明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(794)東京都知事選に思う・・・問われているのは民衆的な力の成長と拡大だ!

2014年02月06日 16時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140206 16:00)

東京都知事選が近づいてきました。昨年末より、なぜ小泉元首相が原発ゼロを言い出したのか、またその背景にある自民党政治の変容について述べてきましたが、選挙終盤において今の状況をどう見るのか、僕なりの分析を述べてみたいと思います。

まず候補者について言うと、舛添要一さん。あまりに差別的な方で論外です。というかこのような方が政治家であり続けることができることに、私たちの国の遅れ、非民主主義的な限界が現れていると思います。
彼は例えばこんなことを言っている。「(生理の時に)国政の重要な決定、戦争をやるかどうかなんてことを判断されてはたまらない」・・・だから女性は政治に向かないと。あまりに酷い!差別まるだしです。品位もなにもあったものではない。

これに対して、「舛添要一を都知事にしたくない女たちの会」が結成されました。たった今、東京の新橋で立ち上げの記者会見が行われているころだと思います。HPを紹介しておきます。
http://masuzoe.wordpress.com/2014/02/05/daihon/

この会は、前述の舛添氏の発言に続いて「こんなことを言う男が都知事になったらこっちがたまらない!立ち上がれ女たち!」と叫んでいます。
とても共感しますが、男性が参加できないのが少し淋しくもあります。というかこの問題は、男性こそが立ち上がらなければならない課題です。
私たちの国は女性の社会的地位が100番以下の国です。つまり国際水準からいって、われわれ男性がいかに劣っているのかがここに示されています。だからこそ、このような女性差別の塊のような人物を政治家としておいてはいけません。
女性も男性も一緒になって、差別主義者は政治の場から去れと大きな声をあげましょう。

続いて脱原発を掲げている二人の候補。細川護煕さんと宇都宮けんじさんの主張をいかに捉えるか、また脱原発候補の一本化という声をどう考えるのかについて述べたいと思います。
投票を前にしてどのような態度を採るべきか。僕が一番、共感するのはブロガーとして選挙の盛り上げに大活躍している座間宮ガレイさんの叫びです!2分46秒と短いですが、大切なことがギュッと詰まっています。ぜひ観てください。

細川・宇都宮と直接会って話した俺のメッセージ!
http://www.youtube.com/watch?v=RRNUDqQxTF8&feature=share

とくに僕が強く共感したのは次の言葉です。

「俺たち無名の有権者が、まじで政治家に寄り添って、この国の政治をよくしていかなくちゃならないということなんだよ。
有名な奴に頼っちゃだめだ。俺たち有権者が、細川にしろ、宇都宮にしろ、まじで寄り添って、いい政治をやって欲しい。
偉いやつに任すな。取り巻きに任すな。いい政治をやる、無名の俺たちが主役だ!」

その通り!主役は無名の民衆=私たちなのです。その民衆が政治家に寄り添っていい政治をさせなければならない。これこそが民衆的な力の根本です。
これまで何度も述べてきましたが、民主主義の語源は、デモスクラチア。デモス=民衆に、クラチア=権力のある状態です。誰が首長になろうとも、それを規制し動かす民衆の力があるかないかが決定的に重要なのです。
その意味で有名人になんて頼っていてはいけない。というか、そうである限り、選挙が終われば平気の平左で公約破りというこの間の醜態が繰り返されるだけです。
座間宮さんは、この核心問題を実にシンプルかつパワフルに叫んでくれている!本当に素晴らしいです!

この観点からみるならば、小泉・細川両元首相の脱原発の叫びもまた、民衆の脱原発の声の高まりを無視できなくなったこと、この大きな声に押されて出てきたものであること。何よりもこのことをしっかりと見ておく必要があります。
これまで原発を推進してきた元首相たちに脱原発を叫ばせているのは民衆の力なのです。

その意味でこうした元首相たちの声を利用して、脱原発を実現しようと考える人々が出てくるのも自然な流れであり、それはそれで頑張っていただくといい。
だから「脱原発を訴える両候補が、エールを交換しあえばいいじゃないか。今はあのひどい舛添要一候補、自民党・公明党支配とみんなで戦おう」という座間宮さんの提案は非常に重要なポイントを提起していると思います。

これに対して、有名人たちが出てきて、「一本化」が叫ばれました。これはあまりにひどかった。なぜひどいのかというと宇都宮さんを「勝てない候補」と決めつけてしまったからです
しかし細川さんとて勝てる候補なのでしょうか。そんなものはふたをあけてみなければ分からない。だとしたら同じ一本化でも、もともと細川さんと小泉さんが、宇都宮さんの支持に回ることだってあり得たはずです。
もちろんご両人はそうはしなかった。なぜでしょう。実は脱原発政策そのものが、内容的に食い違っているからです。

この点を押さえるために、両候補の脱原発メッセージを見てみましょう。まず細川さんはこう言っています。

***

日本は今、すでに原発ゼロの状態にあります。「再稼働を止める」という政治決断を行うなら今しかありません。政治が方向を示せば、日本の省エネルギー・再生可能エネルギー産業を、世界でトップクラスの成長産業とすることが可能です。
世界の先進各国のエネルギー政策は、原子力から再生可能エネルギー・分散型エネルギーへと転換しています。
原子力は、放射性廃棄物の処分ができないという致命的な欠陥を抱えています。しかも、膨大な被害をもたらす巨大事故のリスクがあります。
東京が先頭に立って、省エネルギーと再生可能エネルギーの普及拡大をはかることで、日本の原発ゼロの成長戦略をリードしていきます。

引用はホームページより
http://tokyo-tonosama.com/

***

端的に言って、細川さんの唱えているのはエネルギー問題としての原子力の廃止です。
これに対して、宇都宮さんは次のように言っています。

***

1 東電福島第一原発事故被害者の支援を積極的に進めます
2 東京都から脱原発を実現します
3 「希望のエネルギー政策」を実現します
4 国に先駆けて電力事業の自由化の範囲を拡大し、電力コストを下げる努力をします
5 脱被ばく政策を進めます

引用はホームページより
http://utsunomiyakenji.com/pdf/201401policy_final.pdf

***

さらに1および5に次のことが細目としてあげられています。
「○福島原発事故被害者、とりわけ東京都に避難している6000人以上の避難者に対して、住宅・医療・生活再建支援などの積極的な支援を進めます。」

「○放射性物質の拡散が心配されている瓦礫の焼却処理については、いったん凍結し、専門家を集めて公開で調査と検討を行います。
 ○都民を放射能汚染から守るために、都独自の「食品の安全規制」と都民と連携した食品や土壌等の放射能測定ネットワークをつくります。」

要するに細川さんの脱原発宣言には、現に福島原発事故がもたらした深刻な放射能汚染との取り組みがまったく述べられていません。未来のエネルギーをどうするのかということに「原子力問題」が集約されているのです。
これに対して宇都宮さんは、冒頭に東京に避難している原発事故被災者の救済と支援から説き起こしている。ここがまったく違います。

細川さんのもとに脱原発運動が集約された場合、現に起こっている被曝対策が切り捨てられてしまう。何せ公約に何一つ触れられていないのですから。僕はこれは政府と東電による被曝隠しにつらなってしまうことになると思います。
その点で、僕は座間宮さんの訴えの線に従いながらも、「原発問題は被曝問題。被曝対策を鮮明に掲げている宇都宮さんの訴えこそ私たちの進む道!」と叫びたいです。

そしてその上で、もう一度、民主主義を積極的に発揚しようと提案したい。私たち民衆が力を持つこと、ラディカル・デモクラシーを発揚させるのです。
そのために最も大事なことは、東京の攻防は選挙によって終わるのではないということを自覚することです。誰が首長になろうとも、それで良い方にも悪い方にもすべてが決するなどとは夢にも思ってはいけない。
そうではないのです。誰が首長になろうとも、私たちが私たちの力をさらに発展させていくことこそが重要なのです。

あの差別主義者舛添候補が勝つのなら、それを自民党・公明党が支えるというのなら、繰り返しこんな非常識な人物を許さないという声をあげればいい。これまでにも増して、脱原発デモを頑張ればいい。
細川候補が勝つのなら、細川候補に被曝対策を迫る行動を起こしましょう。また宇都宮候補が勝つのなら、彼の公約を実現するために、それこそみんなで寄り添い、支えていきましょう。
僕自身は今の日本での東京オリンピック開催は、被曝防護の観点からも、福島原発事故がまったく収束してないことからも非常識であり、絶対にやめるべきだと考えています。なのでそれを宇都宮さんに迫っていきたいです。

大事なことは、選挙の結果だけにとらわれず、民衆の力の高まりが、今の状況を作り出しているのだという事実です。
私たちはこの選挙を通じて、そこからさらに前に進みましょう。僕はその核心問題が、原発問題をエネルギー問題に一面化させず、被曝問題としてこそ捉えきり、被曝防護の徹底化に進むことだと思います。

Power to the People!

前に進みましょう!


 

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明日に向けて(793)福島1号機冷却水8割漏れが意味するもの・・・ベントをしても格納容器は壊れた!

2014年02月01日 23時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140201 23:00)

この間、福島3号機と4号機の現状に関してレポートしてきましたが、今度は1号機に関する重大な発表が東電によってなされました。1月30日のことです。
それによるとなんと炉内に投入している冷却水の8割が、格納容器から漏れ出していると見られると言うのです。そのことが3年近く経って分かったと言うのです。
以下、テレ朝のニュースを示しておきます。

***

冷却水の8割が漏えいか…福島第一原発1号機の汚染水
テレ朝news 20140130 22:41
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000020591.html

福島第一原発の原子炉1号機からの汚染水漏れについて、新たな事実が判明した。「1号機の圧力抑制室付近から、1時間あたり最大で3.4トンの汚染水が漏れていたと推計される」と、30日に東京電力が明らかにした。
1号機には溶けた燃料を冷やすために、1時間あたり4.4トン注水している。その水は燃料に触れて、放射性物質を含んだ高濃度の汚染水となり、注水量の約8割が圧力抑制室付近から漏れているとみられるのだ。
また、東電は「他の場所からも漏れていることも分かった」とし、引き続き調査する。

***

実は同じ30日、東電は福島2号機の圧力抑制室にも穴が開いていて、そこからも水漏れが確認されたと発表しています。この結果、圧力抑制室のまわりの「トーラス」室に水漏れしているというのです。
東電は1月18日に、福島3号機の床に2400万ベクレルというベータ線核種で汚染された水が流れていることも発表しており、1号機から3号機まで格納容器から汚染水が漏れているという事実が連続発表されたことになります。

このように東電が連続的に情報を発する時に、非常に大事な点は、重大事実の連続発表に対して危機感を麻痺させてしまわないことです。というかもう麻痺して当然であり、麻痺させるように情報を出しているとすら思えるので、しっかり意識を保つことをよびかけたいです。
そのためには、こうして出てくる情報を「ああ、また汚染水漏れか」という感じで、一緒くたにして捉えてしまうのではなく、あくまでも歴史的経緯に立ち戻って、きちんと整理して捉えておくことです。
もちろん、多くの方にそれだけの情報整理の時間がないのも事実です。これまで東電は、情報を受け取る側が、きちんと整理して受け取る余裕などないような形で、あえてまとまりのない形で、洪水のような形で、「最高値」だとか「高濃度」だとかいう言葉を繰り返してきているので、なおさら分からなくなって当然です。
そこで今回も、冷却水8割漏れが何を意味するのか、あるいはどのように捉えるのか、整理を試みたいと思います。

まず今回、明らかになった8割の冷却水漏れの可能性というのは、昨年11月13日に初めて発見された、格納容器からの冷却水、ないし放射能汚染水漏れ情報からの解析の中で得られてきているものだということを押さえることが重要です。
どのようにしてこれが見つけられたのかと言うと、新たに開発されたカメラを設置したボートが、格納容器下部にある圧力抑制室付近を探索し、圧力抑制室に向かうベント管下部から冷却水の漏れ出しを確認したのでした。
これを東電は以下のように発表しています。

福島第一原子力発電所1号機ベント管下部周辺の調査結果について(1日目)
東京電力株式会社 平成25年11月13日
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_131113_15-j.pdf

この1枚目の図を見てください。漏えい個所は、格納容器(PCV=Primary Containment Vessel)の下部の「サンドクッション」と書かれたところの下部にある「サンドクッションドレン管」あたりとされています。
サンドクッションとは、格納容器の鉄板と、周りを覆うコンクリートが直に接すると、鉄板に圧力がかかって変形する恐れが考えられたため、砂を入れてクッションとしているところです。
ところがこの砂が水を吸うことで、かえって鉄板を腐食させてしまうことがあるため、その水分を抜くためのドレン管がその下に取り付けられているのです。1号機からの冷却水漏れはここから確認されたというのです。
今回の発表は、冷却水漏れのあらたな発見ではなく、これらの地点から出ている汚染水を計算で求めたものであるとともに、他にも漏れ出しているところがあることを示唆したものです。

さてこの場合、重要な問題はなんでしょうか。8割も漏れていた!・・・もちろんそれはかなり重要な点です。溶け落ちた核燃料と接して激しく汚染されたものすごい放射能濃度の汚染水が発生していることが分かったからです。
1時間あたり3.4トン漏れているということは1日あたり81.6トン。それがおそらくは事故の早い時期から流れ続けているのです。

しかし一歩前に戻ると、実は量の問題だけでなく、そもそも格納容器から漏れていることが発見されたということ、格納容器が壊れていることがはっきりしたこと、このこともまた非常に重要な位置を持っているのです。
なぜなら昨年11月まで、東電は、格納容器については、2号機はベント失敗があったがために、圧力抑制室で破損が起こったとしながらも、1号機と3号機は壊れていないという立場を採ってきたからです。
高濃度の汚染水は、原子炉内の核燃料を冷却したのちに回収されたタービン建屋の地下に漏れてしまい、そこに地下水が流入してくることで、混ざりあい、外に漏れ出して、海にも達している・・・というのが昨年夏に東電が発表したことです。

タービン建屋から漏れていることと、格納容器からも漏れていることには決定的な違いがあります。なぜかと言うとそもそも格納容器とは、その内側にあって核分裂反応を行う原子炉圧力容器内で何かのトラブルが生じ、放射能漏れが生じた際に、それを封じ込めることをこそ最大の任務としている構造物だからです。
だからこそ東電は、1号機、3号機の格納容器は壊れていないと強弁していたのです。汚染水漏れは、本来、水を溜めるために作られたのではないタービン建屋から起こったのだとしてきたわけです。

一例として東電を支援している日本原子力文化振興財団のサイトを見てみましょう。

東京電力(株)福島第一原子力発電所事故
http://www.jaero.or.jp/data/02topic/fukushima/index.html

この中の「原子力」」の「格納容器とは」の項目に以下のような記述があります。

***

原子炉格納容器は気密性が高くつくられ、燃料の損傷などによって放射性物質が放出された場合に周辺への拡散を抑える役目をもっています。
しかし、今回の福島の事故では全電源の喪失などにより原子炉が高温高圧状態となり、原子炉格納容器から水素とともに放射性物質を外部へ放出する事態に陥りました。
さらに2号機については、原子炉格納容器に損傷が生じ、放射性物質が外部に放出されたと考えられています。

***

放射能を封じ込めるための格納容器を守るために、放射能を抜くベントが行われたこと、いわば格納容器の任務放棄がなされたことは書いてありますが、1号機、3号機の格納容器が壊れたとする記述はありません。
あくまでも壊れたのは2号機の、格納容器の一部をなす圧力抑制室だけだとしてきたのです。なぜでしょうか。1号機から3号機まですべての格納容器が壊れてしまったことがはっきりすれば、このプラントが設計的に破たんしていることがより鮮明に証明されたことになってしまうからです。
もちろん2号機の圧力抑制室が壊れてしまっただけでも、このプラントは設計的にアウトであるわけですが、実際にはすべての格納容器が壊れていた。となれば同じ構造を抱える原子炉の再稼働などはまったくの論外であることも明らかです。

重要なのは、「放射能を封じ込めるための格納容器を守るために放射能を放出するベント」・・・などということがもとより論理矛盾であり、「ベントをつけたから」という理由での再稼働など許してはならないのですが、今回は、そのベントがなされても、格納容器が壊れてしまったことが明らかになったことです。
しかもそれがどのような構造のもとに起こり、どこかどれだけ壊れたのかもまだ未解明です。とするならば、これまで行われている、再稼働に向けた「過酷事故対策」の前提もまた崩壊してしまったことになるのです。
おそらく東電は、この点がクローズアップされることを避けるために、マスコミの注視を、汚染水の量的凄さに向けようとしているのではないかと思われます。もちろん8割が漏れていたということも重要なポイントですが、私たちがしっかり見据えておくべきことは、格納容器がベントを行っても壊れていたという決定的な事実です。

さらに繰り返し述べているように、放射能を閉じ込めるはずの格納容器が壊れていたことが3年近くも経って分かったことに、この事故が収束していないどころか、まだ実態の多くが解明されておらず、現状がどうなっているかも把握されていないことが表れています。
私たちの前にまだ制御されない巨大な危機が横たわっていることをこそ、それは示しています。「また東電が・・・」などと東電をなじってすましていてはいけない。私たちの危機をこそ、認識すべきなのです。
ぜひこの点を押さえ、福島原発の状態が悪化した場合の避難対策に真剣に取り組みながら、みんなで一生懸命に、原発のウォッチを続けていきましょう。

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