明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1740)台風19号で128か所で堤防決壊=災害対策を根本的に改めよう!被災地の方は大雨に注意を!被災者をホテルへ!

2019年10月18日 21時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20191018 19:00)

71河川の128箇所が堤防決壊=この国の防災体制が完全に破たんしてしまった!

台風19号による死者が増え続けています。NHKの18日18時52分発表のニュースによると亡くなられたのは全国で79人。行方不明8人、けが395人です。
内わけは福島県30人、宮城県16人、神奈川県14人、栃木県と群馬県でそれぞれ4人、長野県3人、埼玉県、岩手県、茨城県でそれぞれ2人、静岡県と千葉県でそれぞれ1人です。神奈川県や福島県など5つの県で8人が行方不明です。
およそ4万戸以上の家が浸水し被害を受けています。また午前5時現在で12都県9万6771戸が断水中です。甚大な生活破壊が人々を襲い続けています。


NHK18日正午のニュース この段階では福島の死者が29人で総数78人だった

今回、被害を多くしたのはなんといっても71もの河川が128か所で決壊したこと。氾濫は17日22時48分のNHKニュースで16都県の262河川に及んでいます。これらはまだ更新中。全容不明です!
防災上、川の決壊はあってはならないこと!なぜかというと決壊した後の対策が何もないからです。それが128か所も起こってしまった。明らかに国の防災体制が突破されてしまった。根本的な誤りが突きつけられたのです。
いまこんな状態の中で被災地に19日に大雨が降りつつあります。またも川が決壊したり越水するかもしれない。台風15号被害でも千葉を中心に4万5千戸の家屋が損壊したままです。被災地のみなさん。命を守ってください。安全なところに避難してください。

この責任は大きく国にあります。ここ数年の風水害の多発の中で、かつての想定が繰り返し突破され、このままでは人々を守れないことがはっきりしてきたにも関わらず、有効な対策をほとんど打たなかったからです。
とくに昨年、7月豪雨で263人もが亡くなり8人が行方不明のままという甚大な被害が出ました。岡山県真備町などではハザードマップ通りの浸水が起こり、自力で1階から2階に逃げることのできない多数の高齢者が亡くなりました。
今回も早めに逃げていれば助かった多くの方が亡くなっているし、いまも多くの方が災害関連死の危険性の前に立っています。




真備町の水害とハザードマップ 守田講演スライドより

堤防では命は守り切れないことを前提に減災・防災体制を再構築すべきだ!

私たちがいまはっきりと認識しなければならないのは、完全に底が抜けてしまったこれまでの防災対策を捨てて、あらたなものに急速に変えなければならないと言うことです。
捨てなければならないのはダムと堤防による治水で洪水を完全に防ごうとするあり方です。
無論、ダムや堤防の活用を止めよと言っているわけではありません。たった今は堤防の早期改修も必要です。しかしもはや堤防が突破され、町が水没することがありうることを大前提にしなければならないのです。


台風19号の影響で氾濫した福島県玉川村の阿武隈川=2019年10月13日午前9時5分、毎日新聞社ヘリから

この点は今回の降雨量が各地で「計画降雨」を上回ってしまったことによっても示されています。
「計画降雨」とは、河川整備等を行う際に使われているその流域の基準のことで、基本的には"100年に1回の豪雨でもこれ以上は降らないだろう"との想定による基準値を設定し護岸工事等を行っているのです。
今回、それが各地で破られてしまいました。堤防の想定が超えられてしまったのです。詳しくは以下の論稿をご参照ください。

台風19号 「計画降雨」を上回る記録的大雨
2019年10月16日17:38 日本気象協会 安齊理沙 https://tenki.jp/amp/forecaster/r_anzai/2019/10/16/6319.html


計画降雨と実際の降雨の対比グラフ 安齊理沙氏によるもの

安齊氏がここで掲げたグラフによれば久慈川・那珂川・多摩川・相模川・千曲川・阿武隈川流域にそれぞれ計画降雨を数パーセント上回る雨が降ったそうです。100年に1回の雨の想定を超えてです。
鬼怒川(基準点は石井)にいたっては「計画降雨」が3日間降水量362mmのところ、11~12日の2日間の降水量は365.3mm。3日の想定が2日で越えられてしまいました。
だから次々と堤防が決壊した。恐ろしいのは全国で同じことが起こりうることです。大雨による堤防決壊はもはやどこで起こって不思議はありません。

堤防強化では間に合わない!逃げることの強化を。だから避難所の大改革を!

ではどうするべきなのか。計画降雨を練り直し、堤防を高くすべきなのでしょうか。そういう選択もないわけではありません。
しかし第一にそんなことではまったく間に合いません。今回とて71河川128カ所が決壊しているのです。その修復だって大変な作業です。さらに氾濫は262箇所、全国の堤防を改修するなどとても間に合いません。
となればもはや全国どこでも大洪水が起こりうることを周知徹底し、逃げ方を研究し必要な施策を実行すべきなのです。町内会でボートを持つ、各家の電化製品を2階にあげられるようにする、大雨の時は2階以上に寝るなど浸水への備えを重ねるのです。


もはや舟の備蓄が必要では? 守田講演スライドより

ダムと堤防に頼った治水そものもの見直す必要があります。なぜなら堤防を高くすると耐えられる水量が多くなるので、その分だけ破堤した際の災害の規模も大きくなるからです。
実はこれは明治以来の河川行政の抜本的誤まりでもあります。江戸時代に「適度にちらす」対象だった洪水をおさえこもうと堤防を築き続けてきた。このため破堤が起こると堤防をより高くしてきた。それが破堤するとさらに高くしてきたのです。
このため利根川も淀川も、有史以来、今が一番流量が多い。だから本流が決壊したらとんでもないことになります。そんな風に自ら破堤の際のリスクをどんどん高めてきたあり方からの転換が必要です。
ちなみにこの点を僕は著書『原発からの命の守り方』の中でも指摘しました。98~108ページをお読み下さい。また原発だけでなく、あらゆる災害からの身の守り方を考察したこの書を、ぜひいまみなさんで読んでいただきです。


いまこそ『原発からの命の守り方』を読んで下さい! 守田講演スライドより

その上でさらに重要になるのが避難所のあり方を抜本的に変えることです。そもそも日本の避難所は応急措置の場でしかないのです。台風通過をしのぐような場であって、避難民が長くいることを想定していません。
ところが東日本大震災をはじめ、多くの災害で人々は長い間家に帰れていない。もともと応急措置の場でしかないから、そこに長くいさせるのは生存権の侵害であり人権問題なのです。これを解決するのが政治の課題です。
しかしすぐにはできないのでいまは早急に避難所の方たち、家での生活が困難な方たちを安全なホテルに移すべきです。政府の責任として。実際、イタリアなどではそうしてます!予算はF35ジェット戦闘機の購入を数機止めるだけで充分です。


イタリアにならって被災者をホテルへ! 守田講演スライドより

命を守るための施策をただちに政府がとることを訴えましょう!
被災地の方たちをみんなで守りましょう!

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