明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1689)原発は地震に対して極めて脆弱。すぐに停めるべきだ!(18日舞鶴市でお話します)

2019年05月15日 12時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190515 12:00 0619 22:00改訂)

18日に舞鶴市でお話します。舞鶴健康友の会の総会での講演で舞鶴市林業センター(市役所西支所3階)にて午後3時からです。  テーマは「教えて原発災害から命を守るには…災害時の備えについて」です。この日、伝えたいことの一部を記しておきます。

原発は地震に対して極めて脆弱!

5月10日朝に宮崎県沖の日向灘でマグニチュード6.3の地震が発生し、「南海トラフ地震のトリガーになるのでは」との憶測が飛び交いました。 気象庁は「直ちに南海トラフでの巨大地震につながるものではない」と声明しましたが、地震学者の中から「確実はことなど言えない。常に大地震がありうると考えて備えるべきだ」との批判が上がっています。 僕もこの地震はいつか必ず来るのだから対策を重ねておかねばと思いますが、今回、お伝えしたいのはもっと小さな地震でも、直下で起これば多くの原発が壊れてしまうかもしれないことです。


MBC放送ニュースより 20190510

このことを分かりやすく伝えてくれたのは、元福井地裁裁判長の樋口英明さんでした。2014年に大飯原発の運転差止判決を出された方です。 樋口さんが指摘したのは、大飯原発の設計基準動は建設当初は405ガルに設定されていたこと。新規制基準のもとでの補強のもとでも856ガルにしかならないことです。 これまで確認されている最も大きな地震動が4022ガルもあったにもかかわらずです。2008年の岩手・宮城内陸地震においてです。


2月に大津市で講演する樋口英明さん 守田撮影(20190223)

大飯原発の耐震設計は新規制基準の下、補強された今でも856ガルでこの地震の約五分の一しかない。 つまりこの原発は巨大地震ではなく、もっと小さな、日本の中で毎年頻繁に起こっているクラスの地震でも耐えられないのです。 だからとにかく早く停めて、危険な燃料プールにある核燃料を早くより安全な状態に移すことを目指すべきです。


原発はどれもあまりに耐震性が弱い!『世界』2018年9月号樋口論文より

なぜ耐震性の弱い原発を作ってしまったのか

答えは二つあると思います。一つには本気で地震に強いものを作ろうと思ったら経費が膨らみすぎるため「採算に見合う」ように設計されたからでしょう。 このことは福島原発事故を踏まえて、各国が原発の安全性をいままでより強めたら、ただそれだけで経費高騰で建設がストップしてしまったことにもよく表れています。 日本が輸出しようとしていた原発もすべてダメになりました。原発は少し安全性を高めただけでたちまち採算に合わなくなるものでしかなかったのです。


朝日新聞 20181218より

もう一つには地震学が未確立で未知の領域が多く、原発を作る前に起こった地震の揺れもほとんど把握できていなかったためです。 日本で最大の揺れを記したのが2008年の岩手・宮城内陸地震だったことを紹介しましたが、そもそもこの記録は阪神大震災以降にやっと測られ始めた中でのもの。 1990年代後半からGPS機能が発達してそれまでより揺れを正確に測れるようになり、それではじめて4022ガルが計測されたのです。だから過去にもっと大きな揺れがあった可能性も十分にあります。

読売新聞 20160416より

日本のすべての原発は、この新しい知見が生まれる前、正確に地震の揺れが測られだす前に作られてしまったのです。 しかもできるだけ安上がりにするため、想定される地震を小さく見積もりました。そのため実測されるようになった地震の揺れにまったく追いついていない甘い設計基準動が採用されてしまったのです。 原子力推進派はその後も「ほとんどの原発の下には活断層はない」という理屈で運転を強行してきましたが、しかし「活断層」が確認されていないところでも、これまで何度も激しい地震が起こっています。


樋口さん講演会(既に終了)のチラシ。「よくできている」と樋口さんが活用


地震のことは多くが分かっていないが、規制委員会は分かってきたことも無視している!

そもそもいまの地震学では予想はかなり難しい。「ここでは絶対に地震が起きない」などと断言をできるわけがない。 この点が分かる図があります。地震調査研究推進本部が2005年に発表した地震予測地図です。色の濃いところが震度6弱以上の地震が起こる可能性が高いところとされていますが、2007年新潟県中越沖地震(M6.8 )、2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2011年東日本大震災(M9.0)、2016年熊本地震(M7.3)、2018年北海道胆振東部地震とほとんどの大きな地震が予想外のところ、可能性が低いとされていたところで起きています。

 
全国地震動予測地図2005年版 地震調査研究推進本部作成

これに対し、地震学の新しい知見として「ひずみ集中帯地震」が起こっているとする説が大きくなってきています。 南海トラフ地震などの海溝型地震は、日本列島が乗っているプレートの下に海から来たプレートが潜りこみ、その際巻き込まれた陸側プレートが力がたまって跳ね上がることで起きるとされています。 それまでの間に日本列島が押されることでひずみがもたらされる。その力が集まったところが「ひずみ集中帯」でここで地震が起きていると考えられています。この間起こった多くの地震がこれに分類されています。


主なひずみ集中帯地震 守田まとめ

紹介した図中にある内陸型地震もすべて「ひずみ集中帯」地震。この後、昨年9月に起きた北海道胆振東部地震もです。 そうすると決定的な事実が浮かび上がってくる。「ひずみ集中帯」の上に多くの原発が建てられていることです。実際に柏崎刈羽原発は直下型地震の直撃を受け、大惨事寸前に陥りました。 より恐ろしいのは福井の「原発銀座」と呼ばれる地帯が「ひずみ集中帯」に入っていることです。にもかかわらずこの新たな知見が無視されている。危険すぎます。


ANNの報道より


原発を停める努力と原子力災害への備えをパラレルで進めよう

原発と地震の関係を見た時、耐震設計の脆弱な原発など即刻、停めるべきであることは明らかです。 同時に原発が動いている限りは原子力災害対策を重ねる必要があります。重ねながら原発の危険性を訴える必要があります。 やっかいなのは原発は停めたからといってすぐに安全にはならないこと。核燃料の放射線値が下がり熱が冷めるのを待ってからでないと燃料プールからすら取り出せない。しかもその後の保管場所も安全管理の方法すらも未確立です。

 
(出典)電気事業連合会「使用済燃料貯蔵対策への対応状況について」(2017年)

原子力災害対策は、廃炉が進み、安全性が確保される日まで続けられなければなりません。 「原子力災害対策を進めることは再稼働を利することにつながる」と述べる方がおられますがその方にこう問いたい。「あなたは明日、原発が事故を起こしうる事実を避けていませんか?どこかで安心してませんか?」と。 そうなのです。私たちの目の前に本当に危ないものが存在している。だから対策を重ねなければならないのです。


篠山市(現丹波篠山市のハンドブック)

同時に原子力災害に備えることは災害対策全般に対してもプラスになります。重なることが多いからです。 その点でこの対策はあらゆる災害に強い町づくりにつながります。その意味で私たちに問われているのは、東日本大震災の教訓に本当に学び、災害の複合的発生に備えていくことです。 原発からもあらゆる災害からも命を守るための活動を一緒に重ねていきましょう!

2月16日に行われた綾部市のヨウ素剤配布会。京都市でも本年中の開催を予定中。

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