沿ってハンドルを切っていくと、明らかにフォーカスより路面状況を良く伝えてくる感触が出ます。パワーアシストがフォーカスより少なめ(重め=ハンドルを回すのに力が必要)で、且つ路面状況がわかりやすい。車格を考えれば軽ーいハンドルは整合性を欠いてしまうので、それで良いと思いますが。そして、ハンドルをじわっと切っていけばまさしくフォーカスと同じようにスーッとノーズが内側に入っていきます。これはひっっじょうに気持ちが良い。かといって、不自然で異常にクイックということはなく、まさに「ちょっきり」「正確」「違和感なし」。マツダCX-5に乗ったときのあの驚きに似ています。狙ったところにぴったりと車が向きを変えていくと、後輪にもスリップアングルが付いて、まさにクルマが自転する感覚を感じ取れます。ロール量、スピードもまさに適正。こりゃやばい、運転に夢中になるパターンだこれ、と私の脳が反応すると、コーナー出口手前からアクセルをゆっくり深く踏みたくなってきました。やりすぎるとクルマが外に膨らもうとするのですが、そうなる前にアクセルを戻しつつハンドルも狙ったラインめがけて切っていくだけ。あとはクルマが気持ちよくコーナーをクリヤしていきます。こりゃSUVじゃねぇぞ。楽しすぎだ、、、その後は、次のカーブが来るのが楽しみで仕方ない。加速→減速→旋回→加速を続けるのですが、どんどん無口になっていきます。さすがにフォーカスほど「ゾーン」に入るまでは行きませんが、こんなにコーナリングが楽しいSUVは滅多に無いでしょう。
大きなでこぼこを通過するときは、フリーランダー2のようにもっちりとした感触ではなく、普通に「がつん」と来ますが、SUVとしてはボディがしっかりしているので安っぽさはありません。ダンパーの印象は決して高級ではないけど欧州の普通のダンパーといった印象。ティグアンと同レベルでしょう。なんだかんだ言って、セダンのボディ剛性にはかないませんので、そこは割り切らなくてはいけませんね。
すっかり夢中になって走りきったところで頂上に到着。そこで折り返し、来た道をそのまま下っていきます。下りはゆっくり走ったので限界性能はわかりませんが、だらしなくカーブを膨らむような気配はありませんでした。
こうして山道の走りについては確認終了。シートのホールド性はどうだったか、、、今思い出そうとしてますがなかなか思い出せません(苦笑)。姿勢が崩れて困る、ということはなかったというくらいにしておきましょう。
次に高速道路。時間は短くて10分程度でした。直前に走った山道では、上り坂でトルクが薄めに感じたエンジン。高速道路の合流、つまり平坦な道をまっすぐ一気に加速していく、というモードでは非力さは感じません。ETCゲートをくぐってキツイカーブ(アプローチ部分)を通り、合流車線(直線)に入ったところで一気に本線に向かって加速を開始すると、最初にそこそこのトルクが出てそのままキレイに上まで伸びていく、、、という印象に変わります。エンジン音に官能的は特に無いのでテンションはそれほどあがりませんが、「おっ、これいいんじゃない?」と思いました。自分のティグアンのように、グワッとトルクが出て、上で詰まるという特性とは全く違いました。
高速道路の次は再度市街地です。往路で通った、片側2車線でほぼ直線の交通量が割と多い道路ではなく、片側1車線で多少アップダウンとキツめのカーブがあって交通量は少なめの道です。こういうときは、路駐しているクルマに引っかかって対向車がいなくなってから一気に加速、とか、いわゆる「信号待ちからのストップアンドゴー」が多くなるので、エンジン特性としては私のティグアンの方がエンジンを回さずともクリアできるので楽ではあります。
4WDのトルクが前後でどのくらい配分されているか、画面に出るのでそれでチェックしてみました。ドライ路面であっても発進時は後輪にもしっかりトルクが流れてます。これはいいですね。4WDの本来あるべき姿でしょう。スバルに近い考え方ですね。なお、一定の速度に達してからの巡航時は後輪にトルクは流れていないようでした。旋回中は画面を見ると危ないのでわかりません。助手席に乗っている営業さんに確認してもらえば良かったかな。
以上でインプレはおしまいです。
上級グレードにも試乗しましたが、ホイル径が大きい(17→18インチ)ため若干ドタバタ感を感じました。それと、革シートとサンルーフはやっぱりいらないかな。サンルーフ装着による重量増やボディ剛性の変化は気づきませんでした。走行距離を重ねないとサンルーフの有無による違いはわからないのかもしれません。
総評としては、とにかく曲がることが楽しいSUVであるということに尽きます。
冒頭に書いた、フォード車の欠点を飲み込むことができる人なら、是非オススメしたい車です。エンジンとトランスミッションが将来変更されたり、欧州で売られているディーゼルエンジンが追加で入るかもしれませんが、それらも全て納得できればOKでしょう。
エンジンは決してトルクフルではないものの、ある程度回してやれば大丈夫。前述の上り勾配のきつい道以外は、トルクが薄いなぁと落胆するわけではない。室内空間はSUVらしく見晴らしが良く、前後座席とも閉塞感はなし。全体的なガッチリ感はフリーランダー2に負けるけど、旋回の楽しさを比較すると私としてはクーガを選びます。
もし今ホントに車を買い換える必要があるのなら、お前はクーガを買うか?と言われれば買います。最近追加になったマツダCX-5の2.5Lガソリンエンジンは気になりますし、2年後に出るとみられる新型ティグアン(恐ろしくカネのかかったMQBプラットフォーム)も気になりますけど、CX-5の試乗車がまず出ないであろうこと、次期ティグアンはゴルフ7同様「楽しさより技術力による凄さ」を前面に出してくるであろう事を考えると、次のとみぞう号はクーガになるでしょうね。
ただ、大量に売れるモデルではないので装備やボディカラーの選択自由度はかなり低いのが難点。個人的には必須のバイキセノンライトが装着されているグレードを買うと、なぜか革シート(上質感は低い)とサンルーフという個人的に不要なモノが抱き合わせで付いてきます。クーガの不満はこの程度であり、走りに関しては充分ですから問題ないでしょう。
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全長×全幅×全高 [mm] 4,540×1,840×1,705
ホイールベース [mm] 2,690
最低地上高 [mm] 200
車両重量 [kg] 1,690
燃料消費率[km/l] 9.5
総排気量 [cc] 1595.0(直列4気筒ターボ:直噴です)
最高出力 [kW (ps)/rpm] 134[182]/5,700
最大トルク [N・m (kg-m)/rpm] 240[24.5]/1,600-5,000
燃料 無鉛プレミアムガソリン
タンク容量 [l] 60
トランスミッション 6段AT
駆動方式 4輪駆動
ステアリング・ギアタイプ 電動パワーアシスト付ラック&ピニオン式
サスペンション・前 マクファーソンストラット
サスペンション・後 マルチサスペンションアーム式
主ブレーキ・前 ベンチレーテッドディスク
主ブレーキ・後 ディスク
タイヤサイズ 235/55/R17(前後とも)
価格 340万円
まず最初に申し上げておきますが、クルマで見栄を張りたい人、いいクルマ乗ってるねぇといわれたい人、下取り価格を気にする人にはクーガをお勧めしません。クーガのみならず、フォード、欧州フォードのすべてが上の条件を満たしませんので。しかし、なぜ昨年の世界販売台数がゴルフではなくフォーカスが多かったか。そこをよーく考える必要があります。
さて、ここ数年人気が続いている中型SUV。日本車、輸入車のいずれも多くの車種を出してきています。国内外を問わず雪があまり降らない地域でも売れているのですが(前輪駆動suvが売れている)、特に私が住んでいる北海道ですと、最低地上高の高い四駆SUVは何かと重宝されます。そんな私もティグアンを購入してからは、その便利さをかなり享受しております。なので、今後車高の低い後輪駆動車を買うのは結構勇気がいる決断となるでしょう。
冬の北海道で4WDのSUVがいつ必要かを考えてみると、
1 市街地の幹線道路~移動時間は短い。除雪が行き届いているので埋まらない。凍結しているがスピードはさほど出ない。
2 高速道路~移動時間は長い。融雪剤をガッツリ散布していて凍結路面は少ない。カーブも緩やか。
3 郊外の一般道~移動時間は長い。融雪剤はさほどまかない上に速度が出やすい。カーブはキツイ。
4 裏道~ドッサリ積もった雪に埋まることが多々ある。除雪の頻度は少ない。
、、、ということで、3と4のためにティグアンを買ったとも言えるでしょう。あとは季節を問わず、視点が高くなることによる安心感もあります。
そんなわけで、いつか乗ってみたかったSUVに乗り始めて間もなく丸2年が経とうとしています。その間、さまざまな車が新発売されましたが、ほぼ漏れなく見に行ってます。もちろんスポーツカーも良いんですけど、今のところ現実的なのはSUVですので。
イボークは3回目の試乗で一気にテンションが下がったという話を以前ここでしましたが、何度もシツコク検証したいと思う車はそう多くありません。そんな中で今回のクーガは都合2回乗り、今月8段ATに換装された2014年モデルがお披露目されるグランドチェロキーは、5段AT時代に2度乗りました。SUVばっかりですね。
ということで、今回のクーガです。
基本は現行フォーカスのシャシを使っています。フォーカスを運転したことがある方はご理解いただけると思いますが、とにかく楽しいと感じるはずです。クーガにもあれに近いものがあるのかな?と想像すると、乗る前からテンションが上がってきます。
まず見た目。試乗車はふたつあるグレードの下の方(トレンド)で、色はフツーのシルバー。それでもティグアンよりスタイリッシュに見えます(後日見たゴールドはもっと素敵でした)。そりゃイボークのあのインパクトにはかないませんが、うちの車に比べれば十分かっこいいと思います。ここは好みがあるので、抑制の効いたVW、AUDI系のデザインを好ましく感じる人もいらっしゃると思います。クーガに関してはもっと華やかな色があれば良いのですが、少量販売車ですから仕方ないでしょう。
ドアを開けて運転席に座ってみると、フォーカスに通じる「脚を投げ出さない、膝下を上から落とす」感覚がわかります。ダッシュボードは低めであることからステアリングの位置も低め、且つAピラーがやや遠め。私のティグアンと比べてフロントスクリーンの上下が長いので、開放感はかなりあります。ハンドルが低いとフォレスターのように膝に当たるケースもあるのですが、それはありませんでした。ペダルの位置は、A・Bペダルとも若干左にオフセットしてますが、左右の足の置き場所に困ったり、各ペダルを踏むときに足をヘンに動かす必要があったり、不自然な体勢を長時間強要されるような感覚はないです。ハンドルは体の中心から1センチ少々左にオフセットしてるように見えます。シートについては、特段コストがかかっているようには感じませんでしたが、ホールド性は意外と良い感じ。体のどこかに支えてない部分がある感触はありません。1時間程度の試乗では腰が痛くなったりはしませんでした。
内装の質感、特にプラスチック部分に関してはVWやAUDIを基準にしてしまうと正直安っぽいですし、空調のダイヤル等も欧州フォードと言うよりはアメリカフォードっぽい。ボタンなどの操作感は安っぽいところが一部ありますが、目くじらたてるほどでは無いでしょう。メーターの針がブルーなのは個人的に好きですし、メーターの数字(字体)も見やすいです。インフォメーション画面は小さく、もう少し大きければとは思いますが見にくいとまではいかないのでは。
ハンドルの形状が結構好きかも、と思いました。語彙不足のためうまく説明できませんが、フィット感が良かったのです。ハンドルリム径は細めです。ただ、革の質感はそれなりです。
後席に座るとやや膝裏が浮くような感覚がありましたが、しっかり検証しなかった(早く運転したかった)ため若干記憶薄め。いつか後席に座らせてもらってセールスの方に運転してもらおうと思います。
リヤハッチを開けると、ティグアンより広めのようです。私にとっては十分です。
ドラポジが整ったところで運転開始です。販売店の前は結構な幹線道路で、交通量は多めで平均速度は低いのですが、まず感じるのは1速と2速がそれぞれ引っ張り気味にシフトアップしていくのがわかります。排気量と重量を考えると、ターボといえどもこれくらい引っ張らないと思ったような加速をしてくれないのでしょう。引っ張るといっても、1速(つまり発進時)ではほとんど過給はかかりません。小排気量エンジンの重量級で発進時に過給をかけると「グワッ」と下品に加速してしまい、美しくない上に不快になってしまいますから。ちょっと気になったのは、シフトノブを「D」に入れたまま停止していると少しだけ振動が来ました。昔は停止するとやたらブルブル振動が来るオートマ車がありました。信号待ちのたびに「N」に入れたくなるような。クーガは決してそこまで酷いわけではないので、くれぐれも誤解の無いようお願いします。
足回りやボディの音振を気にしてみます。決してキレイとは言えない舗装路面ですが、でこぼこやざらざらの道を走っていくと、ボディ剛性が高そうに感じるのと、イボークのようにビリビリ来ないなぁ、と感じます。とはいえ、まろやかとまではいかない感じ。
その程度しかわからないまま山道に入ります。ここは結構な上り坂に加えて、きつめのカーブからゆるめのカーブまで色々試せる場所です。自分でギヤを選ぶ走りを試したいのですが、クーガにはパドルシフトはありません。あるのはフォーカスと同じ、あの使いにくいサムスイッチ。それで任意のギヤを選択するか、Sモードに入れて機械任せにするかのどちらかです。SUVで目くじらたてて任意変速するのもどうかと思ったので、Sモードに入れっぱなしにすることにしました。
いよいよ山道だー、と思ってアクセルを踏み込み急勾配を昇っていくと、ターボエンジンではあるものの、車重量が1.7トン且つ排気量が1600ccであることがわかります。つまりトルクが薄く感じます。ただですね、トルクは薄いのですが、エンジンをレッドゾーンまで回したときのトルク落ちも少ないのです。なので、エンジンを使い切る楽しさは大きくてスポーティだと感じる一方、上り勾配がキツくなりすぎると非力な印象が強くなるでしょう。この特性はなぜだろうと思って帰宅してから確認したのですが、ティグアンよりトルクは細いが馬力が大きかったのです。回しきったときのトルク落ちの少なさはここに理由があるのでしょう。
ちなみにティグアンのスペックは
車重 1,640kg
エンジン総排気量 1,984cc
最高出力 179ps /4,500‐6,200rpm
最大トルク 28.6kgm/1,700‐4,500rpm
エンジン音はフォーカスやティグアンに比べて大きいです。ていうか、両車ともかなり音量が小さめですからこれは当然。サウンドの官能度はそれほど高くないですが、決して不快とかガサツではないと思います。気になる方は是非試乗して確認してみて下さい。
横道に逸れましたが、ぐーっと加速していきカーブが迫りブレーキを踏み込むと、ティグアンより明らかに剛性感の高いタッチが返ってきて、減速Gがしっかり出ます。「おっ、いいね」と思いつつカーブに沿ってハンドルを切っていくと、明らかにフォーカスより路面状況を良く伝えてくる感触が出ます。パワーアシストがフォーカスより少なめ(重め=ハンドルを回すのに力が必要)で、且つ路面状況がわかりやすい。車格を考えれば軽ーいハンドルは整合性を欠いてしまうので、それで良いと思いますが。そして、ハンドルをじわっと切っていけばまさしくフォーカスと同じようにスーッとノーズが内側に入っていきます。これはひっっじょうに気持ちが良い。かといって、不自然で異常にクイックということはなく、まさに「ちょっきり」「正確」「違和感なし」。マツダCX-5に乗ったときのあの驚きに似ています。狙ったところにぴったりと車が向きを変えていくと、後輪にもスリップアングルが付いて、まさにクルマが自転する感覚を感じ取れます。ロール量、スピードもまさに適正。こりゃやばい、運転に夢中になるパターンだこれ、と私の脳が反応すると、コーナー出口手前からアクセルをゆっくり深く踏みたくなってきました。やりすぎるとクルマが外に膨らもうとするのですが、そうなる前にアクセルを戻しつつハンドルも狙ったラインめがけて切っていくだけ。あとはクルマが気持ちよくコーナーをクリヤしていきます。こりゃSUVじゃねぇぞ。楽しすぎだ、、、その後は、次のカーブが来るのが楽しみで仕方ない。加速→減速→旋回→加速を続けるのですが、どんどん無口になっていきます。さすがにフォーカスほど「ゾーン」に入るまでは行きませんが、こんなにコーナリングが楽しいSUVは滅多に無いでしょう。
大きなでこぼこを通過するときは、フリーランダー2のようにもっちりとした感触ではなく、普通に「がつん」と来ますが、SUVとしてはボディがしっかりしているので安っぽさはありません。ダンパーの印象は決して高級ではないけど欧州の普通のダンパーといった印象。ティグアンと同レベルでしょう。なんだかんだ言って、セダンのボディ剛性にはかないませんので、そこは割り切らなくてはいけませんね。
すっかり夢中になって走りきったところで頂上に到着。そこで折り返し、来た道をそのまま下っていきます。下りはゆっくり走ったので限界性能はわかりませんが、だらしなくカーブを膨らむような気配はありませんでした。
こうして山道の走りについては確認終了。シートのホールド性はどうだったか、、、今思い出そうとしてますがなかなか思い出せません(苦笑)。姿勢が崩れて困る、ということはなかったというくらいにしておきましょう。
次に高速道路。時間は短くて10分程度でした。直前に走った山道では、上り坂でトルクが薄めに感じたエンジン。高速道路の合流、つまり平坦な道をまっすぐ一気に加速していく、というモードでは非力さは感じません。ETCゲートをくぐってキツイカーブ(アプローチ部分)を通り、合流車線(直線)に入ったところで一気に本線に向かって加速を開始すると、最初にそこそこのトルクが出てそのままキレイに上まで伸びていく、、、という印象に変わります。エンジン音に官能的は特に無いのでテンションはそれほどあがりませんが、「おっ、これいいんじゃない?」と思いました。自分のティグアンのように、グワッとトルクが出て、上で詰まるという特性とは全く違いました。
高速道路の次は再度市街地です。往路で通った、片側2車線でほぼ直線の交通量が割と多い道路ではなく、片側1車線で多少アップダウンとキツめのカーブがあって交通量は少なめの道です。こういうときは、路駐しているクルマに引っかかって対向車がいなくなってから一気に加速、とか、いわゆる「信号待ちからのストップアンドゴー」が多くなるので、エンジン特性としては私のティグアンの方がエンジンを回さずともクリアできるので楽ではあります。
4WDのトルクが前後でどのくらい配分されているか、画面に出るのでそれでチェックしてみました。ドライ路面であっても発進時は後輪にもしっかりトルクが流れてます。これはいいですね。4WDの本来あるべき姿でしょう。スバルに近い考え方ですね。なお、一定の速度に達してからの巡航時は後輪にトルクは流れていないようでした。旋回中は画面を見ると危ないのでわかりません。助手席に乗っている営業さんに確認してもらえば良かったかな。
以上でインプレはおしまいです。
上級グレードにも試乗しましたが、ホイル径が大きい(17→18インチ)ため若干ドタバタ感を感じました。それと、革シートとサンルーフはやっぱりいらないかな。サンルーフ装着による重量増やボディ剛性の変化は気づきませんでした。走行距離を重ねないとサンルーフの有無による違いはわからないのかもしれません。
総評としては、とにかく曲がることが楽しいSUVであるということに尽きます。
冒頭に書いた、フォード車の欠点を飲み込むことができる人なら、是非オススメしたい車です。エンジンとトランスミッションが将来変更されたり、欧州で売られているディーゼルエンジンが追加で入るかもしれませんが、それらも全て納得できればOKでしょう。
エンジンは決してトルクフルではないものの、ある程度回してやれば大丈夫。前述の上り勾配のきつい道以外は、トルクが薄いなぁと落胆するわけではない。室内空間はSUVらしく見晴らしが良く、前後座席とも閉塞感はなし。全体的なガッチリ感はフリーランダー2に負けるけど、旋回の楽しさを比較すると私としてはクーガを選びます。
もし今ホントに車を買い換える必要があるのなら、お前はクーガを買うか?と言われれば買います。最近追加になったマツダCX-5の2.5Lガソリンエンジンは気になりますし、2年後に出るとみられる新型ティグアン(恐ろしくカネのかかったMQBプラットフォーム)も気になりますけど、CX-5の試乗車がまず出ないであろうこと、次期ティグアンはゴルフ7同様「楽しさより技術力による凄さ」を前面に出してくるであろう事を考えると、次のとみぞう号はクーガになるでしょうね。
ただ、大量に売れるモデルではないので装備やボディカラーの選択自由度はかなり低いのが難点。個人的には必須のバイキセノンライトが装着されているグレードを買うと、なぜか革シート(上質感は低い)とサンルーフという個人的に不要なモノが抱き合わせで付いてきます。クーガの不満はこの程度であり、走りに関しては充分ですから問題ないでしょう。