自民党、20日に憲法改正「コンセプトペーパー」提示へ 9条扱いは3案を明記(産経ニュース 2017.12.10 05:00)
>自民党の憲法改正推進本部(細田博之本部長)が20日に全体会合を開き、改憲案の論点を整理した「コンセプトペーパー」を示すことが9日、分かった。党で検討する改憲4項目について基本的考え方や解決すべき課題を示す。憲法9条については(1)1、2項を変えずに自衛隊を明記する安倍晋三首相(党総裁)の提案(2)2項を削除し「国防軍」を盛り込む平成24年の党改憲草案(3)現状維持-の3案を示し、それぞれ論点を記す。
>このうち自衛隊明記については、戦力不保持などを定めた2項を残す首相提案に対し「自衛隊の存在と整合性が取れない」との指摘がある。このため、2項を削除する24年草案と「現状維持」の3案をあえて書き込み、それぞれ自衛権の範囲などについて、整理すべき課題をあげる見通しだ。
自民党は安倍首相案で行くのかと思っていましたから、このニュースは驚きましたが、2項削除で行くなら、その方が筆者の好みであることは間違いありません。まぁ柔軟に検討してみましょう。別に筆者も3項追加案に同意しましたが、2項削除案より良いと書いた訳ではありません。
理屈で行くなら、芦田修正の存在を踏まえ、戦力不保持条項があっても、自衛隊は認められるというこれまでの考え方で寧ろいいと思います。3項追加の理由は、例えば国会での説明などの理由もあるかもしれませんが、憲法学者が7割違憲と言ってしまう現状を踏まえて、異論の余地を無くすことです。2項を残すと戦力不保持だから自衛隊の存在と矛盾するとの指摘は、そもそも芦田修正(「前項の目的を達するため」が追加されたことを指す)があるから、戦力不保持は自衛隊の存在と矛盾しないと説明します。3項追加(自衛隊明記)があるから自衛隊は合憲ではなく、元々合憲だけど異論を唱える人が少なからずいるから異論の余地を無くすということになります。何故異論があるかと言えば、これまでの説明の問題もあるかもしれませんが、戦力不保持や交戦権の否定と言った強い言葉の印象が特に一般国民に影響するからだと思います。これは恐らく空想的平和主義前文が示すように途中で方針を変えた経緯があって良く練られた憲法だと言えないからだと思います。西修教授は芦田修正と文民条項(66条)との不可分性を指摘し(自衛隊が違憲ならそもそも軍人がいないのだから文民条項は必要ない)、日本国憲法はそもそも自衛隊創設が可能である憲法であることを示した(
9条論議の混迷に終止符を打て そのために「芦田修正」に注目せよ 駒沢大学名誉教授・西修 産経ニュース 2017.11.27 09:00)と思いますが、文民とは政府見解に拠れば、①旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染まっていると考えられるもの②自衛官の職に在る者を言うのであって、これは戦前の反省を踏まえた規定だと思います。戦前には現役の軍人が大臣になるどころか、軍部大臣(陸軍大臣、海軍大臣)を現役に限る軍部大臣現役武官制が存在したようです。ですから、元自衛官が大臣になることが憲法上問題がある訳ではありません。結局のところ、3項追加案とは従来の解釈の延長線上で自衛隊の違憲論を封じる政治的セレモニーなのだと思います。
2項削除だとどうなるか?これも1項を修正する訳ではありませんから、実質3項追加案と中身はそれほど変わらないとも考えられます。芦田修正が無くとも、66条の文民条項があるのですから、実際のところ自衛隊の保持が否定される訳ではありません。ただし前文と1項の印象からなお反対を貫く人は少なからずいると思います。ですから、現状の2項を削除するなら、代わりに自衛隊を明記する条項を入れた方がより違憲論を封じることができるようになると思います。現状の自衛隊が認められるからと言って、野放図に軍国化と見るべきではありません。国際紛争の解決する手段としては~の1項は残るからです。じゃあやはりただのセレモニーなのかと言えば、必ずしもそうではないと思います。これまで戦力不保持の文言があることを理由に、敵基地を攻撃する能力の制限が語られてきた経緯があると考えられるからです。ですが、敵陣を攻撃できない自衛は有り得ません。何故かと言えば、今はミサイルがある時代です。ミサイル着弾後でも敵陣を攻撃できないなら、自衛のしようがありませんよね。敵が銃を持っていると想定してください。敵が離れたところから銃を撃ってくるとして、こちらは自陣で木刀で戦うとかいうのは悲劇を通り越して喜劇でしか有り得ません。つまり自衛に限って考えても、敵陣を攻撃できない自衛というのは現代では存在していません。まぁ現状でも絶対に敵陣を攻撃できないとも言えないのでしょうが、ミサイルもろくに自衛隊は持っていませんし、大きく制限されてきたことも確かだと思います。別段3項追加案でも敵陣を攻撃する能力を拡充することはできると思います。思いますが、戦力不保持条項を削除しておかないと、それを理由に抵抗が激しくなることも予想されます。印象論も決して馬鹿にすることはできません。ですから、自衛隊が敵陣を攻撃する能力を拡充して自衛する体制を強化することを意図するならば、2項を削除した方がいい(加えて自衛隊明記で違憲論を封殺しにいってもいい)と思います。勿論これは侵略戦争を意図するものではありません。1項の問題(国際紛争と認めると自衛隊が出れなくなる?)もあると思いますが、少なくとも今回は提案しないようですから。
現状維持案はどうでしょう?これだと学者の7割自衛隊違憲論はこのままになるでしょうし、これまで通り敵陣を攻撃する能力拡充の邪魔になると考えられます。筆者は疑問ですね。
以上で筆者のコンセンプトペーパーの考察は終わりですが、以下更に敵陣の攻撃能力獲得について具体的事例を示しつつ考察していきたいと思います。
想定するのは北朝鮮です。中国やロシアも事実上の仮想敵国と思いますが、ここでは取り扱いません。まぁ北朝鮮を想定すれば、ある程度は応用できますし、北朝鮮もそうではありますが、そもそも日米同盟を想定せねば対抗できる相手でもありません。北朝鮮を想定する理由は、拉致問題など過去日本にテロを仕掛けていること、ミサイル乱発など日本を威嚇する言動をとってきたこと、米国に届くミサイルを開発中であり、安全保障環境が大きく変化しつつあることです。これまでも敵基地攻撃能力は議論されてきましたが、これまでの議論に問題もあってか上手くいっていません。筆者があえて敵陣を攻撃する能力という造語で表現して、敵基地攻撃能力という言葉を自分のアイディアから排除したのには理由があります。北朝鮮は移動式のミサイルや防空壕の整備でミサイルが問題だからミサイルを叩くということが難しくなっているんですね。ですから、敵基地を攻撃することを想定したこれまでの議論があまり上手くいかなかった経緯があると思います。また、一般的には敵基地攻撃能力は相手の攻撃を察知しての先制攻撃の文脈で語られることも多く、この作戦の技術的困難性から議論が上手くいかなかった経緯もあるでしょう。北朝鮮の軍事的脅威(崩壊した時の難民問題は今回は取り上げません)とは結局のところ、一にミサイル、二にサイバー攻撃、三に工作員の強襲かと思います。そもそも北朝鮮の軍隊は軍事博物館と揶揄されるほどで、日本を空爆したり艦砲射撃したりする事態はまず考えられません。二や三に関する議論は別の機会に譲るとして、問題はどうミサイル攻撃を抑止するかです。ミサイル防衛は重要で効果もあると思いますが(必ずしも全部落とせなくとも、ミサイル防衛があるなら、一発だけのミサイル攻撃という選択肢を制限できることは否めません。もしも撃ち落されると作戦失敗で指示を出したトップの沽券に関わるからです。飽和攻撃を防ぎきれないじゃないかと言っても、国際的批判を考えれば、ちょっとした理由を創っていきなり飽和攻撃をするのはかなり難しいところです。北朝鮮はこれまで延平島を砲撃するなど軍事攻撃を仕掛けてきた侵略性国家ですが、小規模なものに止めて、あまり国際的非難が集中しないようそれなりに考えて行動していることが伺えます。ですから、北朝鮮がやりそうなやってきた小規模作戦を抑止できることの意義は決して小さくはないと考えられます。例えば人口が稠密でない地域にミサイルを一発落として挑発しようと北朝鮮が考えたらどうでしょう?(その手のテロの実績があることに注意する必要があります)ミサイル防衛があれば失敗したときのリスクがあって中々決断しにくくなります。北朝鮮がロフテッド軌道でミサイルを撃つことが多いのも迎撃を怖れるからかもしれません。そういう訳で現状の防衛体制を筆者はそれなりに評価しますが、やはり飽和攻撃の可能性も想定しなければなりません。これにミサイル防衛で対処することは容易ではありません。現状ではアメリカが攻撃することになっています。多数の人命が失われたら、北朝鮮は核による攻撃で焦土になるかもしれませんし、そこまででなければ、EMS攻撃による電子機器の無力化も有り得るようです(兵器に電子機器はつきものでしょう)。でも米軍の攻撃に依存するだけでいいのでしょうか?筆者は敵陣を攻撃する能力を日本は整備していくことを考えるべきだと思います。別に移動式ミサイルや防空壕を現状破壊できなくても仕方がありません(ただし技術の進歩でこれが可能になる可能性もあると思います。その時あわてて整備しても敵は待ってくれません)。敵の攻撃の程度に応じてこちらの心証で北朝鮮を攻撃できるだけでも違ってくると思います。平壌の重要施設を狙ってもいいし、空港や港湾を狙ってもいい(北朝鮮人以外を巻き込まないように注意する必要があると思いますが)。北朝鮮という国それ自体を地下化する訳にもいきません。知恵を出せば北朝鮮が嫌がるポイントは考えられるはずです。ミサイルを狙うのが難しいからと言って、何もしないことを是とするべきではないでしょう。この場合エスカレーションの危険もあって、延平島の砲撃と言った侵略行為が全面戦争に繋がらなかったように、反撃の有無や規模は十分事前に想定して適切な対応を考え準備しておく必要があると思いますが、兎に角着弾してからの反撃すら米国に依存する現状をどうにかすべきだと筆者は思います。北朝鮮の事情(ハリネズミ化)に特化した新兵器の開発導入体制整備も視野に入れるべきですが、兎に角完全な効果を発揮できなくても全然構わないので、敵陣を攻撃する能力を拡充していくべきです。筆者はリスクがゼロにならないから対策をしないでいいの類の議論に賛成することはありません。
ここで問題になるのは韓国かもしれません。どうも韓国ではよほど日本の再侵略とやらを怖れており、自衛隊が韓国を通過・活動することをどうしても認めたくないようです。しかし日本の自衛のための戦略に韓国が口を出すことは許されません。ではどうしたらいいか考えますと、ミサイルによる攻撃は韓国が何を言おうと適当に処理しておけば問題ありません。北朝鮮のミサイル通過が良くて日本のミサイル通過がダメとは一体どういう了見だと捻じ込むだけです。韓国の上空や近海を通過して空爆(バンカーバスターなどでハリネズミ北朝鮮を効果的に叩くことも想定すべきです)や艦砲射撃を加える場合が韓国に邪魔されると多少厄介ですが、これは有事に日本は韓国を支援しないと(表で言うか裏で言うか言い方はあると思いますが)通告して対抗します。有事に韓国から逃げる先と言えばまず日本です。また、日本の基地から韓国への支援があることも明らかです。北朝鮮による有事を想定すると日本は韓国に邪魔されるとやりづらいことは間違いありません。そして逆もまた真なりで韓国にとって日本が協力しなければ北朝鮮有事への対応は難しい訳です。歴史的経緯があってこれまで日本が一方的に韓国を甘やかしてきました(恩恵を与えてきました)。ですが、その流れももはや止めるべきです。韓国が有事に日本に協力しないなら日本も韓国の有事に協力しないぞと伝えることがひとつの考えられる手法だと思います。陸自が半島に上陸して戦うまでは現状難しいかもしれませんが、日本軍の上陸というのはどうしても韓国にとって悪いイメージを想起してしまうでしょう。ですが、北朝鮮は韓国を飛ばして日本を攻撃することができます。日本も韓国を飛ばして北朝鮮を攻撃する能力の拡充をしていくべきで、占領の記憶を想起させる陸自の活用に慎重になれば当面は十分だと考えます。
自衛隊はSelf-Defense Forcesと言って、英語のニュアンスからか自分を防衛する軍隊って何?って馬鹿にされてきた経緯もあるようです。自衛隊が守るべきは自衛隊ではなく日本国日本人です。だから名称は国防軍が望ましいと思います。でも、国を守ると言っても敵陣を攻撃する能力が無ければ、結局は馬鹿にされることにかわりないとも考えられます。筆者は自衛隊は国防軍として整備するべきだと思いますが、敵陣を攻撃する能力とセットがベターと考えます。