「全ての人を招いていた」 ルカによる福音書 2章1~7節
ルカによる福音書は、イエスさまの誕生に際して、住民登録が行われたことを伝えています。そのとき、マリアは身重であるにも関わらず、ヨセフと共に住民登録をするためにベツレヘムに向かって旅を強いられることになりました。この住民登録は、税金を徴収したり、兵役を課すため、ローマ帝国の支配地域に住んでいる、いわゆる自由人を対象として行われたものではないかと思います。当時、エルサレムを中心に多くのユダヤ人が住んでいましたが、彼らは民族意識が強く、ローマ帝国の支配に不従順なところがありました。ヨセフは、ユダヤ人に親しみの深いダビデ家に属する人でしたが、住民登録に服すために、身重のマリアと共に旅をしている途中で、宿屋に泊まれず、家畜小屋でイエスさまの出産を迎えることになりました。二人の姿は、ローマ帝国に従順であり、何とも健気に見えるように思われます。
イエスさまは、飼い葉桶の中に寝かされました。そこに、付近で羊の群れの番をしていた羊飼いたちがやって来ました。彼らの仕事は尊いものでしたが、ユダヤ社会の一般的な考え方では、血の汚れに触れる機会が多かったり、生き物相手のために礼拝の時間が守れなかったことで、同じ民族同士でも低く見られていました。ローマの人々から見れば、まるで奴隷のように見えたのかもしれません。家畜小屋で生まれたイエスさまは、羊飼いたちを招き、結びつきができました。イエスさまの誕生は、自由人と奴隷を結びつけるように、全ての人を招き、結びつける出来事であったように思われます。もしかすると、奴隷によって成り立っているローマ帝国の人々は、この信仰を興味深く受け止めたのかもしれません。いずれにしても、興味深いことではないかと思います。