金継ぎ、金繕い? いえ、陶磁器の繕いを楽しむ会「器再楽(きさら)」です!

「陶工房たつみ」が主催する「器再楽(きさら)」のブログ。金繕い、金継ぎと呼ばれる手法もオープン。繕いの依頼にも応じます。

次の繕いの依頼はつながりから

2017-06-28 05:54:12 | 陶器の繕い例
次の繕いの依頼は、少し前に繕いをする機会があった方の知り合いの方からの依頼です。

磁器が二点、どちらも欠けた部分があります。
こんな状態です。
この湯呑み、持ちやすい形ですね。


アップで。


もう一点はドイツ製の磁器。
面白い形ですね。


アップで。


宅配便で届いたので、ご本人と連絡を取って、どんなふうに仕上げるかの相談をして。
金彩などを使っていないので、銀粉で仕上げることをお勧めして。
金粉は高価ですね(銀粉の15倍程度)。

さあ、スタートです。
どちらも磁器ですので、アラルダイトに強力粉を混ぜてベースの補修です。


乾燥途中に手入れをしながら、こんな風に翌日に整形です。


次の工程は、黒艶漆を塗って、銀粉(丸粉3号)をしっかりと蒔いて。
この様に漆に銀粉をたっぷりと沈めます。
この後は漆の乾燥です。


器が少し大きいので、こんな風にビニール袋をかぶせて。
中には濡らした手拭きが入れてあります。
漆職人ではありませんので、ムロなどを持っていないので、こんな方法で漆を乾燥させます。


2日ほどして、次は粉固めの処理です。
生漆をほんの少し取って、テレピンで薄めたものを塗って、また乾燥です。
ビニール袋の中で1日。
それを2回繰り返しました。


そして、いよいよ最終工程です。
水ペーパー(2000番)で表面を整えて、そのあと木綿でしっかりと磨いて、最後は鯛の牙で磨いて仕上げです。


完成です。
ベースに黒艶漆を塗る前に、もう少し平らに整形しておくべきでしたかね。しっかりと手入れしたつもりですのに。
漆を塗った時に、少し表面にでこぼこができるのですね。
少し黒艶漆を薄めて使った方がいいのかなとも思いますが、この方が丈夫な仕上がりになります。
銀粉を蒔いてからの仕上げの段階で初めて、そういったことが見えてきますね。

今日は早起きでした。
さあ、早速にお届けしましよう。


次の繕いの依頼 その5

2017-06-08 08:07:28 | 多種類の繕い例
これでいいだろうと依頼主に観てもらって。
なんと、できるだけ金繕いをしているのがしっかりと判る仕上げがいいと。

それで、3点のうち2点の追加作業です。

接着面が見える部分に黒艶漆を幅広く塗って。


銀の丸粉をタップリと蒔いて。


もう一つの繕い品にも、白漆で仕上げた上に、黒艶漆を塗って。
その後、金の丸粉を蒔いて。


そして、漆の乾燥です。


乾燥後、しっかりと粉固めの処理です。
特にガラス面、傷もない部分まで幅広く処理しているので、使っているうちに剥がれそうで、しっかりと2回の粉固めをして。
この追加の処理は断るべきだったと反省しています。


そして、最後の仕上げ処理です。
先ずは、4000番の超ミクロな水ペーパーで磨いて。


そして、鯛の牙での磨きです。
あまり強く磨くと剥がれそう。


完了としましょう。


こんな仕上がりです。


上から見た様子。


そして、お皿も完了。
今回の3点の繕い、しっかりと繕い料金を頂きましょう。

依頼の繕い品がもう一つ

2017-06-07 10:53:57 | 陶器の繕い例
武庫之荘美術展に来られたお客さんから、繕いの依頼がありました。

亡くなられたご主人が愛用されていたぐい吞み。
その後、壊してしまったので、接着剤で自分で修復を試みたとのこと。

先ず、「接着剤を取り除いて、やり直しましょう。」
「これなら金粉や銀粉を使わず、黒漆で仕上げるのがいいでしよう」と預かりました。

ところがです。
いくら湯の中でボイルしても、接着部分が外れないではありませんか。
こんなことは珍しいです。
たいていは長い時間ボイルすると剥がれるのですが。

ずれた形で接着していることが写真で判るでしょう。


諦めました。
このままで、成形して繕うしかありませんね。

アラルダイトと地の粉での成形した後で、ひょっとしてこれで剥がれないかなと「はがし隊」の登場です。
でも、これでもダメでした。


それで、仕方がないので、このまま強力なヤスリペーパーなどを使って整形して、再度アラルダイトと地の粉で整形して。
一応綺麗な形になりましたね。


口辺のところも削ったのが判るでしょう。


そして、仕上げは本漆の黒艶漆を塗って。


この工程を2回繰り返して。
仕上がりました。


簡単だと思っていたのでしたが、とても厄介でしたね。
昨日、これを届けて、とても喜んでいただきました。
経費も当初のたったの千円で。
お渡しすると、私との応対途中で、すぐに仏壇に供えられて。
よほどご主人のことを・・・・・。
お土産を頂いて帰りました。
いい奥さんですね。

次の繕いの依頼 その4

2017-06-06 19:24:42 | 多種類の繕い例
繕い依頼の3点目です。

こんな状態でした。


先ずはアラルダイトと小麦粉を使って欠けた部分の復元です。


そして翌日に整形して。


そのあと、「新うるし」の白を使って。


そして、黒艶漆を塗ったあと金の丸粉を蒔いて。
翌日に粉固めの処理をして。


漆を乾燥させたあと、鯛の牙で磨く最終工程です。


完成です。


この後、3点を依頼主の「ギャラリーR」のオーナーに観てもらって、この皿はOKだったのですが。
あとの2点は……。

その5に続きます。

次の繕いの依頼 その3

2017-06-06 19:17:45 | 多種類の繕い例
二つ目の繕いです。

表側と裏側のヒビの部分。
皿を温めて、アラルダイトを両面で浸透させています。


そして、アラルダイトが固まってから、漆での仕上げです。
裏側は金で蒔いてほしいと言われていますが、わざわざ目立たさなくていいのではと。
コーヒーか紅茶のお皿ですので、「新うるし」の白です。
本漆の白では、色が鼠色に変わっていってしまいますので、この方が目立たなくていいと思います。


そして、表側ですが、こんな風に。
「新うるし」の緑色を調整して、周りと同じような色合いで枝葉を描いて。
判りますか。
これで、完成です。