9日(日)。昨日の日経朝刊文化欄に、同社の瀬崎久見子編集委員による「東北オーケストラ好調の背景 ~ そこに使命感があったから」という見出しの記事が載っていました 超略すると以下の通りです
「高関健氏が常任指揮者を務める仙台フィルの『2024-2025シーズン定期演奏会』(全18公演)のチケットが全席完売した ひとつの定期につき800席余りの会場で2回と 動員数はそれほどでもないが、新型コロナ後、集客に苦しむオーケストラが多い中で快挙といえる
24時間いつでもチケットを座席指定できることや、終演後に会場出口で楽員が聴衆を”お見送りする”こと、SNSを活用して楽員の親しみやすい素顔などを紹介する試み・・・などの地道な努力があるようだ
仙台国際音楽コンクールからスターが続々と出たことも、動員増に一役買っている
東北のオケでもう一つ好調なオケは山形交響楽団(山響)だ
仙台フィルと同様 東日本大震災後に経営難に陥ったが、2015年に西濱秀樹専務理事が就任してV字回復した
個人の定期会員数はコロナ前の19年度は794だったが、24年度は910と増加した
19年に就任した阪哲郎常任指揮者の評判も高い
西濱氏は2000年代に関西フィルの経営を立て直したが、その経験を生かして山響を分析し、赤字増の原因だった学校公演を効率化するなどの工夫をした
コロナ下では早々に配信を開始し、地元行政などと組んだガバメントクラウドファンディングや、顧客が声を出さずに声援を送るための「Brovo!」と書いたタオルの販売などのアイデアも打ち出した
近年はオペラのシリーズも始めた
2月は「トスカ」で、地元の合唱団や児童生徒が、山響やプロの歌手とオペラ公演を体験した
東北以外でも地方オーケストラの実力や動員力は上がっている
」
地方オーケストラということでは、関東では神奈川フィル、群馬交響楽団などがあります また、近年は 東京に遠征して公演を行う地方オーケストラも増えてきました
大阪フィル、札幌交響楽団、九州交響楽団、広島交響楽団、名古屋フィル・・・と枚挙のいとまがありません
東京を基盤とするオーケストラにしても、地方を基盤とするオーケストラにしても、一番肝心なのは「楽員の演奏水準の向上」と「健全な財政基盤の確立・安定」です 言い換えれば、「優秀な演奏者の確保と十分な練習」と「定期会員の安定確保と集客のための魅力的な企画」です
とくに東京には、思い出すだけで9つのプロのオーケストラ(N響、読響、新日本フィル、東響、東京フィル、東京シティ・フィル、都響、日本フィル、パシフィック・フィル)が定期会員の安定確保を目指して しのぎを削っています
演奏を聴く側からすればオーケストラ同士の競争はウェルカムですが、オーケストラ側からすれば死活問題です
各オーケストラとも、共倒れしないように 頑張ってほしいと思います
ということで、わが家に来てから今日で3708日目を迎え、デンマークとスウェーデンの政府系郵便サービス「ポストノルド」は6日、郵便物が約25年間で9割以上減ったという理由で、デンマーク国内での手紙の配達を、今年12月末で終了すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
日本でもいずれ同じような方向に行くような気がする 取りあえず慣例的な年賀状が俎上に上がるか
昨日、東京オペラシティコンサートーホールで東京シティ・フィル「第377回定期演奏会」を聴きました プログラムはヴェルディ「レクイエム」です
出演はソプラノ=中江早紀、メゾ・ソプラノ= 加納悦子、テノール=笛田博昭、バリトン=青山貴、合唱=東京シティ・フィル・コーア、管弦楽=東京シティ・フィル、指揮=高関健です
この公演はもともと2021年3月に上演する予定でしたが、コロナ禍で上演を断念した経緯があります 今回はソリスト陣と合唱を含む出演者全員が当時と同じ顔触れによって上演されます
4年越しの待望の上演と言えます
ヴェルディ「レクイエム」はジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)がイタリアの詩人・小説家のマンゾーニの死を追悼して1874年に作曲、同年ミラノで初演されました
曲は次のように構成されています
第1曲:レクイエム ~ 合唱、四重唱
第2曲:セクエンツィア(続唱):ディエス・イレ(怒りの日)
①ディエス・イレ(怒りの日) ~ 合唱
②驚くべきラッパが ~ 合唱、バス独唱
③すべてを記した書物が ~ メゾ・ソプラノ独唱、合唱
④憐れな私は何と弁明すれば ~ ソプラノ、メゾ・ソプラノ、テノール独唱
⑤大いなる王よ ~ 合唱、四重唱
⑥思い起こしてください ~ ソプラノ、メゾ・ソプラノ独唱
⑦私は嘆息します ~ テノール独唱
⑧黙らせるとき ~ バス独唱、合唱
⑨涙の日 ~ 四重唱、合唱
第3曲:オッフェルトリウム(奉献唱) ~ 四重唱
第4曲:サンクトゥス(聖なるかな) ~ 合唱
第5曲:アニュス・デイ(神の子羊) ~ ソプラノ、メゾ・ソプラノ独唱、合唱
第6曲:ルックス・エテルナ(永遠の光で) ~ メゾ・ソプラノ、テノール、バス独唱
第7曲:リベラ・メ(私を解き放ってください) ~ ソプラノ独唱、合唱
会場はほぼ満席です
オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置。コンマスは特別客員コンマスの荒井英治です
オケの後方に東京シティ・フィル・コーアの混声合唱約100名がスタンバイし、その手前中央にソリスト4人が配置に着きます
ソプラノ独唱の中江早紀は北海道教育大学岩見沢校芸術過程音楽コース声楽専攻卒業。東京藝大大学院修了 第14回日本モーツアルト音楽コンクール声楽部門第2位。第11回東京音楽コンクール声楽部門第3位、第3回ジュリアード音楽院コンクール第1位など受賞多数
メゾ・ソプラノ=独唱の加納悦子は東京藝大大学院修了、ケルン音楽大学で研鑽を積む ケルン市立歌劇場と専属契約し40以上の演目に出演
ザルツブルク国際モーツアルトコンクール第2位
テノール独唱の笛田博昭は名古屋芸術大学声楽科首席卒業、同大学院修了 第50回日伊声楽コンコルソ第1位
バリトン独唱の青山貴は東京藝大大学院修了。二期会オペラ研修所マスタークラスを最優秀で修了 新国立オペラ研修所修了。新国立劇場、二期会等で活躍中
高関の指揮で演奏に入りますが、4人のソリストは絶好調でした
中江早紀はバッハ・コレギウム・ジャパンの定期会員の時は時々聴いていたのですが、退会してからは聴く機会が激減してしまいました 今回、久しぶりに聴きましたが、透明感のある美しい歌唱は変わりませんでした
素晴らしいソプラノです
加納悦子は新国立オペラの常連歌手として何度も聴いていますが、今回も良く通るメゾ・ソプラノが健在でした
笛田博昭は4人の中で一番インパクトがありました 力強く破壊力のあるテノールで会場を震わせました
青山貴は新国立オペラで何度か聴きましたが、今回も魅力のあるバリトンを披露しました
東京シティ・フィル・コーアは「怒りの日」を中心に迫力のあるコーラスを聴かせてくれました
高関健指揮東京シティ・フィルは渾身の演奏でオペラティックな「レクイエム」をダイナミックに築き上げました
満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました